あたしは一人で学校に向かっていた。
その時、健らしき人物を見つけた。
「健?」
健はあたしの方へ振り向いた。
「やっぱり。凄いじゃんっ」
そう言って健の肩の辺りを軽く叩いた。
「無理すんなよ?保健室ならあたしが一緒に行ってやる」
そう言って学校に向かおうとしたあたしの制服を掴む健。
「えっ、健?今日は帰る?」
まだ学校に行くより健の家に戻る方が近い。
「良いよ?無理しない方が良いから」
あたしの制服を掴む手が震えてる気がする。
「健?」
健は何も答えない。
「良いよ。今日は帰ろう?もう十分だよ?」
呼吸が浅い気がする。
「大丈夫。一回落ち着こう?」
私はゆっくり健の細く小さい背中をさすった。
でもこう出来て良かった。
これも出来ないくらい緊張させちゃってたら。
えっ、断ることも出来ない程だったり?
あたしはとりあえず、断りたいなら断れるくらいまで
落ち着かせるため、背中をさすり続けた。
少し落ち着いてきた頃、健の体が大きく揺れた。
支えようと思った頃には、健はあたしの体に倒れ込んだ。
「ちょっ、健?」
えっ、ここ?
ここで、こうなっちゃう?
えっ、意識、ある?
「健、健?」
あたしは軽く健の体を揺さぶった。
「ごめ……ごめん……」
健は呟くように言ってあたしから少し離れた。
「大丈夫?」
健は何度か頷いた。
「今日は帰らない?もしあれなら あたしも居るよ?」
「大丈夫……」
「そう。無理なら言って?」
健は小さく頷いた。
あたしたちは再び学校に向かい、歩き出した。
そして少し歩いた頃、夕里の姿が。
「ゆり……」
健が小さな声で言った。
「ん?大丈夫?」
健は頷いた。
あたしの制服を、跡が付くほど強く握って。
「教室行かないで保健室そのまま行こ?」
健が頷いた。
よっぽどだ。
あたしも笑顔で頷いた。
「じゃあ、ゆっくり行こ?」
よくここまで来たよ。
「えっ……」
あれ、行けない?
あたしは後ろの健を見た。
「健っ?どうした?」
優があたしたちに気付き、駆け寄ってきた。
「ちょっと、端寄ろうか」
優の声で、あたしたちは少し暗くなってる所に。
「健、今日は帰ろう?」
その言葉には、あたしから出たものでも優から出たもの
でも、健は決して頷かなかった。
「健、そこまでして行く理由は何?」
あたしの言葉に、健と優は驚きの顔。
あたしはあまり気にせず続けた。
「無理したって良い事なんてないよ?無理なら無理で
良いんだよ?」
健は何も言わず、下を向いてしまった。
「ごめんね?でも、お願いだから無理はしないで?」
「いつ……来るか……」
健は呼吸が乱れる中、必死に何かを伝えようとしてる。
「ん?なに?」
こんなに高い声を出したのは初めてだった。
「分から……ない……」
いつ来るか分からない。
あたしは優と顔を見合わせた。
「誰か来るの?家?」
健は頷いた。
「誰が来るの?」
「いや……あっ……」
健の呼吸が急激に速くなった。
「ごめんごめん。もう良いよ。ありがとね」
あたしは健の背中をさすった。
そんなに怖い人が来るのか。
その人はどんな人なのか。
そんな事を、考えながら。
「母……」
健のなんとか聞こえた声に、優はやっぱり、とでも
言いそうな顔をした。
「お母さん?どこか行ってたの?」
健は木に手をつき、荒い呼吸を繰り返しながら頷いた。
「そっか。ありがとね、教えてくれて」
「健、愛生に言ってもいい?」
優が優しく聞くと、健は頷いた。
そんなに辛いのに、ごめんね。
「健のお母さん、よっぽどのことがないと、学校を
休んだり、早退することは許さない人で……」
でも、中学の頃は……
行くフリだけして帰って来てたとか?
