おためし小説投稿

登録一切不要で小説投稿!
文字サイズ変更 
Best Friend〜姿を変えた君と〜


私、なんでこんなに必死になってるんだろう。

ゆっくりでいいとか少しずつとか言って私はどこへ
行ってしまった。

本当、自分が嫌になる。

こんな人の事探って、全部知ろうとして。

全部知ることなんて出来ないのに。

特に、健くんみたいに隠したり抱え込んだりするのが
上手い人は。

分かってるはずなのに。

なのになんでこんなに必死になるの?

自分に何度問いかけても、答えなど出てこなかった。

全部知ることなんて出来ない。

そう何度も自分に言い聞かせた。

なのに、なのに私は今も愛生に聞こうとしてる。

愛生から何か情報を得ようとしている。

隣の、わざわざ隣になった、愛生から。

本当、嫌な女。

勝手に人の事調べて。

全部分かってあげたい、知っていてあげたいとかって
言い訳して。

愛生もきっと気付いてる。

だから何も教えてくれないんだろう。

私が、変な事を教えたらいけない女だと分かっている
から。

確かに危ないかもしれない。

けど、知っておきたい。

分かっておきたい。

何かがあった時、理解してあげたいから。

「ねぇ愛生、あ……」
「あのさ」

愛生は私が言い切る前に言った。

私は大人しく愛生を見た。

「健は大丈夫だから。あたし達が分かってあげられなく
ても。もう、誰にも期待なんてしてないし理解も
求めてない」

「愛生?」

「だからもう、健のことは気にしないで」

「愛生」

「ん?」

聞いてくれるんだ。

少し嬉しかった。

「私達が分かってあげなかったら健くんはどうなるの?」

「は?」

「私達以外に居るの?健くんが、信じてる人。もちろん
自分が信じられてるなんて思ってないけど」

「なら、ならもう関わらないでいてあげようよ……」

愛生の口から出てきたその言葉は、とても優しい言い方で出された。

「健くんを一人にするの?放っとくの?」

「一人に、してあげるの。ある程度落ち着くまで。
落ち着いたら自然と、仲や距離は戻っていくから……」

そんな事あるわけない。

自分達で離れて行ったら自分達でもう一回近付かないと。

「愛生は?」

「ん?」

「愛生は、本当にそれで良いと思ってるの?」

私の口から出た言葉はかなり言い方もキツかった。

「一回、そういう時間も必要なんだよ」

「けんくんは……けんくんはもう……」

「夕里?」

「健くんはもう私達を必要としてないのかな?」

「分からないけど……」

私達は下を向いた。

お互い、何も言われないように。

お互いに、何も言わないように。

そうして出てきた涙は、かなり大粒のものだった。

「宮田っ!宮本っ!」

私達を呼ぶ先生の声。

私達は先生を見た。

「宮、えっと?宮崎と……宮、河が居ない!」

もう忘れられちゃってるよ。

えっ、最後、居ないって言った?

まただ。

あの時は、愛生とだった。

その時も、私はここに居た。

教室内がまた?とざわつき出す。

「宮、えっと田!宮田はどうする?」

なんで私に聞くの。

「なにがですか」

「居場所知ってんだろ?」

「知りませんよ……」

嘘だ。

私は知ってる。

健くんが優とあの、彼の場所に行ったことくらい。

「知ってるなら行けよ……」

「ふふっ、先生は、先生は健くんの何を知ってるん
ですか?」

「んな事話してたら日が暮れちまう」

そんなに長くなるんだ。

「そんなに難しくて近い仲なら先生が行けばいいじゃないですか」

「宮田っ!」

先生が私の肩を掴み、前後に揺さぶる。

こんな沢山の生徒の前で。

「なんですか。私に今出来る事はそっとしとく事です」

「宮河言ってたぞ。お前は怖いほど俺を分かってるって」

怖がられちゃダメでしょうよ。

「それも、嬉しそうに」

先生のその言葉には愛生も驚いていた。

やっぱり愛生は何か知ってたんだね。

「えっ、ほんと!?」

「あぁ……」

えっ、敬語じゃないの?

「夕里、ごめん。ボサッとしてねぇで早く行け」

愛生が低く、かっこいい声で言った。

猫のようにつった、かっこよく大きな目で私を見て。

私はそんな愛生に頷き、教室を飛び出した。


<2016/08/02 17:41 秋の空>消しゴム
Copyright(C) おためし小説投稿 Since2013 All Rights Reserved.