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Best Friend〜姿を変えた君と〜


私は今、後悔している。

あの時すれ違ったのは間違いなく健くんと愛生。

なんで声掛けなかったんだろう。

あのすれ違った瞬間が頭の中で何度もゆっくりと
繰り返される。

健くん、また何かあったのかな。

あの誰にも声を掛けさせないような、近寄り難い雰囲気。

愛生?

愛生と何かあったとか?

また?

少し前に仲直りしたばかりなのに。

「夕里?」

「あっ、優……」

居たんだっけ。

忘れてた。

「大丈夫?」

「うん……」 

「何か悩み事でも?」

「いや、前、夜にあそこ行ったじゃない?」

「行った、ね?」

「その時、健くんに会ったじゃん」

優は頷いた。

私はそのまま続けた。

「で、今日はあそこで健くんと愛生に会った、っていうかすれ違ったの」

「うん」

優は優しくそう言って話を聞いてくれる。

私はそれに甘え、話を続ける。

「そしたら、今日は凄い雰囲気放ってて……」

「凄い雰囲気?」

私は頷き、付け加えるように言った。

「誰にも話し掛けさせないような、近寄り難い雰囲気」

「ちょっと怖かったんだ」

だいぶ、怖かったかな。

私は訂正はせず頷いた。

「愛生は?その時、健と一緒に居たんでしょ?」

「うん。なんか、やたら柔らかい雰囲気だった。普段の、かっこいい感じは全く無かった……」

「そっか。何かあったとすれば、あの二人に、また……」

「やっぱり、そうだよね」

そう、しかないよね。

「だって、夕里は何もしてないでしょ?」

なんとなく優のその言葉が辛かった。

「と……思ってる…」

そして私は下を向いて優から目を逸らす。

「俺も特に何もして……」

優は途中で言うのをやめ、下を向いた。

「優?」

「いや、二人に、ってわけでもないんだけど……」

「何かあったの?」

優は頷き、愛生に保健室で少しキツめな事を言って
しまったと教えてくれた。

「まぁ、それは健は聞いてないし、夕里には関係ない
けどね。変な意味じゃないくてね?」

「ふふっ、大丈夫。優はそんなこと言わないって信じてるから」

優は少し不自然な笑顔を見せた。

『信じてるから』

重かったかな。

「だから、もしまた二人に何かあったなら、今回は逆でも良い?」

「逆?」

「俺が健で、夕里が愛生」

「全然良いんだけど……」

優の視線が私に向く。

私は優の顔は見れなかった。

「良いけど、私達が関わっていい事かな……」

「あぁ……そっちねぇ……」

優も下を向く。

「友達って、難しいよね…」

「夕里?」

優は再び私を見た。

「だって、一回喧嘩したら、なかなか仲直りできない
じゃない?」

「それは恋人も夫婦も同じじゃない?」

「でも、そこまで近い関係になったらお互い受け入れ
られないかな」

「その人たち次第かな……」

もう話がだいぶ逸れてきた。

「二人の事は、しばらくそっとしておいてあげようか」

「何もしないの?」

「うん。放っとくんじゃない。そっとしておくの。
その違いは、夕里がよく分かってるでしょ?」

そっとしておく。

分かってる。

それが一番良い事だって。

けど、やっぱり難しい。

出来る事が他にもあるかもしれないのに、してあげたい事もあるのに、何もしないでただ二人の現状を見つめてる
だけ。

私は今日も窓の前に立ち、外を見た。

彼から、何かをもらうつもりで。

何かを教えてもらうつもりで。

「あの人なら、どうするんだろうね」

気付いたら隣に優が居た。

優は可愛らしく笑った。

やっぱり、優が一番 気、遣わないかも。

やっぱり健くんは不安定で。

それを支えてあげなきゃいけないのに。

分かってるけど、私には難しい。

難し過ぎる。

彼の時は、出来たのにね。

『信じてる!』

そんな時に健くんのあの声と言葉を思い出す。

そしてあの顔も、姿も。

『だから、だから……』

あの、震えた、どんどん小さくなっていく声。

「夕里?」

「言ったっけ」

「何を?」

「健くんの家に初めて行った日、健くん、『信じてる』
そう言ってくれたの……」

「そっか。凄いじゃん。健は滅多にそんな事言わないよ?」

「分かってる……」

分かってるよ。

十分。

けど、だから今は辛い。

「大丈夫だよ。そのうち健も、愛生も。落ち着くから」

「うん……」

「だから、それまでそっとしといてあげよう?」

私は何度も頷いた。

涙を、なんとか堪えながら。

「あの二人なら、大丈夫。俺らみたいだから」

優のその言葉を合図に、堪えていた涙が一斉に溢れ出す。

「大丈夫。あの二人なら。すぐ落ち着くよ」

私は優に抱きつき、しばらく泣いた。


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