「んー…暇だな。」
居間に気だるげに座れば、
俺はそう呟いた。
今日は夕日がよく見える日。
…人を輪廻に放り出す日、だ。
ゆらめく紅い焔で人を殺めれば…
焼かれた人は人々の記憶から消える。
消えれば輪廻という生命の輪に入り
また生まれ死ぬのだ。
だが、それは…誰でも良い訳ではない。
神社の前の広場があり、そこに…
自分が帰る時間に帰らずにいた者だ。
「…?」
ふと、後ろを振り返れば
誰かのすすり泣く声が聞こえた。
俺は神社の戸を開けて人の姿になり、
鳥居を潜れば広場を見回した。
……視界に入ったのは、幼い少女。
まさか、と思った。
……この子を焼きたくなかったから。
幼い子供は焼き尽くすのに抵抗がある。
俺は泣く少女の方へ行き、目線に合わせて
しゃがんだ。
「お嬢さん、どうしたのかな…?」
「っ……お家帰りたくないの……」
…嫌だ、という言葉が脳裏に横切った。
「…どうして?まだ外に居たいの…?」
俺は落ち着いて、ゆっくりと話した。
「お母さんがね……怖いの…」
「…へぇ……そっか…」
「でも、お家帰らなきゃ怒られちゃうし…
でもでも、お母さん怖いから帰りたくない…」
どうやら…少女には母親が怖いそうだ。
とりあえず、それは分かった。
「…俺、ここの神社の者なのだけど…
少し、お茶でも飲んで落ち着く?」
同い年の奴なら怪しまれて
一発蹴りを入れられたりする気がする
発言だな…と思い答えに心配すれば
少女は頷いた。
「ん…じゃあ、行こっか。」
手を差し出せば小さな手が俺の手を
掴んだ。
「どーぞ、桃の蜂蜜漬け。
俺の友達の自家製で本当絶品だから、
食べてみて?」
「う、うん…」
俺はにこやかに話せばテーブルに置いた。
そうすれば一つを爪楊枝に刺して
頬張っていた。
「美味しい…!」
食べてみれば幸せそうに笑顔を見せた。
「そういえば…見送り狼って、
知ってる?此処で祀っている妖怪なのだけど…」
「んん…知らない…」
「そっか。…聞きたい?この話。」
俺はそういえば少女は頷いた。
「昔々、あるところに…
道に迷っていた人が居ました。」
物語口調で言えば、少女は目を輝かせた。
「その道に迷っていた人を心配に思ったのか、
後ろに居たのは狼。
狼は追いかけてきたのでした。
右へ行けば左へ行きと、さまよい、
振り向けば狼が着いてきていました。
そして前を振り向けば自分の目的地である里。
なんと、狼が道を示してくれたのです。
道に迷っていた人は驚き、引き下がりました。
そして、狼にお礼を言いました。
何かお詫びしたいと言えば、
狼は人間の姿になり…
大した代償は要らない。だが…
和菓子でもあるか?
