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紅き焔を操る妖と夕暮れの神社
- 第三話「雨」 -

今日は雨。
霧雨のような細かい雨で、
辺りに冷たい風が通る。
「雨…か。憂鬱だなぁ…」
溜め息をつけば、空を見渡した。
「…いつ止むのかねぇ……」
また、溜め息をついた。
「今日は…読書でもするかな…
いや、本自体を持ってないか。
…何だろ、墓地も居ないよなぁ…
こんな日だと。」
数分間、考えると思い付いた。
そうだ、暇だから…
寝よう…
「いやいやいや、それは駄目だよなぁ…」
一人で思い一人で自分に…つっこむ。
駄目だなぁ、自分…
疲れたわけでもないし、意外に今日は良く寝た。
何もする事ないなぁ…
仕方ねぇ、囲碁の知り合いでも呼ぶか…
…いや、そいつの住所も知らねぇや。
本当にどうしよ…
……人…?
ふと、顔を上げれば雨宿りをしている
一人の老婆が居た。
「ん…?おぉ、菊さん。」
「おやおや…夕日さんか。」
良く見れば知っている人だった。
「どうしたんですか?
…まぁ、雨宿りでしょうけど。」
「雨宿りだけど…
久しぶりに少し寄ってみたくてねぇ。」
「そうですかー…中へどうぞ?
お茶でも出しますよ。」
「良いのかねぇ…?気を使わせて…」
「いえいえ、長い付き合いですし…」
「じゃあ、お言葉に甘えさせて。」
優しい笑みを見せれば、中へ入っていった。
「お茶と、羊羮です。
彼奴の手作りなんで、美味しいですよ。」
「おや…ありがとうね。」
菊さんは、
相変わらずの笑顔を見せた。
この人に会ってから…既に三十年。
菊さんが60歳の時に、この神社に訪れて
出会ったのだ。そして…俺が妖だという事も
恐らく知っているであろう。
俺はあの時から姿さえ変わっていないのだから。
「菊さん、最近どうです?
曾孫さんやら息子やら…」
「曾孫は今年中学生で、息子は…
普通に元気にしているよ。」
「曾孫さん、今年中学生ですか…!
あぁ、そうですか。息子さんはー…
確か六十ですっけ?」
「あぁ、そうだよ。相変わらず、普通に
暮らしているさ。」
「良かったですねー…!」
世間話に花を咲かせれば、雨音が止んだ。
「…あ、雨…上がったみたいですね。
途中まで見送りましょうか?
また話しながらでも。」
「良いのかい?じゃあ、そうさせてもらうよ。」
「じゃ、行きましょっか。」
にこっと笑顔を見せれば笑い返してくれた。
菊さんとは…意外に仲良しだ。
それ以外には母親のような存在。
なんだか心が暖まるような人。
菊さんを見送れば、神社へ歩いた。
退屈だったのも…退屈だが、退屈を楽しめば。
何故かそう思い…
…帰ってからは寝る。
まぁ、そんなこんなで
一日が終わりましたとさ。
…ってか、頭の中で何言ってんだ俺。
笑いが込み上げれば、神社へ着いていた。

<2016/09/26 22:18 漓夜月 澪>消しゴム
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