気付いたら私は知らない部屋のベッドの上に居た。
辺りを見渡せばそこがどこかはすぐに分かった。
制服姿の宮本さんに、部屋着姿の宮本さん。
「やだっ、ごめんなさい……」
私は少し勢い良く起き上がった。
もちろん頭クラクラ。
「あんま急激な動きすんなよ〜?」
「ごめん、なさい……帰、ならきゃ……」
「おっ、久城。おはよ」
「み、宮河、くん……」
宮河くんはニコッと笑った。
笑えるようになってくれて良かった。
やっぱり、私の変な予感は大体当たるから。
「おっ、久城さん。俺、宮崎優。よろしくねっ」
なんて可愛らしい男の子。
本当に高校生かな。
「あっ、久城…杏梨……です…」
「ハハッ、そんなに緊張しないで?」
「そんな緊張させないで?」
「愛生、相変わらず強烈。もう少し優しく言おうよ?」
「あったしゃ十分優しいだろーが」
「自分で言っちゃう時点で……」
「久城?」
宮本さんが低めの声で言う。
「あぁ、すみません……」
「ハハハッ」
なんでだろう。
この人達と居ると、楽しいかも。
「あれっ」
私は部屋の壁を見て行った。
あ、あった。
私はこの部屋で探していた物が見つかり、確認が終わると帰る準備をした。
「そっか。門限とか厳しそうだもんね」
「いえ、そんなでもないですよ。あっ、失礼します」
私はドアの方へ向かった。
「あっ……」
「おっ、久城?」
ふらつく私を支えたのは宮河くんだった。
「ごめん、ね……」
私は宮河くんから離れた。
「良いよ。無理しないで?寝た方が良いよ?」
宮崎くんが優しく言う。
「いえ、大丈夫です。失礼しました」
私はふらつきながらも階段を下りた。
四人の、心配そうな視線を背中に感じながら。
「あらっ、帰れる?」
そう私に声を掛けたのは宮本さんの、お姉さんかな。
結構顔も似てる。
「はい。お邪魔しました」
私は靴を履き、もう一度お姉さんらしき方に頭を下げた。
そして頭を上げた時、またふらつく。
「ちょちょ、良いよ?もうちょっと休んできな?」
みんななんて優しいんでしょう。
「いえ。もう、遅いですし。遅くまですみません」
「いや、ウチは全然いいんだけど……」
もう帰らないと本当に時間が。
「失礼します」
私は慌てる気持ちを隠し、玄関を出た。
そのタイミングで携帯が鳴る。
私は深呼吸してからその電話に出た。
「はい」
『杏梨?』
電話の相手は姉だった。
「杏菜さん」
『今何してるの?』
キツめの言い方でその言葉が電話から聞こえる。
「すみません……」
『謝れって言ってない。どこで何してるの?』
「はい。学校に、忘れ物を取りに。今から向かいます」
『早くしなさいよ?』
「はい」
一方的に切られる電話。
もう、慣れたはずなのに。
今日みたいに優しい人と関わると、これが嫌で。
私は携帯をバッグにしまい、宮本家の敷地から出た。
「えっ、でも……」
ここはどこ?
宮本さんの家なんて知らないし。
いや、家は今知ったけど、場所が。
「杏梨」
車のドアが閉まる音と、とても低く明らかに怒っている
ことが分かる姉の声が同時に聞こえる。
「杏菜さん……」
姉は『早く乗りなさい』と舌打ちをして言った。
そんな姉の態度に私は内心でため息ひとつ。
そんな暗めの気分で車の前に。
「失礼します」
私はその車に乗り込んだ。
なるべく揺らさぬよう、気を付けながら。
こんな車高の低い車に揺らさずに乗れって。
相当難しい事を言ううちの家族。
家族なのに。
なんでこんな敬語と気を遣わなきゃいけないのよ。
前から言葉遣いと相手に対する態度にはうるさかった。
なんでこんな家に生まれてきたのか。
何度も思った。
何度そう思っても、何一つ変わらなかったけど。
「何してたの」
姉の刺さるような言い方。
「すみません…」
「だから、謝って欲しいんじゃなくて、理由を
知りたいの」
相手への態度や言葉遣いにはうるさいくせに自分たちは
かなり強烈。
「はい。少し体調が悪くて……」
「あっそ」
それくらいの反応しか無いくせに。
「帰ったら寝とくのね」
私は初めて聞くくらい優しい姉の言葉に姉を見た。
姉はすぐにそれに気付き、少し笑った。
笑った?
