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紅き焔を操る妖と夕暮れの神社
- 第九話「居」 -

たまに思う。
…俺は存在していて良いのか?
人間の世界にも妖の世界にも。
この世の全ての世界に…
俺が行ける範囲の世界に。
俺は…居て良いのか?
……そう思う。
むしろ、今現在…考えてるわけで。
必要とされているのか、否か。
考えれば考える程に深まる謎。
…誰か、俺の存在を証明してくれよ。
なんて…人に頼り過ぎだな。
神様的存在だけどさ。
なんで。何故に俺なんだ?
俺が見送り狼だからか?
…違うよな。自分より良い人材なんて
腐る程に、星の数程…居るよな。
掃いて捨てる程にも居るんだろうな。
誰か良い人のようになりたくても
それが自分なのか解らない。
つーか…自分らしさって何だよ。
意味が解らねぇよ……
前にも思ったけどさ。
本当に前は明るかったようだな…
昔は考えてなかったし。
自分らしさ、なんて…
もっと楽天家だったろうに。
悩みも続かなかったろうに。
何故に、こうなったのだ….?
知らないけど、何故……….?
いや知らないから何故。
だから知らない。
……嗚呼、また自問自答。
やだなぁ…誰か来れば気が紛れるのに。
誰も来やしないよ。
やだなー。やだなー。
嫌って言えば良いわけじゃないけど。
解決しないけどな…
散歩に行く気力も無し。
外にも出たくねぇ…
これじゃ、引きこもりだな。
「夕日さんや…居るのかい?」
……菊さん?
「……あー、居ます。
入って良いですよ?菊さん。」
「じゃあ、お邪魔するよ。」
やはり菊さんだった。
「相変わらず、お綺麗で。」
「この老婆が綺麗だって?」
少し褒めれば、楽しげに
ケラケラ笑っていた。
あぁ…何か落ち着くな。
「ところで、どうかしたんですか?」
「あぁ、それがねぇ……」
……何か奇妙だ。
菊さんに…熱が無い。
人間独特の雰囲気の暖かさが無い。
…………まさか…
「き、菊さん…もしかして……」
「……その、まさかだよ。」
「死んだ…なんてものじゃないですよね?」
笑って誤魔化す。
「…いや、本当だよ。
死んじまったさ…
仕方ない、歳も歳だからね。」
菊さんは微笑む。
「…え……」
微笑んでくれたが、悲しみより…
驚きで何も言えなかった。
「…大丈夫かい?」
固まっている俺を見れば、
頭を撫でてきた。
…この人に触られた事、無かったな。
子供じゃないが…少し落ち着いた。
「四十九日までは、挨拶回りですかね?
それで、此処に来たんだとは思いますが。」
「…その通りさ。」
「…ですよね。」
「まぁ、大して私は驚いてもないよ。
昼寝してたら自然に…と言う訳で。」
「苦しくなかったですか…?」
「全く苦しく無かったさ。」
…良かった。
脳内が一瞬にして、その言葉で埋まった。
「葬儀も済んだし。家での騒ぎもなく
平和だよ。お金や生活も大丈夫。」
笑顔で話す相手を見れば、
此方も少し微笑み掛けた。
そうすれば、相手は微笑み返した。
「さて…私は挨拶回りの続きをしようかね。
一通り済んだら、また来るよ。」
「はい。お気をつけて…
まぁ、死んでますが。」
笑顔で言えば、また菊さんは
楽しげにケラケラ笑っていて…
戸を閉めていった。
菊さんは大切なんだな…
こんなに人間に良く思うのは初めてかも。
そんな事を思えば、灰色の雲が
空を覆っていた。
雨が降りそうだな…
たまには雨音に耳を澄ませるのも良いか。
縁側に座れば、黒猫が居た。
…彼奴か?
んなわけないけど…
[猫]繋がりで、もしかしたら
彼奴の友人かもな。
少し微笑み掛ければ寄ってきて
膝に座った。
「…意外と可愛い。」
犬好きなのになぁ…
少し自分に苦笑すれば、
猫は俺を不思議そうに見ていた。
ふと…空を見れば
雨雫は、ぽつりぽつりと地面を湿らせ
いつの間にか強く降りだしていた。
「お前さん、帰るか?」
何となく猫に聞いてみれば
膝の上から下りて行き、
着いていけば居間の炬燵に入った。
「猫は炬燵で丸くなる…か。」
少し笑い掛ければ
自分も入った。
九月だが、寒いな…
勢いで作って良かった。
そんな事を思いながら
眠りにつくと、目が覚めた頃には
暑くなったのか…猫は縁側で寝ていた。
空を見れば綺麗な夜空。
時刻は既に9時を回っていた。
猫をつついて起こせば、
少し礼を言うかのように俺を見て
夜の闇に紛れて走り去って行った。

<2016/10/05 02:27 漓夜月 澪>消しゴム
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