俺は今も、当たり前のように愛生の部屋に居る。
まるで、自分の部屋のように。
当たり前のようにベッドに横になり、天井を見つめてる。
「健?どうした?」
「いや……」
俺は天井を見つめたまま応えた。
「さっきの、気にしてるんじゃない?」
「さっき?」
俺は愛生を見た。
かっこ良くあぐらをかく愛生を。
なんてあぐらが似合う女の子。
「夕里に、会った時の……」
この人はなんだろう。
超能力者か何かかな。
俺の考えてること全部分かってる。
けど、全く怖くもなんともない。
幼馴染?
そんなに、かな。
「まぁ……ちょっと、な」
「すごい切り替えよね」
「もう、分かられたくなかった……」
「何を?」
「俺の、考えてる事……」
俺はベッドに座った。
愛生の、ベッドに。
「あたしだって分かるのよ?夕里ほど感受性の強い子なら分かるでしょ」
「そう…か」
いや、何か違う。
もう、本当に分かられてる。
見抜かれてるような、あの感じ。
ただの俺の気にし過ぎであることを願う。
「こんな事言って良いのか分かんないけどさ……」
「なら言うな」
「夕里、大丈夫?」
「言っちゃったよ。うーん。まぁその言葉がどういった
意味で出てきた言葉か分からないけど?
別にあたしは何とも思わないわよ?」
「そう……」
「健?どうしたの?」
「いや……」
あの人、普通なのかな。
「健」
真面目な声で俺を呼ぶ愛生。
「ん?」
「明日は、休みなよ?」
確かにあの人の中に入っていく自信はない。
そして、あの隣の女……
「大丈夫」
「まぁそう言うと思ったわ?良いから休め」
「俺無理できないから」
「今はもう限界が来たから。大丈夫。あたしも居て
あげる。嫌ならもちろん、ね?」
ねっ。
「まぁ、本当に行けそうなら良いけど……」
愛生……
「もう無理はしなくていいの。まぁ、もう無理なんて
できるような状態じゃないでしょうけど?」
俺はまた鼻で笑った。
答えに迷うとこれ。
それに笑い返す愛生。
部屋の壁にある時計を見ると7時になっていた。
もう、居るな……
「ごめんね。ありがと」
「あらっ、帰るの?」
「あの、ほらっ、んねっ?」
愛生はすぐに分かってくれた。
そして外までついてきてくれた。
「じゃあ、また」
「あのっ」
あの時と、同じ。
相手が帰る、ギリギリになって呼び止める。
そしてその相手は振り返る。
「ん?」
「気にしなくていいから」
あの時の俺より、全然落ち着いた愛生の声。
「え?」
「言って良いか分からないけど」
「なら言うな」
「お母さんのことは、気にしなくて良いから」
俺は、何かを言うことも笑うことも出来なかった。
「無理なら、無理でいいんだから……」
ここは、同じなんだ。
呼び止め、言いたいことを言い、相手が黙り、泣く。
あの時と、全く同じ流れ。
まだ愛生は泣いてないけど、そろそろって声。
「無理なら……それで…」
「分かってる」
俺はそう言い、そのまま家に向かった。
愛生を泣き止ませてから家に向かう自信はなかった。
もちろん、落ち着くまでそばに居てあげたかった。
けど、今の俺にそんなことはできない。
その時、鼻をすする音と玄関のドアが閉まる音が微かに
聞こえた。
俺は爪の跡がつくくらい、ポケットの中で手を強く握り
しめた。
いつか、愛生が泣いた時はそばに居てあげる。
そう、心に誓いながら。
俺は気付けば玄関の前に。
俺は少し緊張しながらも、そのドアを開けた。
中は驚くほど静かだった。
それと同時に安心した自分もいる。
この時間まで友達の家にいたなんて言ったらあの母親が
黙ってるわけがない。
「健?」
「わっ!?」
俺はその声がした方に振り返った。
「ちょっ……翔……」
「大丈夫?」
誰のせいだよ。
「いきなり話し掛けんなって……」
「ハハッ」
笑ってるよ。