笑った、よね。
「はい。ありがとうございます」
普段はどんなに調子悪くても買い物行けとか掃除しろとか言うくせに。
もう怖いわ。
こんなにいつもと違うなんて。
「杏菜さん」
呼んで返ってくるのは強烈な視線のみ。
姉妹なんてこんなもんなのかな。
「何故、私がここに居ると…?」
「学校に聞きに行ったのよ。杏梨、朝から調子良くは
なさそうだったから?」
「そうですか。ご迷惑お掛けしてすみません」
「別に良いわよ。とりあえず妹だし」
とりあえず。
普通に妹なんですけどね。
「秋ってちょうどいい季節よね」
「秋、ですか」
「暑くもなく寒くもなく。モミジなんかも綺麗よね」
モミジ、か。
銀杏じゃなくて良かった。
「そうですね」
「たまには行く?紅葉狩りでも」
「そう、ですね……」
また気、遣うのか。
「調子悪いなら話さなくていいわよ?」
なら話し掛けないでよ。
いつもより機嫌いいからいいけどさ。
何があったか知らないけど。
「杏梨?着いたわよ?」
その姉の言葉の後、彼女の舌打ちが聞こえる。
「あっ、杏菜さん。すみません」
「別に良いけど。早く降りてくれる?」
「すみません」
私はこれもなるべく揺らさず、かつ早く降りた。
急に動いたからか、かなりふらふらする。
「杏梨っ」
えっ、あの人が支えてる?
怖い怖い。
離れたいけど、離れて歩く自信はない。
「ごめんなさい……」
「チッ。良いから」
舌打ちは欠かさないお姉さん。
そんな姉が私を抱き上げた。
「嫌っ、杏、菜……」
「黙ってな?あとさんは付けろ」
「すみません…」
あとどれくらい謝れば良いのか。
私は自分の部屋のベッドに。
「まっ、せいぜい大人しくしとくのね」
「はい……ありがとうございます」
私が言うと姉は鼻で笑い、私の部屋を出た。
怖いんだけど。
姉に一体何があった。
いきなり優しくなるとか。
まぁ機嫌悪いより全然良いんだけど。
そんな家族のおかげで他人を怒らせてはいけないという
ことは誰よりもよく分かってる。
いつか、こんな家族からも解放されますように。
辺りを見渡せばそこがどこかはすぐに分かった。
制服姿の宮本さんに、部屋着姿の宮本さん。
「やだっ、ごめんなさい……」
私は少し勢い良く起き上がった。
もちろん頭クラクラ。
「あんま急激な動きすんなよ〜?」
「ごめん、なさい……帰、ならきゃ……」
「おっ、久城。おはよ」
「み、宮河、くん……」
宮河くんはニコッと笑った。
笑えるようになってくれて良かった。
やっぱり、私の変な予感は大体当たるから。
「おっ、久城さん。俺、宮崎優。よろしくねっ」
なんて可愛らしい男の子。
本当に高校生かな。
「あっ、久城…杏梨……です…」
「ハハッ、そんなに緊張しないで?」
「そんな緊張させないで?」
「愛生、相変わらず強烈。もう少し優しく言おうよ?」
「あったしゃ十分優しいだろーが」
「自分で言っちゃう時点で……」
「久城?」
宮本さんが低めの声で言う。
「あぁ、すみません……」
「ハハハッ」
なんでだろう。
この人達と居ると、楽しいかも。
「あれっ」
私は部屋の壁を見て行った。
あ、あった。
私はこの部屋で探していた物が見つかり、確認が終わると帰る準備をした。
「そっか。門限とか厳しそうだもんね」
「いえ、そんなでもないですよ。あっ、失礼します」
私はドアの方へ向かった。
「あっ……」
「おっ、久城?」
ふらつく私を支えたのは宮河くんだった。
「ごめん、ね……」
私は宮河くんから離れた。
「良いよ。無理しないで?寝た方が良いよ?」
宮崎くんが優しく言う。
「いえ、大丈夫です。失礼しました」
私はふらつきながらも階段を下りた。
四人の、心配そうな視線を背中に感じながら。
「あらっ、帰れる?」
そう私に声を掛けたのは宮本さんの、お姉さんかな。
結構顔も似てる。
「はい。お邪魔しました」
私は靴を履き、もう一度お姉さんらしき方に頭を下げた。
そして頭を上げた時、またふらつく。
「ちょちょ、良いよ?もうちょっと休んできな?」
みんななんて優しいんでしょう。
「いえ。もう、遅いですし。遅くまですみません」
「いや、ウチは全然いいんだけど……」
もう帰らないと本当に時間が。
「失礼します」
私は慌てる気持ちを隠し、玄関を出た。
そのタイミングで携帯が鳴る。
私は深呼吸してからその電話に出た。
「はい」
『杏梨?』
電話の相手は姉だった。
「杏菜さん」
『今何してるの?』
キツめの言い方でその言葉が電話から聞こえる。
「すみません……」
『謝れって言ってない。どこで何してるの?』
「はい。学校に、忘れ物を取りに。今から向かいます」
『早くしなさいよ?』
「はい」
一方的に切られる電話。
もう、慣れたはずなのに。
今日みたいに優しい人と関わると、これが嫌で。
私は携帯をバッグにしまい、宮本家の敷地から出た。
「えっ、でも……」
ここはどこ?
