健は今、あたしのベッドで寝てる。
「疲れたよな」
あたしはそっと健の頭を撫でてみた。
無反応。
「えっ……」
息、してるね。
良かった良かった。
どんな心配してんだろ。
あたしは窓の外を見た。
「ハァ、ハァ……」
その時、乱れた呼吸が。
「ちょっ、健?大丈夫?」
あたしはうつ伏せに寝て、タオルケットに顔を埋める健の背中をさすった。
変な夢でも見たのかな。
「ごめん……」
「良いから」
健はゆっくり起き上がり、ベッドに座った。
あたしもその隣に座り、背中をさすり続けた。
「大丈夫?」
「あっ、うん。ごめんね…」
そう言った健の声は、思ったより明るかった。
寝てても休まらないんだね。
「変な夢でも見た?」
「あっ、ちょっとね……」
「そっか。あっ、飲んで」
あたしは健が寝てる間に持ってきておいた水を渡した。
「ごめん……」
「ハハッ、疲れたろ」
この疲れはどう取るのよ。
寝て疲れるなんて。
あたしには一度もそんな経験はない。
寝たらもうスッキリだから。
前日の嫌な事は全て忘れてる。
なんとも脳天気な女。
「ケホッケホッ……」
この咳。
可愛いのね。
本当に小さい子みたい。
背はあたしより全然高いのに。
そういう問題じゃないか。
放っとけないんだもん。
小さい子みたいに、繊細で。
「はぁ……」
「おつかれさん。頑張ったな」
「んっ……」
「良いよ。しばらく寝てな?夢の中には行かなくて
いいから」
あたしが言うと、健はほんの少し笑ってくれた。
また、あの頃みたいに笑い合えるようになればいいのにね。
「寒かったら布団掛けな?まぁ健の身体が拒絶反応を
起こさなければ、だけど?」
あたしは健が寝れるようにベッドからどいた。
「どんだけ神経質だと思ってんだよ」
「でも保健室のベッドでは意地でも寝ない人よね」
「あれはほら、どの学年のどんな人が寝たか分からない
から」
「十分神経質よ?」
「フッ」
鼻で笑いやがった。
けど、凄く嬉しかった。
ある程度余裕があるときしかなやらないから。
あたしは嬉しくて笑顔になった。
「何笑ってんの」
言い方も冷たくなってきた。
凄い安心してる自分がいる。
「別に」
「そっ」
やっぱり健はこうじゃないとね。
常に機嫌悪そうな。
けど、あの日は何か違ったんだよな。
「そうだ健」
「何」
「今度、さ……」
健はあたしを見た。
言いづらくてしょうがない。
「愛生?」
「病院……行ってみたら?」
「ハハハッ」
笑われちゃったよ。
だいぶ、不自然に。
「愛生にはいつか言われると思った」
「えっ?」
「心療内科だろ?」
しかないでしょ。
「そ〜んな大事に……」
「薬」
「本気?」
「もしかしたら、薬出されるやつかも」
「えっ、愛生?」
「あたし、ちょっと考えてみたの」
「何考えてんだよ。怖えし」
どうしよう。
不安にさせるだけかな。
「あたしがただ思っただけ。なんの根拠も無い」
健は少し不安そうに頷いた。
あたしは深めに呼吸をした。
けど、あたしに言える自信はなかった。
「いや、やっぱこういう話はやめとこっ。なっ?」
「ガッツリ雰囲気出しといて」
「出したんじゃなくて、出ちゃったの」
「も〜っ」
「健ったら可愛いのね」
「は?」
「ハハッ」
けど、間違ってはいないと思う。
健が、ある恐怖症であることは。
あたしはその恐怖症について調べてみた。
やっぱそこそこ当てはまってんだよな。
今の健と、その恐怖症の主な症状。
「健」
「愛生」
同時にお互い呼ぶ私達の声。
「なに?」
「いや……明日…暇?」
「暇」
「来て……」
「え?」
「うち…」
わーお。
健に、誘われちゃった?
これ結構凄いんじない?
「いいよっ、行ってあげる」
あたしがそう言った時、健の顔つきが変わった。
「どうした?」
「いや……なんでも………」
ないようには見えないんだけどな。
「ん?何かあった?」
あたしは健の視線の先を見てみた。
えぇ、ドア?
