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気紛れ毒虫になるまえに
- 2. 蔓延る毒虫 -

「縁、部活は?」
「え? 今行くよ?」

桐島が「じゃあ、早く来いよ」と急かすので、待ってくれてもいいじゃん、と笑いながら桐島の背中を追った。
鮫島は生徒会の仕事で今日は部活に遅れてくる。

熱を含んだ空気が体にまとわりついて、背負ったベースが重い。
もう第二音楽室からは、チューニングの音が聞こえてきて、部員が練習を始めていることがわかった。

「部活だるいなぁ。」
「ね、…疲れるよね。耳とか指とか。」

桐島の言葉に同調しつつ、内心では本音が回る。

最近自分が所属しているフォーピースバンドで、自分の立ち位置が悪い気がする。
昔から被害妄想が激しいタイプだから、正直思い過ごしかとも思う。
しかし、あからさまに自分を仲間外れにして楽しむような言動が見られたり、話に参加できない自分を見て笑うようなことはしないでほしい。
純粋に傷ついて、ベースの音が狂う。

と言っても、その態度はまちまちで、自分を入れて四人で笑いあうこともあるし、噂話や内緒ごとを自分に耳打ちしてくれることもある。

きっと、嫌われているわけではないのだ。
でも、「葛西 縁には、何をしても大丈夫」という認識を持たれ、遊ばれているのだとも思う。

最近、度々あるそんなことで、部活に行くのが憂鬱だ。

「あ、来たー」
「ゆかちゃんと臨遊んでたでしょー」
「遊んでないよ。」

数名に絡まれながら、音楽室の奥に進む。
そこにいるのは、同じフォーピースバンドに所属している3人。

「臨とデート? ゆかちゃんずるいわー!」
「ちっがうから!! 合唱コンクールの練習長引いたの。」
「D組まとまるようになったのか?」
「あんまり。今日も実行委員が怒鳴り散らしただけだったよ。」

続けざまに話しかけてくる二人。

一人目、僕の脇の下から手を伸ばし、羽織い締めにしてくる男子。
C組の、色部 優人(しきべ ゆうと)。
僕の幼馴染だ。活発で気分屋、人懐っこいが、長身できつい顔をしているために印象で損をすることが多い。まぁその辺は、持ち前の何も考えないところでカバーしているのだが。
部活に迷っていたから、一緒に軽音部来てみるか、と誘った。
楽器は未経験だったものの、天性のセンスでドラムを担当するまでになり、未だ成長のほどは底知れない。

二人目、ベースのスタンドをすでに用意してくれていた男子。
A組の、僕と同じく学級委員、関根 つかさ(せきね つかさ)。
去年気さくに話しかけてくれた男子であり、こちらも人懐っこい。
つかさは天然で、いつでもすがすがしい笑顔を携えている。
こちらも楽器初心者、1年と1ヶ月で、それなりの力をつけ、ギターを弾いている。

「本当、D組のバランスとれてるのって、多分ゆかちゃんと、古村(こむら)の学級委員二人のおかげだと思うよ? お疲れ。」
「よっちゃん…。ありがとぉ。」

最後に榎本 良樹(えのもと よしき)。
小学校1年生の時から、本当に信頼してきて、いつも一番に優先してきた友人。
入部を入学前から二人で計画して、幸運にも同じピースのバンドに所属することができるようになった。
キーボードを担当している。

今日は好スタートを切ることができたらしい。

今日は、『仲良く』部活をすることが出来そう。

<2017/04/07 11:35 翼 カラナ>消しゴム
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