「まだ帰ってきてないよ?」
「あ、そう」
「遅かったね」
「あぁ、ちょっと、な」
「まぁ無事で良かった」
どこに行ってた設定だよ。
俺らはそれぞれ自分の部屋へ。
そして俺は、今日もあの写真を見る。
この、輝かしい銀杏の葉が落ちた、この写真を。
あの方が居る、あの場所を写したこの写真。
「健」
「おっ!……何」
「よく驚くね」
よく驚かせるね。
「今日どうする?」
「え?」
「もし帰ってこなかったら」
「ねっ」
まぁ、居ても大したもんは出てこねぇけど。
「麺?」
「ハハッ、じゃあ」
「どんな?」
「冷たければ」
「うーん。ラーメン冷やす?」
「バカか」
普通の冷やしたらイカンよ。
「ハハッ、うどんにでもするか」
「はい。それが安全ですね」
「っすね」
翔はまた自分の部屋へ。
すぐ隣、なんだけど。
俺はもう一度あの写真を眺める。
『離れたくない』
まだこの写真を撮った時期じゃないのに、愛生の声が
聞こえる。
さっきの、愛生の声。
俺はその写真を戻し、ベッドに飛び込んだ。
「あぁっ」
やっぱり自分のベッドが一番だな。
この時が、俺の幸せな時間。
誰も来ない、一人のこの場所。
いい感じに薄暗くて。
もう最高。
「一人かぁ」
その時、俺にそっくりな声が。
「健くーん?」
「ちょっお前、塩かけんぞ」
「怖い怖い」
どっちがだよ。
「んでそんな静かに入って来るかな」
「嫌?」
「とっても」
「案外ビビりだよね」
翔には何回驚かされたか。
そして何回やられても慣れない俺。
「わっ」
「ハハハッ」
笑われちゃったよ。
翔を笑わせたのは、愛生からのメールを受信した
俺の携帯。
『おつかれ。
無駄に気にしなくていいからね』
無駄、なのかな。
『何を』
『夕里も、お母さんも』
「はぁ…」
「健?」
「えっ?」
「大丈夫?」
「あ、おぉ」
『別に気にしてない』
『ならいいけど』
『気にすんな』
『そっちこそ。じゃあ、またっ』
『また』
「はぁ」
「そうため息吐くなって」
「はあ」
「なんとなく違う」
「特技」
「意味ないけど」
確かに。
「今日、か……」
「部屋に居ればいいじゃん。俺がどうにかしてあげる」
どうにか。
「しかもほんとに今日帰ってくるかも分かんないし」
だいたい言ってた日に帰ってくることはないうちの母親。
「まぁ…な」
午前1時。
結局母親は帰ってこなかった。
昨日俺が頑張って潰した時間は……
頑張ってもないか。
ただ、愛生と居ただけ。
「はぁ……」
今日はどうなんだろ。
大丈夫、だよな。
昨日、気付いたし。
ああしてれば誰も声は掛けない。
ほぼ、全員。
ほぼ、な。
まるで、自分の部屋のように。
当たり前のようにベッドに横になり、天井を見つめてる。
「健?どうした?」
「いや……」
俺は天井を見つめたまま応えた。
「さっきの、気にしてるんじゃない?」
「さっき?」
俺は愛生を見た。
かっこ良くあぐらをかく愛生を。
なんてあぐらが似合う女の子。
「夕里に、会った時の……」
この人はなんだろう。
超能力者か何かかな。
俺の考えてること全部分かってる。
けど、全く怖くもなんともない。
幼馴染?
そんなに、かな。
「まぁ……ちょっと、な」
「すごい切り替えよね」
「もう、分かられたくなかった……」
「何を?」
「俺の、考えてる事……」
俺はベッドに座った。
愛生の、ベッドに。
「あたしだって分かるのよ?夕里ほど感受性の強い子なら分かるでしょ」
「そう…か」
いや、何か違う。
もう、本当に分かられてる。
見抜かれてるような、あの感じ。
ただの俺の気にし過ぎであることを願う。
「こんな事言って良いのか分かんないけどさ……」
「なら言うな」
「夕里、大丈夫?」
「言っちゃったよ。うーん。まぁその言葉がどういった
意味で出てきた言葉か分からないけど?
