健、ちょっと本気で気を付けてあげた方が良いかも。
聞こえない音まで聞こえちゃってるし。
そんなに、怖いのかな。
あたしは健の手に触れ続けた。
肌に触れてると落ち着くみたいなことを聞いたことがあるような。
触れてる側の人が落ち着くのかな。
あまり細かいことは気にしない。
間違いどんどん出てきそうだから。
にしても冷たすぎないかな。
健の、この手。
「健」
名前を呼んだだけでこの反応。
いろいろ敏感になってるんだね。
敏感になりすぎてるんだね。
「な、なに?」
「無理しないで?嫌なら帰ろうよ」
「大……丈夫…」
そう言った健の右手が、あたしの両手の中で少し動く。
「ほんとに無理なら言って?誰もダメとも言わないし、
怒らないから」
もう繊細すぎて小さな子供みたい。
その時、あたしにも聞こえる足音が。
明らかに健の顔色が変わる。
「大丈夫だよ」
健はあたしの両手の中から手を出し、シーツを強く
握った。
あたしはその健の右手に自分の左手を、さらにその上に
自分の右手を重ねた。
「来る…!」
健がそう言ったと同時に、保健室のドアが開く。
「ちょっと待っててね。大丈夫だから」
健は大きめに頷いた。
あたしはそれを確認し、カーテンの外へ。
「あら、宮本さん。健くん?」
これ、健にも聞こえてるんだよね。
「えっ、まぁ……」
「そっか。最近特に調子悪いみたいね」
この人、健の何を知ってるの?
「えぇ。今は風邪っぽいみたいですし」
「そう……」
「少し前に寝ちゃいました」
「免疫、大丈夫かしら」
弱そうな体してるもんね。
「だと、思いますけど……」
「しばらく居てあげて?」
「はい」
あたしは軽く頭を下げ、健のそばに。
最初からそうする気でしたけど。
「ちょっ…!」
健が本気でビクビクした顔であたしを見る。
「え?」
「寝てるって……」
「大丈夫。中には入らせないから」
あたしたちはお互いも聞こえないくらいの声で話した。
ああは言ったけど、健の様子は全く変わらない。
あっ!
そういう事か。
ごめん、気付かなくて。
「おっ、健」
あたしが起きた事にしようとしたらそれはそれで
『はぁ?』とでも言いそうな顔で見る。
あの人の前で目を閉じるのが怖いんでしょ?
あ、中入ると思ったのか。
あたしは大丈夫、の意味を込めて健の手を三度、優しく
叩いた。
伝わったかは、分からないけど。
「はぁ」
ため息吐かれた。
その時、健がまたシーツを握り、目を閉じた。
え、閉じるのが怖いんじゃないの?
あたしはそんなよく分からない健の、冷たい手に触れた。
明らかに苦しそうで、深さも安定しない健の呼吸。
「ちょっ、起きれる?」
あたしも少し支えながら健は起き上がった。
「大丈夫」
あたしはゆっくり、一定のテンポで健の背中を優しく
叩いた。
そのテンポで呼吸ができれば、そんなことを思いながら。
けどあたしの思いは届いてないみたい。
健は膝を抱え、ベッドの上で小さくなった。
でもこれじゃ呼吸しづらいでしょ。
「一回脚伸ばそ?」
あたしが言うと健はゆっくり脚を伸ばした。
長いん、だね。
羨ましい。
細いし。
「大丈夫だよ。ゆっくり」
まずはさすったほうがいいのかな。
あれっ、こういうの、何かなかったっけ。
精神的な方の、何か。
ダメだ。
知識が少なすぎて。
あたしはとりあえず健の小さな背中をさすり続けた。
しばらくさすり続けると、健の呼吸は落ち着いた。
そして健はすぐにあの長い脚を抱えた。
「疲れたね」
「大丈夫……ごめんね…」
「気にしないで?寒くない?」
「うん……大丈夫…」
「寝れば?」
あたしが言うと健が鼻をすすった。
風邪、引いてるんだもんね。
寝といた方が良いのに。
「えっ……」
健の制服の長いズボンを、水滴が転がった。
顔はよく見えないけど、泣いてるみたい。
よくこんな状態で来たね。
あたしがこんな辛かったら間違いなく来ない。
そんな奴はこんなに病まないね。
普通に考えて。
「健、もう今日は良くない?」
「大丈夫だから……」
健の声も、いつもより少し低い気がした。
しつこすぎたかな。
けど、もう十分なんだって。
家出たところでもう十分すぎてる。
そんな状態なのにここに居るなんて。
やろうと思えば健を背負って家まで行ける。
「ごめん……」
健が消えそうな、震えた声で言った。
「ん?なに?」
一人がいいのかな。
しばらく待ってみたけど、あれから健は何も言わない。
言いたい事があるなら言ってくれればいいのに。
「……りたい…」
「ん?帰る?」
健は膝を抱えたまま、小さく頷いた。
健がそう言うってよっぽど。
朝から無理そうだとは思ったけど。
「うん、良いよ。じゃあ、もう少しだけこのままで
居よ?」
今は休み時間。
誰が居るか分からない。
それこそ健にとってはただの恐怖でしかない。
その時、休み時間終了を告げる、今は嬉しいチャイムが
鳴った。
あたしたちはそれを合図に、保健室を出た。
聞こえない音まで聞こえちゃってるし。
そんなに、怖いのかな。
あたしは健の手に触れ続けた。
肌に触れてると落ち着くみたいなことを聞いたことがあるような。
触れてる側の人が落ち着くのかな。
あまり細かいことは気にしない。
間違いどんどん出てきそうだから。
にしても冷たすぎないかな。
健の、この手。
「健」
名前を呼んだだけでこの反応。
いろいろ敏感になってるんだね。
敏感になりすぎてるんだね。
「な、なに?」
「無理しないで?嫌なら帰ろうよ」
「大……丈夫…」
そう言った健の右手が、あたしの両手の中で少し動く。
「ほんとに無理なら言って?誰もダメとも言わないし、
怒らないから」
もう繊細すぎて小さな子供みたい。
その時、あたしにも聞こえる足音が。
明らかに健の顔色が変わる。
「大丈夫だよ」
健はあたしの両手の中から手を出し、シーツを強く
握った。
あたしはその健の右手に自分の左手を、さらにその上に
自分の右手を重ねた。
「来る…!」
健がそう言ったと同時に、保健室のドアが開く。
「ちょっと待っててね。大丈夫だから」
健は大きめに頷いた。
あたしはそれを確認し、カーテンの外へ。
「あら、宮本さん。健くん?」
これ、健にも聞こえてるんだよね。
「えっ、まぁ……」
「そっか。最近特に調子悪いみたいね」
この人、健の何を知ってるの?