ドアの先に、何かあるみたいな?
健、怖い。
あたしにこのドアを開ける自信はない。
「えっ…」
「健?」
「消えた……」
「いやいやいや、何か見えてたの?」
塩、かな。
盛っとこう。
「いや……んでもない……」
健はかなりゆとりのある制服の腕の辺りを強く握った。
「健?どうした?」
一回落ち着こうか。
あたしはなるべく音を立てずに深呼吸をした。
「健、大丈夫だよ」
あたしが言うと健はそのまま私に向かって倒れてきた。
今朝と同じ。
一つ違うのが、あたしの方に来てからも浅い呼吸を
繰り返していること。
「健、大丈夫」
泣いた後みたいになってる。
今健は相当苦しいだろう。
あたしはとりあえず健の背中をさすった。
「あき……」
「大丈夫。あたしはどこも行かないよ?」
そんな状態の大切な幼馴染、放っとけんよ。
「こ、ここ……」
「あたしん家だよ?あたしの部屋」
あたしは自分でも驚いた。
あたしにこんな優しい言い方が出来るのだと。
「んっ、はあっ……」
どうしたんだろう。
今までで一番辛そう。
えっ、家に本当にナニカ居るの?
居てはいけない、ナニカが。
お祓い、してもらおうかな。
「はぁっ、はぁ……はぁ…」
意外と早く呼吸が落ち着いてきた。
「大丈夫。疲れたね」
えっ、もう、眠りについちゃった感じ?
あたしは自分より遥かに背の高い男を抱き上げた。
「えっ」
上がった。
上げられた。
こいつ、大丈夫かよ……
あたしは女でも抱き上げられる男をベッドの上へ。
「健……」
やたら制服ゆるそうだけど、大丈夫かな。
えっ、急に痩せちゃったとか?
ずっと一緒にいたけどそんな感じはしない。
誰かのお下がりとか?
にしてはサイズが合っていな過ぎ。
もう少し小さいの貰えば良かったのに。
すると縦が足りないとか?
背だけはあるからね。
180近いんじゃないかな。
あたしは165くらい。
15センチ。
それくらいは違うように見えるけどな。
「ケホッ……」
うーん。起きてはいないみたい。
大丈夫、だよね。
だから今日は無理すんなって言ったのに。
けどお母さん、怖いんだよね。
『母……』
母?
母って呼んでるの?
まさか、ね。
どういう関係の人が来るか伝えたかったんだろう。
「んっ、ゲホッ、ゲホ……」
「だいじょーぶ?」
「あき……」
「健?」
「はぁっ、ごめん……」
「気にすんな。えっ、何が見えたの?」
「ここ、誰か居る?」
怖いんですけど。
「バカ。居るわけないでしょ?」
「そう…、か」
「誰か見たの?」
「いや居る気がしただけ。視線を……感じたってか…」
居る気がしたとか、一番怖いやつ。
視線を感じたとか、見てたってこと?
