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紅き焔を操る妖と夕暮れの神社
- 第八話「思」 -

今日は…
誰も山道や神社を通らず、
神社にも誰一人来ない日。
こんな日は。
思い出でも思い出しながら
過ごすとするか。
まずは…
何だろう。
あの三人の事か…?
今や俺と同じく神社に祀られている
幼馴染みの三人の妖。
三人は今頃、何してんのかな…?
日向は桜を祀る神社。
翼は風を祀る神社。
澪は氷を祀る神社だっけな。
それぞれ、桜の花弁を降らす能力。
風を操る能力。氷を操る能力を持っていて、
四人で芸術的作品の劇とかもやってたな…
…今思えば、あまり良い思い出は無いな。
意外にもカオスだったし……
後は何かあったか…?
…無いな。
どれだけ俺は人と関わって無いんだ。
まぁ、良いのか。
何かを思い出す時間にしたかったけど…
仕方ねぇ。
…………久しぶりにさ。
葬儀場行って遊ぶとするか。
俺は戸を開けて鳥居を潜り、姿を眩ませた。
この町の葬儀場は案外近く…
…あ、着いた着いた。
今日はどんな嫌な奴が居るかねぇ…
「小汚い葬儀場ね…
私には似合わない程の汚さよ。」
うわー…何言ってんだ。
『そこの貴女の方が汚いですよ』
なんて言ってやりたいよ。
「すいません、喪主様。
当葬儀場は充分に清掃致しましたが、
やはり問題がございますでしょうか…」
おぉ、結構な美形か…
やはり文句言うだろうな。
この汚い汚い言ってる奴…
「あーら、良いのよ。
すっごく綺麗で主人も喜んで
くれていると思いますわ♪」

…うわっ、いい歳して
男に媚びてるよ…
悪戯してやろうかな。
……手始めに楽しませてやろう…
「…っと。」
ドンッと美形の従業員に文句よく言う人を
受け止めさせてやった。
「喪主様、お怪我は大丈夫でしょうか?」
わぁ、キラキラスマイルの裏に[うわっ…]って
気持ち隠してるな…凄い。
「きゃぁっ…!あ、ありがとうございますぅ。」
うわぁ~…あざとい。
「そうでございますか。」
わぁ、超絶ピカピカキラキラ営業スマイルだ。
あんな貼り付けたような笑顔出来るんだ…
凄い。恐るべし最近の若者。
つーか、主人居たんだろ…?
もう浮気ですか。この女…
「っ、うう…」
わー。主人泣いちゃったよ。
主人が霊になって泣いてるよ。
「ん…大丈夫ですか?今日の葬儀の…
人ですよね。」
優しく声掛けてみた。
「っ…ぅ…ふぐぅ…」
凄いボロ泣き。
何だ新ジャンルか?
名の知らぬ主人が可愛い。
「…あ、あのー…」
「うぐぅ…ふっ…うわぁぁ…」
「あのー。」
「っ…?何…?僕が、見えるの…?」
あ、顔上げた。
「まぁ…自分、妖なもので。」
座り込む名の知らぬ主人の隣に座って、
慰めるように頭を撫でてみた。
名の知らぬ主人はまだ若く、
聞いてみれば20歳。
奥さん…つまり、あの文句吐き女も
20歳らしい。
「あやかし…?」
「そーですよ、妖。」
「も、もしかして…
紅魁神社の神様…!?」
「そうですよ~。」
「わぁ…!神様って居るんだぁ…!」
何この人。可愛い。子供並みに可愛い。
紅魁神社は俺が祀られてる神社。
父親の名字、紅魁からその名が付き
俺にその名字が引き継がれている。
「まさか、奥さんが浮気みたいな事っ…
してて、ね…僕はどうしたら…」
「反撃しちゃいましょうよ?」
「えっ、でも…僕は奥さん好きだし…」
「貴方はもう居ないんですよ…?
見破られる事もない。だから…
俺と悪戯しちゃいましょうよ…?」
…まるで、悪魔の囁きのような事だ。
「う、うん…ちょっとだけ…やる…」目元を服の袖で拭いて、
少し悪戯っぽく笑った。
…あぁ、少年だ。
人間が生まれ持って持つ好奇心は
これなんだな、と思った。
「んじゃ、行きますか。」
「うん…!」
「さて…まず怖がらせましょう。」
「どうやって…?」
「んー…こうやって、グラス割ったり。」
ガシャンッ、パリーン…と
ワイングラスの割れる音が響く。
中身の入ったワイングラスを割って見せた。
しかも、その奥さんが持っていたものを。
「きゃぁぁぁぁっ…!?」
「…ははっ、あざとい……」
…ん?今、俺は言ってない…
ってことは…!?
「そうですね…馬鹿らしい。」
同感だったから言えば、
あの主人は…少しサドスティックな笑みを
浮かべて言った。
「ねぇ…もっと、悪戯して良い?」
「ふっ…良いですよ。」
この人とは面白く葬儀を裏で潰せそうだ。
ワイングラス割った後は…
秘密暴露。変な体勢で転ばす。
男子トイレに入ったように転ばせる。
遠くから見ればイケメンの、ちょっと顔が
残念な男性にぶつからせる。
まぁ、そんなこんなで…
あの文句吐き喪主に恥を掛かせまくった。
ケラケラ笑いながら名の知らぬ死んだ主人は言う。
「あははっ…君のおかげで楽しかったよ。
色々恥を掛かせて楽しかった。」
「いえいえ、俺も楽しかったです。
最後に名前をお聞きしても…?」
「うん。ふうき…楓の樹と書いて、
楓樹。君は?」
「夕日。紅魁 夕日です。
暇になったら、うちの神社に
遊びに来ます?冥界の者に言えば、
いつでも来れますよ。」
「本当?…うん、分かった!
じゃあ、今日はこの辺でさ。
さよならしよっか!」
「そうですね~。じゃ、また今度!」
「またね~。夕日君。」
…今日は面白かったな……
葬儀にやらかした悪戯とか、
そんな事を思い出していれば
神社に着いた。
空はもう暗く、星が煌めいていた。
さて…今日は早いが寝るか。
戸を開ければ俺は直ぐに布団に入った。

<2016/10/03 22:54 漓夜月 澪>消しゴム
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