「えぇ。今は風邪っぽいみたいですし」
「そう……」
「少し前に寝ちゃいました」
「免疫、大丈夫かしら」
弱そうな体してるもんね。
「だと、思いますけど……」
「しばらく居てあげて?」
「はい」
あたしは軽く頭を下げ、健のそばに。
最初からそうする気でしたけど。
「ちょっ…!」
健が本気でビクビクした顔であたしを見る。
「え?」
「寝てるって……」
「大丈夫。中には入らせないから」
あたしたちはお互いも聞こえないくらいの声で話した。
ああは言ったけど、健の様子は全く変わらない。
あっ!
そういう事か。
ごめん、気付かなくて。
「おっ、健」
あたしが起きた事にしようとしたらそれはそれで
『はぁ?』とでも言いそうな顔で見る。
あの人の前で目を閉じるのが怖いんでしょ?
あ、中入ると思ったのか。
あたしは大丈夫、の意味を込めて健の手を三度、優しく
叩いた。
伝わったかは、分からないけど。
「はぁ」
ため息吐かれた。
その時、健がまたシーツを握り、目を閉じた。
え、閉じるのが怖いんじゃないの?
あたしはそんなよく分からない健の、冷たい手に触れた。
明らかに苦しそうで、深さも安定しない健の呼吸。
「ちょっ、起きれる?」
あたしも少し支えながら健は起き上がった。
「大丈夫」
あたしはゆっくり、一定のテンポで健の背中を優しく
叩いた。
そのテンポで呼吸ができれば、そんなことを思いながら。
けどあたしの思いは届いてないみたい。
健は膝を抱え、ベッドの上で小さくなった。
でもこれじゃ呼吸しづらいでしょ。
「一回脚伸ばそ?」
あたしが言うと健はゆっくり脚を伸ばした。
長いん、だね。
羨ましい。
細いし。
「大丈夫だよ。ゆっくり」
まずはさすったほうがいいのかな。
あれっ、こういうの、何かなかったっけ。
精神的な方の、何か。
ダメだ。
知識が少なすぎて。
あたしはとりあえず健の小さな背中をさすり続けた。
しばらくさすり続けると、健の呼吸は落ち着いた。
そして健はすぐにあの長い脚を抱えた。
「疲れたね」
「大丈夫……ごめんね…」
「気にしないで?寒くない?」
「うん……大丈夫…」
「寝れば?」
あたしが言うと健が鼻をすすった。
風邪、引いてるんだもんね。
寝といた方が良いのに。
「えっ……」
健の制服の長いズボンを、水滴が転がった。
顔はよく見えないけど、泣いてるみたい。
よくこんな状態で来たね。
あたしがこんな辛かったら間違いなく来ない。
そんな奴はこんなに病まないね。
普通に考えて。
「健、もう今日は良くない?」
「大丈夫だから……」
健の声も、いつもより少し低い気がした。
しつこすぎたかな。
けど、もう十分なんだって。
家出たところでもう十分すぎてる。
そんな状態なのにここに居るなんて。
やろうと思えば健を背負って家まで行ける。
「ごめん……」
健が消えそうな、震えた声で言った。
「ん?なに?」
一人がいいのかな。
しばらく待ってみたけど、あれから健は何も言わない。
言いたい事があるなら言ってくれればいいのに。
「……りたい…」
「ん?帰る?」
健は膝を抱えたまま、小さく頷いた。
健がそう言うってよっぽど。
朝から無理そうだとは思ったけど。
「うん、良いよ。じゃあ、もう少しだけこのままで
居よ?」
今は休み時間。
誰が居るか分からない。
それこそ健にとってはただの恐怖でしかない。
その時、休み時間終了を告げる、今は嬉しいチャイムが
鳴った。
あたしたちはそれを合図に、保健室を出た。