ぼた餅だろうが何でも大丈夫。
そう言いました。そして…
和菓子を渡せば狼は、
また迷ったら助けてやる。
ただし、絶対に転ぶな。
そう言い、山の闇に溶け込んでは
いつの間にか居なくなっていました…
めでたし、めでたし。」
「そうなんだ…!」
興味を持ったのか、目をキラキラと輝かせた。
「道を正すという意味で、
人の心の道さえも変えて正す。
帰る前に…お賽銭は無くて大丈夫だから、
手を合わせて行くと良いよ。」
「うん…落ち着いたし、帰るね。ありがとう!」
にこっと明るい笑顔を俺に見せれば
神社の中から出て、鈴を鳴らして
手を合わせた。
「はいよ。気を付けてねー。」
俺は少女に手を振れば、姿を眩ませて
途中まで送った。
あの少女が食した桃には、
邪念が消えるように術の掛かったもの。
食した者の周りにも邪念を消す効果があり、
今頃…あの子の母親は気を取り直している頃
だろう。
「…今日は居ないようだな。」
少し微笑めば、
俺は神社へ歩いていった。
ふと、後ろを振り向けば…
夕日が綺麗に紅く輝いていた。
居間に気だるげに座れば、
俺はそう呟いた。
今日は夕日がよく見える日。
…人を輪廻に放り出す日、だ。
ゆらめく紅い焔で人を殺めれば…
焼かれた人は人々の記憶から消える。
消えれば輪廻という生命の輪に入り
また生まれ死ぬのだ。
だが、それは…誰でも良い訳ではない。
神社の前の広場があり、そこに…
自分が帰る時間に帰らずにいた者だ。
「…?」
ふと、後ろを振り返れば
誰かのすすり泣く声が聞こえた。
俺は神社の戸を開けて人の姿になり、
鳥居を潜れば広場を見回した。
……視界に入ったのは、幼い少女。
まさか、と思った。
……この子を焼きたくなかったから。
幼い子供は焼き尽くすのに抵抗がある。
俺は泣く少女の方へ行き、目線に合わせて
しゃがんだ。
「お嬢さん、どうしたのかな…?」
「っ……お家帰りたくないの……」
…嫌だ、という言葉が脳裏に横切った。
「…どうして?まだ外に居たいの…?」
俺は落ち着いて、ゆっくりと話した。
「お母さんがね……怖いの…」
「…へぇ……そっか…」
「でも、お家帰らなきゃ怒られちゃうし…
でもでも、お母さん怖いから帰りたくない…」
どうやら…少女には母親が怖いそうだ。
とりあえず、それは分かった。
「…俺、ここの神社の者なのだけど…
少し、お茶でも飲んで落ち着く?」
同い年の奴なら怪しまれて
一発蹴りを入れられたりする気がする
発言だな…と思い答えに心配すれば
少女は頷いた。
「ん…じゃあ、行こっか。」
手を差し出せば小さな手が俺の手を
掴んだ。
「どーぞ、桃の蜂蜜漬け。
俺の友達の自家製で本当絶品だから、
食べてみて?」
「う、うん…」
俺はにこやかに話せばテーブルに置いた。
そうすれば一つを爪楊枝に刺して
頬張っていた。
「美味しい…!」
食べてみれば幸せそうに笑顔を見せた。
「そういえば…見送り狼って、
知ってる?此処で祀っている妖怪なのだけど…」
「んん…知らない…」
「そっか。…聞きたい?この話。」
俺はそういえば少女は頷いた。
「昔々、あるところに…
道に迷っていた人が居ました。」
物語口調で言えば、少女は目を輝かせた。
「その道に迷っていた人を心配に思ったのか、
後ろに居たのは狼。
狼は追いかけてきたのでした。
右へ行けば左へ行きと、さまよい、
振り向けば狼が着いてきていました。
そして前を振り向けば自分の目的地である里。
なんと、狼が道を示してくれたのです。
道に迷っていた人は驚き、引き下がりました。
そして、狼にお礼を言いました。
何かお詫びしたいと言えば、
狼は人間の姿になり…
大した代償は要らない。だが…
和菓子でもあるか?
ぼた餅だろうが何でも大丈夫。
そう言いました。そして…
和菓子を渡せば狼は、
また迷ったら助けてやる。
ただし、絶対に転ぶな。
そう言い、山の闇に溶け込んでは
いつの間にか居なくなっていました…
めでたし、めでたし。」
「そうなんだ…!」
興味を持ったのか、目をキラキラと輝かせた。
「道を正すという意味で、
人の心の道さえも変えて正す。
帰る前に…お賽銭は無くて大丈夫だから、
手を合わせて行くと良いよ。」
「うん…落ち着いたし、帰るね。ありがとう!」
にこっと明るい笑顔を俺に見せれば
神社の中から出て、鈴を鳴らして
手を合わせた。
「はいよ。気を付けてねー。」
俺は少女に手を振れば、姿を眩ませて
途中まで送った。
あの少女が食した桃には、
邪念が消えるように術の掛かったもの。
食した者の周りにも邪念を消す効果があり、
今頃…あの子の母親は気を取り直している頃
だろう。
「…今日は居ないようだな。」
少し微笑めば、
俺は神社へ歩いていった。
ふと、後ろを振り向けば…
夕日が綺麗に紅く輝いていた。
