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Best Friend〜姿を変えた君と〜 2


今日も久城は来た。

今も、俺と優の間の席に。

「だぁ〜りぃ〜っ」

この前の席の女子。

なんなんだろう。

なんか、どっか賢そうっていうか。

「帰りてぇ〜っ!」

そうは見えないんだけどね。

そんな事を考えていた時、目を隠される。

「愛生宮本です」

「健宮河です」

「逆にしてんだ。ウケる」

目元から愛生の手が離れて見えたのはバカにしたように
笑うあの女。

「ねぇ健くん?」

「何」

「冷た〜い。ウケるし」

入って来ないで……

俺も帰りたくなってきました。

「今日行っていい?可愛い弟くんに会いたくて」

ただ久城の事聞きたいだけだろ。

「何健くん。弟居んの?」

「そっくり!もう分かんないくらい」

何回も言われた。

何回訂正したか。

「へぇ~、かなりのイケメンじゃん」

「でも弟の方が可愛い要素強いかな」

愛生が俺の顔を覗き込みながら言う。

俺はつい目を逸らす。

「健、かっこいい要素しかないもんね」

「あたしの自慢の幼馴染」

「幼馴染なの!?」

「幼稚園から一緒だよね?」

「はいはい」

「可愛いでしょ?恥ずかしいのね」

「バーカ」

「超可愛い!ウケる!」

「笑われちゃってるから」

「弟くんも超面白そう!」

面白いかは分かんないけど良い奴ではあるかな。

性格は結構良い方だと思う。

「超優しいの!お兄ちゃんとは違ってね?」

「え〜?健優しいよ?」

どっちがだよ。

優ほど優しい人はいないだろう。

「優ちゃん喋るんだ」

「前も話したじゃん」

「覚えてない」

ならなんで優ちゃんって呼んでるんだよ。

「久城さん?大丈夫?」

「えっ、はい……」

「ほんとに大人しい子ね。おっかない女子に負けちゃうぞ?」

おっかない女子。

自分の事、かな。

「久城さん?」

「宮本さん……」

「今日は休んだら?」

「大丈夫です」

そうは見えないのは俺だけかな。

「健くんは大丈夫かな?」

「もう特に心配してないじゃん」

「無駄な心配すんなって言うのはどっちよ!」

「別にどうでも良いけど」

「結構構ってほしい子?」

「意外とねっ?」

「久城?」

俺が少し低めの声で言うと久城は楽しそうに笑った。

これもまた可愛くて。

「あっ」

「えっ?」

「来てる…」

確かに俺も苦手だけどなんであの人嫌なんだろう。

俺も凄い嫌なんだけど。

特に理由は見当たらない。

そういちいちうるさい人でもないし。

けど、何かが最高に嫌。

「久城?」

久城が冷えた右手で俺の左手を握る。

「久城さん?」

愛生が名前を呼んだ時、久城は俺の手を離した。

「えっ、久城?」

久城の両手は制服の腕へ。

いちいちどっかで見た事ある。

寒いんだよね。

分かる。

「久城?」

うわ、来た。

俺はつい目を逸らす。

今は俺より久城なのに。

愛生なら気付きそう。

「健?」

いやいや。

ここで呼んじゃダメでしょ。

あっ、そうだ。

「ちょっ久城、ごめんね?」

俺は軽い久城を抱き上げた。

「えっ?」

つい声に出るほど大人しい。

なんか、震えてるけど。

「ちょ、とりあえず行こ?」

愛生、ナイス。

俺は愛生と、腕の中の久城と保健室へ。





「あら健くん。最近は連れてくる方なのね」

宮川は嬉しそうに言った。

俺はそんな宮川に軽く頭を下げる。

こいつのせいで緊張したことも何回もあったけど、
今の俺が居るのはとりあえずこいつのおかげでも
あるからね。

「じゃ、ここに。ずっと健くんがいたとこ」

俺が軽く睨むと宮川はクスッと笑った。

俺はとりあえず久城をベッドの上に寝かせた。

「あっ、久城さん」

「ん?おっ、大丈夫?」

久城は起き上がっていた。

まだ落ち着いてないんだね。

「久城さん?大丈夫?寒くない?」

見りゃ分かんだろ。

「はぁい。そっとしといて平気だから」

「経験者だからね」

俺は少しバカにして言う宮川をもう一度軽く睨んだ。

それにも楽しそうに笑う宮川。

この人、大丈夫かな。

相手の気持ちが分からないのかも。

うん。

ちょっと危ないね。

俺はそんな事を考えながらカーテンを閉めた。

「みや……かわ…」

「久城?」

「そば…に……」

「久城さん?大丈夫だよ?健は居るから」

居るなと言われても居たいくらい。

あいつに会うからな、教室。

「じゃあ、あたしは」

そう言ってカーテンの外に出ようとした愛生の制服を掴む久城の震える手。

「久城、さん?」

「いやっ……いか…ないで……」

「久城さん?大丈夫。健が居るよ?」


「あ……はい……」

久城は残念そうに言い、愛生の制服を離した。

愛生はそのまま教室に戻ろうとする。

「愛生」

「ん?」

俺は愛生の目を見て頷いた。

普段、愛生が本当か嘘かを見抜くために見る、目を見て。

これで、伝わると思ったから。

そうしたら当たり前のように伝わった。

愛生はベッドのそばにある椅子に座った。

「ごめん……なさい…」

「大丈夫。気にしないで?ほら、授業サボれるし」

愛生の言葉に安心したように笑う久城はとても
可愛かった。

そして俺は気付いた。

久城が、さっきから自分の右腕をあまり動かさない事に。

「久城、腕何かやった?」

「そう。フワってした時に、壁にぶつけちゃって」

にしては位置が高い気がする。

って、分かってるのに聞く俺。

「ちょっと、ごめんね?」

えっ、見るの?

どうやって?

もちろん愛生は俺を見た。

「はぁい……」

俺はカーテンの外へ。

「うわっ!んにしてんだよ」

「見てたの」

「気持ちが悪いよ」

俺はそのまま近くにあった椅子に。

「健くんのこと、好きだから」

怖い怖い。

「一番好きな生徒」

「ふざっけんなよ……」

怖いし。

一番好きな生徒とか。

本気でヤバい奴。

「ちょっ、先生……」

「何?」

宮川はカーテンの中へ。

「わっ!どうしたのこれ!?」

「目眩がした時にぶつけたらしいですけど……」

にしては明らかに位置が高すぎる。

そして宮川の反応。

結構な傷でもあるんだろう。

あれっ、右腕?

本当にぶつけたのかな。

左利きとか?

「久城」

「なぁに?」

久城の可愛い、おっとりした声がカーテン越しに
聞こえる。

「家族に左利きは居るか?」

「うーんっとね、いてっ、えっとお母さんと、杏菜さん。くらいかな?」

「そっか」

「なんで?」

「あぁいや、なんでもない」

「あら健、左利きになりたいの?」

「俺左だし。いや、なんとなく」

「あっ、健左なんだ。初めて知った……」

何年一緒に居るんだよ。

まぁ、愛生はそんなもんか。

ってか愛生、気付いてるだろ。

今のうちに外出とくか。

俺は静かに保健室を出た。


<2016/08/03 18:22 秋の空>消しゴム
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