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Best Friend〜姿を変えた君と〜


「健」

俺は翔をチラッと見て返事をした。

「やっぱり、愛生は居なきゃダメだろ?」

「みたいだな」

久々に凄く嬉しかった。

「あんま余計な事すんなよ?」

「うん。えっ?」

俺は翔を見た。

「ハハハッ、健がやらかしたことくらい分かるよ」

やらかした。

確かにそうだ。

俺は翔から視線を逸らした。

「余計な心配させたくない〜って変な態度とったん
だろ?」

俺は何を言っていいか分からず、鼻で笑った。

それを見て少しバカにしたように笑う翔。

それも何故か嫌じゃなかった。

翔にそうされるのは慣れてる。

翔の言動いちいち気にしてたらどうしょうもないし。

翔以外の一人の家族、母親も何考えてるかわからないし。

翔だけは何も疑わずに生きていきたい。

「お疲れ」

翔が玄関を開けて言う。

「ヤメろ……」

「ハハハッ」

そして当たり前のように翔と家の中に入った俺。

「えっ、学校は?」

「居ない方が良い?」

「いや、別に……」

それはない。

今までどれだけ翔の存在を思い出すだけで救われたか。

救われた。

少し大袈裟かな。

俺は翔と部屋へ。





「えぇっと?」

「はい?」

「んで居っかな」

「ダメ?」

「じゃねぇけど」

「良かったね」

俺はやっぱり声では返さなかった。

けど翔もこれに慣れてる。

いつからこうなったんだろう。

気付いたらちゃんとした返事はしてなかった。

「愛生と仲直り出来て」

仲直り。

「まぁ…な……」

「ってかさ」

俺は翔を見た。

「健の姿、そうやってベッドに仰向けになってるか
ベッドに座ってるかしか見た事ないんだけど」

ずっとベッド。

俺は鼻で笑い、再び天井を見つめた。

「愛生?」

「え?」

「愛生の事考えてたの?最近」

そうと言えばそうだけど、違うといえば違う気も……

「あ〜んま溜め過ぎんなよ?」

そう言って翔は自分の部屋へ。

溜めてるつもりはないんだけどな。

溜まってる気もしないし。

『溜め過ぎんなよ?』

結構難しい事言うね。

俺のために言ってくれたんだろうけど。

『信じてる!』

『初めて信じたっ』

何度も言おうとして言えなかった、夕里への思い。

それをあんなに雑に伝えるとは。

そしてその後泣いて寝るって。

あの時の自分の声。

ハッキリ覚えてる。

忘れたいけど。

それを思い出してまた恥ずかしくなる。

「あぁ〜っ」

なんであんなこと言っちゃったかな。

「うぅ〜……」

思い出して恥ずかしくなる。

難度やったか。

結構やった気がする。

その恥ずかしさを吹き飛ばすように枕元で携帯が鳴る。

誰だよ……

すぐに鳴り止んだからメールであることは分かる。

俺はそのメールの内容を見た。

「あき……」

喜びと驚きが混じったような気分でメールを読み始めた。

『いきなりごめん。
今日、行ってもいい?』

今日、か。

『ごめん。
また暇なとき誘う』

暇ではあるんだけどね。

『そっか。ごめんね。
ゆっくりしてろよ?』

「フッ」

ならメールすんなよ。

『そうするつもり』

そう送ると愛生からの返信は来なかった。

もう休み時間も終わる頃だしな。

俺はマナーモードにして携帯の画面を切り、久々に
うつ伏せになった。



けどすぐにいつもの仰向けに。

そして天井を見る。

これが一番落ち着く体制。

ただ天井を見つめて、何も考えない。

学校では絶対出来ない。

学校で無になることはない。

なれるなら今ここに居ないだろう。

『健っ!』
「健」

頭の中で聞こえる愛生の声と実際に聞こえる翔の声が
同時に俺を呼ぶ。

「えっ、何?」

俺はドアの方を見て応えた。

「大丈夫?」

「うわっ」

いつの間にかベッドのそばに座ってる翔。

「えっ、おま、何してんの?」

「遊びに来たの」

「は?」

「あっ、なんとなくね。けどなかなか気付いて
もらえなかったから」

「そっか、わりぃ……」

「いや、全然いいんだけど、なんか辛そうだったから」

別に辛かなかったかな。

「あっ……大丈夫」

俺が言うと翔は少し可愛いと思えるような顔で笑った。

「風邪でも引いた?」

「さぁ。引いてても大したこたねぇよ」

「みたいだな」

翔も気付いた。

俺の話し方が凄く自然になっていることに。

「悩みって凄いな」

そんなに悩んでたつもりもなかったけど。

「今朝の健にはビックリ」

「えっ?」

「全然話もしなかったし、顔つきが全然違った。無理に
話されるより良いんだけどね?」

「翔……」

「ハハッ、今楽ならいいよなっ」

翔の笑顔につられた。

俺が笑うと翔の笑顔がどんどん安心したような顔に
変わっていった。

そんな、笑ってなかったかな。

弟にも幼馴染にも同級生にも心配させる俺。

人に心配させる天才とも言えるだろう。

「愛生、大事」

「俺も、思った」

「健……」

「え?」

翔の頬を涙が伝った。

俺はその涙を優しく拭った。

弟、なんだよね。

弟相手にこれか。

こんな兄弟居ないだろう。

仲悪いよりは良いんだろうけど。

「えっ翔、どうした?」

翔は下を向いて首を振った。

俺は可愛い弟の頭をそっと撫でた。

友達でもこんなことしないだろう。

友達が居ないから分かんないけど。

優が居るか。

あんま関わってないけど。

一番知らない人。

なのに俺は、あの時あいつにああ言った。

あいつと、あんな話をした。

なんでだろう。

何か、同じものを感じるって、こういうことなのかな。

この人なら分かってくれる。

そう思っていた自分がいた気がする。

「健」

「翔?」

「しばらくここに居て良い?」

「いや、良いけど……」

まぁ翔もこういう時なんだろう。

そのうち落ち着く。

ある程度、時が経てば。

それで、良いよね。

必要以上に難しい事を考える必要はない。

「翔」

ダメだ。

弟に見えない。

こんなに似てんのに。

最高に似た兄弟だと自分達でも思う。

俺はそんな弟、の頭を撫でた。

その弟は、もう現実の世界には居ないみたいだけど。

「ったく」

俺は翔を抱き上げた。

「えっ」

完全に力抜いてやがる。

男抱いたの初めて。

愛生の事は数え切れない程ある。

遊び疲れて寝て、俺に家まで送らせるのが、小さい頃の
あいつの特技だったから。


「あっ」

丁寧にドア閉めてきたのね。

俺はいくつかの難所を乗り越え、翔をベッドの上に。

「んんっ……眩ーい」

俺は静かにカーテンを閉めた。

最初からこうしたかったけど。

そうすると暗いって騒ぐ。

それが宮河 翔。

「おはようございます」

「んーっ」

ここに運ぶと早いんだよな。

まぁ、俺は何回もしてもらったけど。

なんで泣くと寝るんだろう。

寝なかった試しがない。

俺は再び夢の世界へ行った翔の寝顔を眺めた。


<2016/07/31 17:29 秋の空>消しゴム
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