別にあたしは何とも思わないわよ?」
「そう……」
「健?どうしたの?」
「いや……」
あの人、普通なのかな。
「健」
真面目な声で俺を呼ぶ愛生。
「ん?」
「明日は、休みなよ?」
確かにあの人の中に入っていく自信はない。
そして、あの隣の女……
「大丈夫」
「まぁそう言うと思ったわ?良いから休め」
「俺無理できないから」
「今はもう限界が来たから。大丈夫。あたしも居て
あげる。嫌ならもちろん、ね?」
ねっ。
「まぁ、本当に行けそうなら良いけど……」
愛生……
「もう無理はしなくていいの。まぁ、もう無理なんて
できるような状態じゃないでしょうけど?」
俺はまた鼻で笑った。
答えに迷うとこれ。
それに笑い返す愛生。
部屋の壁にある時計を見ると7時になっていた。
もう、居るな……
「ごめんね。ありがと」
「あらっ、帰るの?」
「あの、ほらっ、んねっ?」
愛生はすぐに分かってくれた。
そして外までついてきてくれた。
「じゃあ、また」
「あのっ」
あの時と、同じ。
相手が帰る、ギリギリになって呼び止める。
そしてその相手は振り返る。
「ん?」
「気にしなくていいから」
あの時の俺より、全然落ち着いた愛生の声。
「え?」
「言って良いか分からないけど」
「なら言うな」
「お母さんのことは、気にしなくて良いから」
俺は、何かを言うことも笑うことも出来なかった。
「無理なら、無理でいいんだから……」
ここは、同じなんだ。
呼び止め、言いたいことを言い、相手が黙り、泣く。
あの時と、全く同じ流れ。
まだ愛生は泣いてないけど、そろそろって声。
「無理なら……それで…」
「分かってる」
俺はそう言い、そのまま家に向かった。
愛生を泣き止ませてから家に向かう自信はなかった。
もちろん、落ち着くまでそばに居てあげたかった。
けど、今の俺にそんなことはできない。
その時、鼻をすする音と玄関のドアが閉まる音が微かに
聞こえた。
俺は爪の跡がつくくらい、ポケットの中で手を強く握り
しめた。
いつか、愛生が泣いた時はそばに居てあげる。
そう、心に誓いながら。
俺は気付けば玄関の前に。
俺は少し緊張しながらも、そのドアを開けた。
中は驚くほど静かだった。
それと同時に安心した自分もいる。
この時間まで友達の家にいたなんて言ったらあの母親が
黙ってるわけがない。
「健?」
「わっ!?」
俺はその声がした方に振り返った。
「ちょっ……翔……」
「大丈夫?」
誰のせいだよ。
「いきなり話し掛けんなって……」
「ハハッ」
笑ってるよ。
「まだ帰ってきてないよ?」
「あ、そう」
「遅かったね」
「あぁ、ちょっと、な」
「まぁ無事で良かった」
どこに行ってた設定だよ。
俺らはそれぞれ自分の部屋へ。
そして俺は、今日もあの写真を見る。
この、輝かしい銀杏の葉が落ちた、この写真を。
あの方が居る、あの場所を写したこの写真。
「健」
「おっ!……何」
「よく驚くね」
よく驚かせるね。
「今日どうする?」
「え?」
「もし帰ってこなかったら」
「ねっ」
まぁ、居ても大したもんは出てこねぇけど。
「麺?」
「ハハッ、じゃあ」
「どんな?」
「冷たければ」
「うーん。ラーメン冷やす?」
「バカか」
普通の冷やしたらイカンよ。
「ハハッ、うどんにでもするか」
「はい。それが安全ですね」
「っすね」
翔はまた自分の部屋へ。
すぐ隣、なんだけど。
俺はもう一度あの写真を眺める。
『離れたくない』
まだこの写真を撮った時期じゃないのに、愛生の声が
聞こえる。
さっきの、愛生の声。
俺はその写真を戻し、ベッドに飛び込んだ。
「あぁっ」
やっぱり自分のベッドが一番だな。
この時が、俺の幸せな時間。
誰も来ない、一人のこの場所。
いい感じに薄暗くて。
もう最高。
「一人かぁ」
その時、俺にそっくりな声が。
「健くーん?」
「ちょっお前、塩かけんぞ」
「怖い怖い」
どっちがだよ。
「んでそんな静かに入って来るかな」
「嫌?」
「とっても」
「案外ビビりだよね」
翔には何回驚かされたか。
そして何回やられても慣れない俺。
「わっ」
「ハハハッ」
笑われちゃったよ。
翔を笑わせたのは、愛生からのメールを受信した
俺の携帯。
『おつかれ。
無駄に気にしなくていいからね』
無駄、なのかな。
『何を』
『夕里も、お母さんも』
「はぁ…」
「健?」
「えっ?」
「大丈夫?」
「あ、おぉ」
『別に気にしてない』
『ならいいけど』
『気にすんな』
『そっちこそ。じゃあ、またっ』
『また』
「はぁ」
「そうため息吐くなって」
「はあ」
「なんとなく違う」
「特技」
「意味ないけど」
確かに。
「今日、か……」
「部屋に居ればいいじゃん。俺がどうにかしてあげる」
どうにか。
「しかもほんとに今日帰ってくるかも分かんないし」
だいたい言ってた日に帰ってくることはないうちの母親。
「まぁ…な」
午前1時。
結局母親は帰ってこなかった。
昨日俺が頑張って潰した時間は……
頑張ってもないか。
ただ、愛生と居ただけ。
「はぁ……」
今日はどうなんだろ。
大丈夫、だよな。
昨日、気付いたし。
ああしてれば誰も声は掛けない。
ほぼ、全員。
ほぼ、な。
