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Best Friend〜姿を変えた君と〜


健、こうしてここに来るとこんなに元気、というか
明るく、なるのに。

ずっとこんな感じならいいのにな。

健の、ために。

あの教室に居たとき。

こっちにも伝わってくるほど緊張してた。

何があってこんなふうに。

聞く方は楽だけど。

聞かれる方は、ね。

「理由もないのにね……」

俺の考えてることが伝わってしまったように健は
言い出した。

「ん?」

「『何があって』ってのもないのに……」

ないんだ。

余計放っとけない。

理由があるなら、それから解放してあげればいいけど。

それも難しいんだけどね。

「なんか、いつも…ごめん…」

「別に良いんだよ?」

「みんな言ってくれる。夕里、も……」

夕里か。

最近、本当に何があったのかな。

「もちろん嫌なら良いよ?」

「なに?」

「夕里と、何があったの?」

健は全く表情を変えなかった。

「これも何がってわけじゃない」

そう言った健の口元が少し緩んだ。

「そっか」

「ただ……」

そう言った健の顔が急に暗くなった。

「ただ、本当に分かりすぎてるから……」

「分かりすぎてる?」

健は頷き、続けた。

「何も…隠せないような、全部、分かられてるような……」

「大丈夫。所詮他人だから。全部わかる他人なんて
居ないよ?」

あれ、良いのかな。

こんな事。

「そう……だよな…」

「いや、ごめん」

「いやいや、全然……」

「大丈夫。あの、分かってほしいことはよく分かって
くれるから」

慌てた俺の口から出てきた、なんとも嘘くさい言葉。

「優はすごいよな…」

「そんなことないよ?」

健こそ。

一人で我慢して、抱え込んで。

「優はいつも、正しい方に連れてってくれる…」

何故かすごく恥ずかしかった。

「ハハッ、人生のナビ的な」

健は俺のふざけた言葉に真顔で頷いた。

俺の恥ずかしさはさらに高まった。

「そうだ」

俺はなるべく明るく言った。

それを聞くと健は俺を見た。

「行ったことある?」

「どこ?」

「広ーい芝生しかないところに、大っきな銀杏の木が
あるの」

「あるよ」

ないって言って欲しかった。

「そっか。今日暇?」

「うん」

「今日帰り行かない?」  

「いいよ」

そう言った健の顔と声はとても明るかった。

これが本当の、偽りの無い宮河健であってほしい。


<2016/08/02 17:03 秋の空>消しゴム
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