俺らは再びこの場所へ。
もうそこには、夕里の姿は無かった。
「やっぱりここには誰にも居て欲しくないよね」
愛生が珍しい事を。
俺はつい愛生を見た。
「ここは誰も居ないってのが良いとこなんだから」
「そうなんだ」
「もうね、知ってても欲しくない。この場所は」
本当にその人だと思ってるんだ。
『ここに来れば会える』
というより
『ここがあの人』って感じかな。
「ここは、あの人だから」
そのまま。
少し嬉しかった。
「健には、居る?大切な人。あたし以外で」
よく分かってんな。
「一人だけ、居る」
愛生は隣で意外そうな顔をして俺を見た。
「そうなんだ」
愛生は少し嬉しそうだった。
俺は愛生の少し優しい言い方のその言葉に頷いた。
「多分知ってると思うよ」
「あたしが?その人を?」
俺はそれにも頷いた。
そして続けた。
その、愛生以外に大切な人の、名前を。
愛生はもちろん驚いていた。
「良かったよ。これなら、あたしが居なくなっても健は
平気だね」
俺は隣で、新たに葉を付けた大きな銀杏の木を眺める
愛生を見た。
愛生はそのまま続けた。
「あたし……たぶん……」
愛生の聞き取りづらいほどに震えた声。
俺はその声で続く言葉を待った。
「けんから………はなれ……」
つい愛生の頬を大粒の涙が伝う。
俺はそんな愛生を後ろからそっと抱きしめた。
こんなことしたの初めてだった。
「け…ん……」
「良いよ。泣きたかったら泣け」
笑う方法は、ここに眠るイケメンくんが教えてくれる
から。
「けん……やだ…」
俺は愛生をそっと前から抱きしめた。
「う……い、やっ……」
離れた方が良かったかな。
「愛生?どうした?大丈夫だよ?」
『離れたくない』
愛生は長い時間を掛け、確かにそう言った。
そして、『あたしには健が居ないとダメ』とも。
「け、ん……」
俺は初めて見た。
こんなに、弱気になってる愛生を。
「ずっと……けん……いやっ…」
「大丈夫。落ち着こ?」
俺は愛生の呼吸を落ち着かせるため、少し強めに愛生の
背中をさすった。
「けっ、ん……」
そういえば愛生、凄い綺麗な声してるんだな。
今まで12年間も一緒に居るのに。
今日初めて思った。
「け、ん…」
「ん?何?」
急にどうしたんだろう。
『居ない』って答えた方が良かったかな。
「いかっ……ない、で……」
「大丈夫。どこも行かないし、行けないよ?」
「あっ………」
愛生は小さくそう言うと俺の腕の中で眠ったのか、
そのまま動かなくなった。
「えっ、愛生?愛生?」
寝たん、だよね。
俺は愛生を抱き上げ、木に寄りかからせた。
「えっ……」
その愛生が俺の方に倒れてきた。
木に、してくれないかな……
これはちょっと耐えられるか……
「あき?ちょっ、あき?」
「うぅ〜っ」
「えっ、ちょ、ごめん……」
「ん?」
愛生は目を覚まし、辺りを見渡した。
「あっ!ごめん」
そして俺から離れた。
「あっ、いや……」
抱いたくせにああ来ると、ちょっとね。
「健、大丈夫?」
「あっ、うん。ちょっと……ビックリ…したけど」
「ごめん。ありがとね?」
「あぁ、いや、全然……」
大丈夫そうには聞こえないよね。
「泣き過ぎた。けどなんで泣いたんだろ?」
「『嫌』」
「へっ?」
「『嫌』って言いながら泣いてた」
「あぁ〜、ごめん」
「いや、別に良いんだよ?」
「優しくすんなっ」
そう言ってまた目元を拭う愛生。
俺らはしばらくそのままで居た。
もうそこには、夕里の姿は無かった。
「やっぱりここには誰にも居て欲しくないよね」
愛生が珍しい事を。
俺はつい愛生を見た。
「ここは誰も居ないってのが良いとこなんだから」
「そうなんだ」
「もうね、知ってても欲しくない。この場所は」
本当にその人だと思ってるんだ。
『ここに来れば会える』
というより
『ここがあの人』って感じかな。
「ここは、あの人だから」
そのまま。
少し嬉しかった。
「健には、居る?大切な人。あたし以外で」
よく分かってんな。
「一人だけ、居る」
愛生は隣で意外そうな顔をして俺を見た。
「そうなんだ」
愛生は少し嬉しそうだった。
俺は愛生の少し優しい言い方のその言葉に頷いた。
「多分知ってると思うよ」
「あたしが?その人を?」
俺はそれにも頷いた。
そして続けた。
その、愛生以外に大切な人の、名前を。
愛生はもちろん驚いていた。
「良かったよ。これなら、あたしが居なくなっても健は
平気だね」
俺は隣で、新たに葉を付けた大きな銀杏の木を眺める
愛生を見た。
愛生はそのまま続けた。
「あたし……たぶん……」
愛生の聞き取りづらいほどに震えた声。
俺はその声で続く言葉を待った。
「けんから………はなれ……」
つい愛生の頬を大粒の涙が伝う。
俺はそんな愛生を後ろからそっと抱きしめた。
こんなことしたの初めてだった。
「け…ん……」
「良いよ。泣きたかったら泣け」
笑う方法は、ここに眠るイケメンくんが教えてくれる
から。
「けん……やだ…」
俺は愛生をそっと前から抱きしめた。
「う……い、やっ……」
離れた方が良かったかな。
「愛生?どうした?大丈夫だよ?」
『離れたくない』
愛生は長い時間を掛け、確かにそう言った。
そして、『あたしには健が居ないとダメ』とも。
「け、ん……」
俺は初めて見た。
こんなに、弱気になってる愛生を。
「ずっと……けん……いやっ…」
「大丈夫。落ち着こ?」
俺は愛生の呼吸を落ち着かせるため、少し強めに愛生の
背中をさすった。
「けっ、ん……」
そういえば愛生、凄い綺麗な声してるんだな。
今まで12年間も一緒に居るのに。
今日初めて思った。
「け、ん…」
「ん?何?」
急にどうしたんだろう。
『居ない』って答えた方が良かったかな。
「いかっ……ない、で……」
「大丈夫。どこも行かないし、行けないよ?」
「あっ………」
愛生は小さくそう言うと俺の腕の中で眠ったのか、
そのまま動かなくなった。
「えっ、愛生?愛生?」
寝たん、だよね。
俺は愛生を抱き上げ、木に寄りかからせた。
「えっ……」
その愛生が俺の方に倒れてきた。
木に、してくれないかな……
これはちょっと耐えられるか……
「あき?ちょっ、あき?」
「うぅ〜っ」
「えっ、ちょ、ごめん……」
「ん?」
愛生は目を覚まし、辺りを見渡した。
「あっ!ごめん」
そして俺から離れた。
「あっ、いや……」
抱いたくせにああ来ると、ちょっとね。
「健、大丈夫?」
「あっ、うん。ちょっと……ビックリ…したけど」
「ごめん。ありがとね?」
「あぁ、いや、全然……」
大丈夫そうには聞こえないよね。
「泣き過ぎた。けどなんで泣いたんだろ?」
「『嫌』」
「へっ?」
「『嫌』って言いながら泣いてた」
「あぁ〜、ごめん」
「いや、別に良いんだよ?」
「優しくすんなっ」
そう言ってまた目元を拭う愛生。
俺らはしばらくそのままで居た。
