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紅き焔を操る妖と夕暮れの神社
- 第六話「空」 -

何もする事がない。
ただ、空ばかりを見上げていた。
「あ~…暇だなぁ…」
んな事言っても仕方ねぇけどさ…
空…
天空と言えば青い空だと思い浮かぶ。
だが、空だけなら。
乾いたように思えるんだよなー…
空っぽ、とか言うじゃん?
つーか…一体俺は何を考えてんだよ。
最近は、こればっかだなー。
意味の分からない事さ、考えて。
何考えてんだよ、俺。って自分に
ツッコむ。
俺、本当に馬鹿だなー…
何でだろうか…?
独りの時間も増えたし…
顔を合わす人間さえ死体だからか?
転ぶ奴は減ったけど…
最近の若者は夜遊びが多いな。
誰も18~20だし。
うちの神社は入り口に一つ。
本堂…?だっけ。何だか忘れたけど
賽銭箱とかある前に一つあって…
入り口の直ぐ外が階段だから
真っ直ぐ、中心の階段を降りれば
だんだん夕日が上に行っているように
見えて…凄い綺麗だから、
入り口の鳥居で夕日を後ろにして
動画サイトに[踊ってみた]とか…
和風曲に合わせて出す奴が多いらしい。
鳥居の中心を潜る奴が時々居るけど…
あれ、実際人間は駄目なんだっけ…?
鳥居の真ん中は神様の通り道って、
人間は言ってるようだし。
実際に妖世界でも同じだが
妖を祀る神社や寺だけは、全ての妖が
中心は通って良いのだがな。
普通に御釈迦様やらを祀る場所では
妖も中心を通るのは駄目だが。
「んー…今日も本当に暇だ……」
少し伸びをすれば、一つ欠伸をした。
……本当にする事ねぇな。
昨夜の幽霊も気になるし…
彼奴、誰だろ。
まぁ…その内、また来たら聞こう。
「今日は誰も来ない事を願い、
眠るとするかな…」
俺は縁側に寝そべれば
夏の涼しさに身を委ね、
月が綺麗に見える夜まで
眠った。
……そして、夜が来た。
神社の鳥居の上に座っていれば
同じ時刻にあの幽霊。
「っと……」
今日は、何故か下りても消えなかった。
「……ねぇ、君。この神社に何か用?」
「…!?」
少し怯えているようだが、
この前のようには消えない。
何か伝えたい事でもあるのか…?
「わ、私は…
生きている時よく来ていて…
此処の妖の神様にお礼か何かを
したくて…」
「…あぁ、そっか。
俺なんだけどね。此処の妖。
君ってさ…?もしかして
生きている時。虐めに合ってたよね。」
今思えば、この幽霊は……
無視されていて神社にお参りに
よく来ていた子だ。
「…?あぁ、はい…
そう、でしたか…!」
「……俺の事さ。
覚えてない?
この前の事と今を合わせて
二回だけど…
君、一度俺に殺されるところだったよ?
そう言ったら三回になるのだけども。」
「…え?……あぁ…そうでしたね…」
まぁ、そりゃ驚くよな。
知らないふりしたいよな。
「…で、一つ良いか?
君が死んでしまった訳だから…
まぁ、色々理由があるのだろうけど。
死者は償う立場では無いと思うのだけど…」
「そうなのですか…?」
「うん。つまり…君には
罪も無ければ俺に礼もしなくて
良いからな?」
「…えっと、それは何故です?」
「俺は……何万人とも言える人間の
死体を見てきた訳だから。
死んだ者に礼はされたくないってのも
あるわけでな。逆に償うのは俺かもしれねぇ…
それは分かったか?」
…何故か無言で彼女は頷いた。
「つまり…礼をしようと思ってくれた事が
嬉しいから。だから…
…………冥界まで行って良いぞ。
死んで月日は大して経っていない
ようだしな。」
「っ、はい…
一つ宜しいでしょうか…?」
「ん…何?良いけど……」
一体、何を話すのだろうか…
予想がつかない。
「っ……す、好きです…
返事は…入りません。
伝えたかっただけですから…」
「えっ、ちょっと…
…返事は”いいえ”だけどさ…
ちゃんと断らせてくれれば良いのになぁ。」
ちょっと、と言った所で消えてしまった。
彼女なりには、言えて良かったのだろうな…
たとえ玉砕したとしても。
ふと、空を見上げれば…
死者を冥界に導くかのように
満月が美しく銀色に輝いていた。

<2016/10/02 14:57 漓夜月 澪>消しゴム
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