健みたいに敏感な人が言うとたまらなく怖いんですが。
視線を感じた。
視線が怖いのかな。
あれっ、我が家で誰よりも鋭い視線を向ける女が居る。
「まさかっ!」
「ちょっ、愛生っ…」
あたしは健をおいてリビングへ。
「あ、愛生じゃん」
「何?買い物なら行くけど?」
「何言ってるの?」
こっちのセリフ。
「部屋の前きたろ」
「あっ!そうそう。お米が無かったの」
米とか。
重いんだけど。
絶対あたしに頼む時は10キロだし。
「買って来て?10キロ」
嫌な姉。
「後でな」
あたしは姉ちゃんに何も言わせず、部屋に戻った。
「あき?」
「愛生なんだけど、ごめんね」
「え?」
「姉ちゃんが部屋の前に居たらしい」
「結構な、ハハッ」
威圧感。
「でも、前はあんなじゃなかったよ?」
「えっ?」
「いつも愛生のこと連れて来てたから。その時お姉さん
出てきて」
かなり前のお話だね。
人は変わるんだよ。
そんな、10年も経てば。
だから、いつか健も、また笑えるようになるよ。
あたしが笑わせてやる。
心から、な。
「疲れたよな」
あたしはそっと健の頭を撫でてみた。
無反応。
「えっ……」
息、してるね。
良かった良かった。
どんな心配してんだろ。
あたしは窓の外を見た。
「ハァ、ハァ……」
その時、乱れた呼吸が。
「ちょっ、健?大丈夫?」
あたしはうつ伏せに寝て、タオルケットに顔を埋める健の背中をさすった。
変な夢でも見たのかな。
「ごめん……」
「良いから」
健はゆっくり起き上がり、ベッドに座った。
あたしもその隣に座り、背中をさすり続けた。
「大丈夫?」
「あっ、うん。ごめんね…」
そう言った健の声は、思ったより明るかった。
寝てても休まらないんだね。
「変な夢でも見た?」
「あっ、ちょっとね……」
「そっか。あっ、飲んで」
あたしは健が寝てる間に持ってきておいた水を渡した。
「ごめん……」
「ハハッ、疲れたろ」
この疲れはどう取るのよ。
寝て疲れるなんて。
あたしには一度もそんな経験はない。
寝たらもうスッキリだから。
前日の嫌な事は全て忘れてる。
なんとも脳天気な女。
「ケホッケホッ……」
この咳。
可愛いのね。
本当に小さい子みたい。
背はあたしより全然高いのに。
そういう問題じゃないか。
放っとけないんだもん。
小さい子みたいに、繊細で。
「はぁ……」
「おつかれさん。頑張ったな」
「んっ……」
「良いよ。しばらく寝てな?夢の中には行かなくて
いいから」
あたしが言うと、健はほんの少し笑ってくれた。
また、あの頃みたいに笑い合えるようになればいいのにね。
「寒かったら布団掛けな?まぁ健の身体が拒絶反応を
起こさなければ、だけど?」
あたしは健が寝れるようにベッドからどいた。
「どんだけ神経質だと思ってんだよ」
「でも保健室のベッドでは意地でも寝ない人よね」
「あれはほら、どの学年のどんな人が寝たか分からない
から」
「十分神経質よ?」
「フッ」
鼻で笑いやがった。
けど、凄く嬉しかった。
ある程度余裕があるときしかなやらないから。
あたしは嬉しくて笑顔になった。
「何笑ってんの」
言い方も冷たくなってきた。
凄い安心してる自分がいる。
「別に」
「そっ」
やっぱり健はこうじゃないとね。
常に機嫌悪そうな。
けど、あの日は何か違ったんだよな。
「そうだ健」
「何」
「今度、さ……」
健はあたしを見た。
言いづらくてしょうがない。
「愛生?」
「病院……行ってみたら?」
「ハハハッ」
笑われちゃったよ。
だいぶ、不自然に。
「愛生にはいつか言われると思った」
「えっ?」
「心療内科だろ?」
しかないでしょ。
「そ〜んな大事に……」
「薬」
「本気?」
「もしかしたら、薬出されるやつかも」
「えっ、愛生?」
「あたし、ちょっと考えてみたの」
「何考えてんだよ。怖えし」
どうしよう。
不安にさせるだけかな。
「あたしがただ思っただけ。なんの根拠も無い」
健は少し不安そうに頷いた。
あたしは深めに呼吸をした。
けど、あたしに言える自信はなかった。
「いや、やっぱこういう話はやめとこっ。なっ?」
「ガッツリ雰囲気出しといて」
「出したんじゃなくて、出ちゃったの」
「も〜っ」
「健ったら可愛いのね」
「は?」
「ハハッ」
けど、間違ってはいないと思う。
健が、ある恐怖症であることは。
あたしはその恐怖症について調べてみた。
やっぱそこそこ当てはまってんだよな。
今の健と、その恐怖症の主な症状。
「健」
「愛生」
同時にお互い呼ぶ私達の声。
「なに?」
「いや……明日…暇?」
「暇」
「来て……」
「え?」
「うち…」
わーお。
健に、誘われちゃった?
これ結構凄いんじない?
「いいよっ、行ってあげる」
あたしがそう言った時、健の顔つきが変わった。
「どうした?」
「いや……なんでも………」
ないようには見えないんだけどな。
「ん?何かあった?」
あたしは健の視線の先を見てみた。
えぇ、ドア?