そこまでして……
「で、中学の頃はもう本当にダメで。お母さんも分かってくれたみたい」
「そうなの?」
あたしはなんとなく信じたくなくて、健に確認した。
健は、頷いた。
「そんなお母さんが、いつ帰ってくるか分からないから
帰れないの?」
健は、それにも頷いた。
頷いて欲しくない事にばかり。
「健?じゃあ、うちに来ない?」
「大丈夫……今日……行ければ…勢いで……」
「健、ダメだよ。勢いじゃダメ。ちゃんと『行ける』って思って来ないと」
「ちょっ、愛生、落ち着いて?」
「あたしは落ち着いてる」
「健が、『行ける』って思ったのが今日かもしれないよ?」
あたしは健の顔、その中でも目を見た。
数秒見てるけど、なかなか目が合わない。
「健、無理だよね」
「違う……俺は……」
そう、必死に言った健の頬を涙が伝った。
「健、もう良いよ。うち来よ?」
「あき……は…」
「あたしも居るよ。大丈夫。健は一人じゃないよ?」
「いいよ……行…く……」
「分かった。行こうか。けど、保健室だよ?」
健は頷いた。
やっぱりダメなんじゃん。
無理なんじゃん。
あたしは健と優と一緒に、保健室に直行した。
健は朝から恐怖感に襲われ疲れたのか来てすぐに寝て
しまった。
自分のベッドじゃなきゃ絶対寝ない人なのに。
よっぽだね。
あっ、そういえばあたしにはひとつ気になっていた
ことが。
「ねぇ、優」
「何?」
「保健室の先生って宮河っていう人じゃん?」
「そう、だね?」
「何か関係ある人なのかな?」
「どうだろう」
「優は何も知らない?」
「なんも」
「そっ…か」
なんだろう。
さっきその先生と会った時、健の何かが変わった気が
した。
この学校の生徒や、普通の先生を見た時とは少し違う、
あの感じ。
全く関係のない人ではなさそう。
「優」
「ん?」
そういった優の声が、いつもより少し低い気がした。
けどあたしはあまり気にせず、続けようとした。
「健の……」
「あのさ」
あたしは優を見た。
優は自分の制服のズボンを握り、下を向いていた。
「もう、良くない?」
「えっ?」
「そうやって健の家庭の事、探るの」
「いや、別に……」
「探ってるつもりはない」
あたしは初めて、優を怖いと思った。
優はあたしのそんな気持ちを知らず、そのまま続けた。
「そうかもしれないけど、健にとってはただの恐怖でしかないと思うよ?」
「あたしは、健の全部分かってあげたくて……」
「悪いけど、結局他人なんだよ?健の事は健にしか
分からない」
「優、どうしたの?」
「別にどうもしないよ」
優の声がほんの少し、いつもに近づいた。
「ただ、俺らは友達で良いって事を、忘れないで」
そう言って優は教室に戻った。
あたしを、健と二人で残して。
あたしのしてたことって、何だったんだろう。
『健にとってはただの恐怖でしかないと思うよ?』
ただの恐怖、か。
家庭の事、調べてんだもんね。
そりゃ怖いよな。
あたしは必死に涙を堪えた。
眠る、可愛い健のそばで。
その時、健らしき人物を見つけた。
「健?」
健はあたしの方へ振り向いた。
「やっぱり。凄いじゃんっ」
そう言って健の肩の辺りを軽く叩いた。
「無理すんなよ?保健室ならあたしが一緒に行ってやる」
そう言って学校に向かおうとしたあたしの制服を掴む健。
「えっ、健?今日は帰る?」
まだ学校に行くより健の家に戻る方が近い。
「良いよ?無理しない方が良いから」
あたしの制服を掴む手が震えてる気がする。
「健?」
健は何も答えない。
「良いよ。今日は帰ろう?もう十分だよ?」
呼吸が浅い気がする。
「大丈夫。一回落ち着こう?」
私はゆっくり健の細く小さい背中をさすった。
でもこう出来て良かった。
これも出来ないくらい緊張させちゃってたら。
えっ、断ることも出来ない程だったり?
あたしはとりあえず、断りたいなら断れるくらいまで
落ち着かせるため、背中をさすり続けた。
少し落ち着いてきた頃、健の体が大きく揺れた。
支えようと思った頃には、健はあたしの体に倒れ込んだ。
「ちょっ、健?」
えっ、ここ?
ここで、こうなっちゃう?
えっ、意識、ある?
「健、健?」
あたしは軽く健の体を揺さぶった。
「ごめ……ごめん……」
健は呟くように言ってあたしから少し離れた。
「大丈夫?」
健は何度か頷いた。
「今日は帰らない?もしあれなら あたしも居るよ?」
「大丈夫……」
「そう。無理なら言って?」
健は小さく頷いた。
あたしたちは再び学校に向かい、歩き出した。
そして少し歩いた頃、夕里の姿が。
「ゆり……」
健が小さな声で言った。
「ん?大丈夫?」
健は頷いた。
あたしの制服を、跡が付くほど強く握って。
「教室行かないで保健室そのまま行こ?」
健が頷いた。
よっぽどだ。
あたしも笑顔で頷いた。
「じゃあ、ゆっくり行こ?」
よくここまで来たよ。
「えっ……」
あれ、行けない?