宮本さんの家なんて知らないし。
いや、家は今知ったけど、場所が。
「杏梨」
車のドアが閉まる音と、とても低く明らかに怒っている
ことが分かる姉の声が同時に聞こえる。
「杏菜さん……」
姉は『早く乗りなさい』と舌打ちをして言った。
そんな姉の態度に私は内心でため息ひとつ。
そんな暗めの気分で車の前に。
「失礼します」
私はその車に乗り込んだ。
なるべく揺らさぬよう、気を付けながら。
こんな車高の低い車に揺らさずに乗れって。
相当難しい事を言ううちの家族。
家族なのに。
なんでこんな敬語と気を遣わなきゃいけないのよ。
前から言葉遣いと相手に対する態度にはうるさかった。
なんでこんな家に生まれてきたのか。
何度も思った。
何度そう思っても、何一つ変わらなかったけど。
「何してたの」
姉の刺さるような言い方。
「すみません…」
「だから、謝って欲しいんじゃなくて、理由を
知りたいの」
相手への態度や言葉遣いにはうるさいくせに自分たちは
かなり強烈。
「はい。少し体調が悪くて……」
「あっそ」
それくらいの反応しか無いくせに。
「帰ったら寝とくのね」
私は初めて聞くくらい優しい姉の言葉に姉を見た。
姉はすぐにそれに気付き、少し笑った。
笑った?
笑った、よね。
「はい。ありがとうございます」
普段はどんなに調子悪くても買い物行けとか掃除しろとか言うくせに。
もう怖いわ。
こんなにいつもと違うなんて。
「杏菜さん」
呼んで返ってくるのは強烈な視線のみ。
姉妹なんてこんなもんなのかな。
「何故、私がここに居ると…?」
「学校に聞きに行ったのよ。杏梨、朝から調子良くは
なさそうだったから?」
「そうですか。ご迷惑お掛けしてすみません」
「別に良いわよ。とりあえず妹だし」
とりあえず。
普通に妹なんですけどね。
「秋ってちょうどいい季節よね」
「秋、ですか」
「暑くもなく寒くもなく。モミジなんかも綺麗よね」
モミジ、か。
銀杏じゃなくて良かった。
「そうですね」
「たまには行く?紅葉狩りでも」
「そう、ですね……」
また気、遣うのか。
「調子悪いなら話さなくていいわよ?」
なら話し掛けないでよ。
いつもより機嫌いいからいいけどさ。
何があったか知らないけど。
「杏梨?着いたわよ?」
その姉の言葉の後、彼女の舌打ちが聞こえる。
「あっ、杏菜さん。すみません」
「別に良いけど。早く降りてくれる?」
「すみません」
私はこれもなるべく揺らさず、かつ早く降りた。
急に動いたからか、かなりふらふらする。
「杏梨っ」
えっ、あの人が支えてる?
怖い怖い。
離れたいけど、離れて歩く自信はない。
「ごめんなさい……」
「チッ。良いから」
舌打ちは欠かさないお姉さん。
そんな姉が私を抱き上げた。
「嫌っ、杏、菜……」
「黙ってな?あとさんは付けろ」
「すみません…」
あとどれくらい謝れば良いのか。
私は自分の部屋のベッドに。
「まっ、せいぜい大人しくしとくのね」
「はい……ありがとうございます」
私が言うと姉は鼻で笑い、私の部屋を出た。
怖いんだけど。
姉に一体何があった。
いきなり優しくなるとか。
まぁ機嫌悪いより全然良いんだけど。
そんな家族のおかげで他人を怒らせてはいけないという
ことは誰よりもよく分かってる。
いつか、こんな家族からも解放されますように。