ドアの先に、何かあるみたいな?
健、怖い。
あたしにこのドアを開ける自信はない。
「えっ…」
「健?」
「消えた……」
「いやいやいや、何か見えてたの?」
塩、かな。
盛っとこう。
「いや……んでもない……」
健はかなりゆとりのある制服の腕の辺りを強く握った。
「健?どうした?」
一回落ち着こうか。
あたしはなるべく音を立てずに深呼吸をした。
「健、大丈夫だよ」
あたしが言うと健はそのまま私に向かって倒れてきた。
今朝と同じ。
一つ違うのが、あたしの方に来てからも浅い呼吸を
繰り返していること。
「健、大丈夫」
泣いた後みたいになってる。
今健は相当苦しいだろう。
あたしはとりあえず健の背中をさすった。
「あき……」
「大丈夫。あたしはどこも行かないよ?」
そんな状態の大切な幼馴染、放っとけんよ。
「こ、ここ……」
「あたしん家だよ?あたしの部屋」
あたしは自分でも驚いた。
あたしにこんな優しい言い方が出来るのだと。
「んっ、はあっ……」
どうしたんだろう。
今までで一番辛そう。
えっ、家に本当にナニカ居るの?
居てはいけない、ナニカが。
お祓い、してもらおうかな。
「はぁっ、はぁ……はぁ…」
意外と早く呼吸が落ち着いてきた。
「大丈夫。疲れたね」
えっ、もう、眠りについちゃった感じ?
あたしは自分より遥かに背の高い男を抱き上げた。
「えっ」
上がった。
上げられた。
こいつ、大丈夫かよ……
あたしは女でも抱き上げられる男をベッドの上へ。
「健……」
やたら制服ゆるそうだけど、大丈夫かな。
えっ、急に痩せちゃったとか?
ずっと一緒にいたけどそんな感じはしない。
誰かのお下がりとか?
にしてはサイズが合っていな過ぎ。
もう少し小さいの貰えば良かったのに。
すると縦が足りないとか?
背だけはあるからね。
180近いんじゃないかな。
あたしは165くらい。
15センチ。
それくらいは違うように見えるけどな。
「ケホッ……」
うーん。起きてはいないみたい。
大丈夫、だよね。
だから今日は無理すんなって言ったのに。
けどお母さん、怖いんだよね。
『母……』
母?
母って呼んでるの?
まさか、ね。
どういう関係の人が来るか伝えたかったんだろう。
「んっ、ゲホッ、ゲホ……」
「だいじょーぶ?」
「あき……」
「健?」
「はぁっ、ごめん……」
「気にすんな。えっ、何が見えたの?」
「ここ、誰か居る?」
怖いんですけど。
「バカ。居るわけないでしょ?」
「そう…、か」
「誰か見たの?」
「いや居る気がしただけ。視線を……感じたってか…」
居る気がしたとか、一番怖いやつ。
視線を感じたとか、見てたってこと?
健みたいに敏感な人が言うとたまらなく怖いんですが。
視線を感じた。
視線が怖いのかな。
あれっ、我が家で誰よりも鋭い視線を向ける女が居る。
「まさかっ!」
「ちょっ、愛生っ…」
あたしは健をおいてリビングへ。
「あ、愛生じゃん」
「何?買い物なら行くけど?」
「何言ってるの?」
こっちのセリフ。
「部屋の前きたろ」
「あっ!そうそう。お米が無かったの」
米とか。
重いんだけど。
絶対あたしに頼む時は10キロだし。
「買って来て?10キロ」
嫌な姉。
「後でな」
あたしは姉ちゃんに何も言わせず、部屋に戻った。
「あき?」
「愛生なんだけど、ごめんね」
「え?」
「姉ちゃんが部屋の前に居たらしい」
「結構な、ハハッ」
威圧感。
「でも、前はあんなじゃなかったよ?」
「えっ?」
「いつも愛生のこと連れて来てたから。その時お姉さん
出てきて」
かなり前のお話だね。
人は変わるんだよ。
そんな、10年も経てば。
だから、いつか健も、また笑えるようになるよ。
あたしが笑わせてやる。
心から、な。