あたしは後ろの健を見た。
「健っ?どうした?」
優があたしたちに気付き、駆け寄ってきた。
「ちょっと、端寄ろうか」
優の声で、あたしたちは少し暗くなってる所に。
「健、今日は帰ろう?」
その言葉には、あたしから出たものでも優から出たもの
でも、健は決して頷かなかった。
「健、そこまでして行く理由は何?」
あたしの言葉に、健と優は驚きの顔。
あたしはあまり気にせず続けた。
「無理したって良い事なんてないよ?無理なら無理で
良いんだよ?」
健は何も言わず、下を向いてしまった。
「ごめんね?でも、お願いだから無理はしないで?」
「いつ……来るか……」
健は呼吸が乱れる中、必死に何かを伝えようとしてる。
「ん?なに?」
こんなに高い声を出したのは初めてだった。
「分から……ない……」
いつ来るか分からない。
あたしは優と顔を見合わせた。
「誰か来るの?家?」
健は頷いた。
「誰が来るの?」
「いや……あっ……」
健の呼吸が急激に速くなった。
「ごめんごめん。もう良いよ。ありがとね」
あたしは健の背中をさすった。
そんなに怖い人が来るのか。
その人はどんな人なのか。
そんな事を、考えながら。
「母……」
健のなんとか聞こえた声に、優はやっぱり、とでも
言いそうな顔をした。
「お母さん?どこか行ってたの?」
健は木に手をつき、荒い呼吸を繰り返しながら頷いた。
「そっか。ありがとね、教えてくれて」
「健、愛生に言ってもいい?」
優が優しく聞くと、健は頷いた。
そんなに辛いのに、ごめんね。
「健のお母さん、よっぽどのことがないと、学校を
休んだり、早退することは許さない人で……」
でも、中学の頃は……
行くフリだけして帰って来てたとか?
そこまでして……
「で、中学の頃はもう本当にダメで。お母さんも分かってくれたみたい」
「そうなの?」
あたしはなんとなく信じたくなくて、健に確認した。
健は、頷いた。
「そんなお母さんが、いつ帰ってくるか分からないから
帰れないの?」
健は、それにも頷いた。
頷いて欲しくない事にばかり。
「健?じゃあ、うちに来ない?」
「大丈夫……今日……行ければ…勢いで……」
「健、ダメだよ。勢いじゃダメ。ちゃんと『行ける』って思って来ないと」
「ちょっ、愛生、落ち着いて?」
「あたしは落ち着いてる」
「健が、『行ける』って思ったのが今日かもしれないよ?」
あたしは健の顔、その中でも目を見た。
数秒見てるけど、なかなか目が合わない。
「健、無理だよね」
「違う……俺は……」
そう、必死に言った健の頬を涙が伝った。
「健、もう良いよ。うち来よ?」
「あき……は…」
「あたしも居るよ。大丈夫。健は一人じゃないよ?」
「いいよ……行…く……」
「分かった。行こうか。けど、保健室だよ?」
健は頷いた。
やっぱりダメなんじゃん。
無理なんじゃん。
あたしは健と優と一緒に、保健室に直行した。
健は朝から恐怖感に襲われ疲れたのか来てすぐに寝て
しまった。
自分のベッドじゃなきゃ絶対寝ない人なのに。
よっぽだね。
あっ、そういえばあたしにはひとつ気になっていた
ことが。
「ねぇ、優」
「何?」
「保健室の先生って宮河っていう人じゃん?」
「そう、だね?」
「何か関係ある人なのかな?」
「どうだろう」
「優は何も知らない?」
「なんも」
「そっ…か」
なんだろう。
さっきその先生と会った時、健の何かが変わった気が
した。
この学校の生徒や、普通の先生を見た時とは少し違う、
あの感じ。
全く関係のない人ではなさそう。
「優」
「ん?」
そういった優の声が、いつもより少し低い気がした。
けどあたしはあまり気にせず、続けようとした。
「健の……」
「あのさ」
あたしは優を見た。
優は自分の制服のズボンを握り、下を向いていた。
「もう、良くない?」
「えっ?」
「そうやって健の家庭の事、探るの」
「いや、別に……」
「探ってるつもりはない」
あたしは初めて、優を怖いと思った。
優はあたしのそんな気持ちを知らず、そのまま続けた。
「そうかもしれないけど、健にとってはただの恐怖でしかないと思うよ?」
「あたしは、健の全部分かってあげたくて……」
「悪いけど、結局他人なんだよ?健の事は健にしか
分からない」
「優、どうしたの?」
「別にどうもしないよ」
優の声がほんの少し、いつもに近づいた。
「ただ、俺らは友達で良いって事を、忘れないで」
そう言って優は教室に戻った。
あたしを、健と二人で残して。
あたしのしてたことって、何だったんだろう。
『健にとってはただの恐怖でしかないと思うよ?』
ただの恐怖、か。
家庭の事、調べてんだもんね。
そりゃ怖いよな。
あたしは必死に涙を堪えた。
眠る、可愛い健のそばで。
