再び静まり返った俺の部屋。
どうなんだろう。
この一人の時間も好きだし、さっきみたいにみんなと
騒いでるのも楽しい。
一人でいるのと、五人でいるの。
どっちが俺には向いてるんだろう。
「良いんじゃない?みんなと居たけりゃみんなと居れば」
「まぁ、そっか……んってさぁ」
翔はハハッ、と笑った。
「なかなか気付かないんだもん。けど俺は嬉しいよ?」
「は?」
「そんなに緊張してないって事でしょ?そんな弟にまで 気ぃ遣ってちゃ身体が持たないけどね?」
確かにそれは前から思ってた。
身体が持たないは考えたことなかったけど、翔の前では
素で居ると。
そんな頃、楽しそうな若い声が聞こえる。
「来たかぁ?」
そう言って部屋を出ようとする翔。
「あぁ、翔っ」
気付けばそれを呼び止めていた。
「どした?」
「いや、明日って、何?」
「あぁ、あのお方の場所に行こうかと」
あの銀杏のとこか。
「そっか」
「うん。だから別にいつでも良いの。もしあれなら一人
でも行けるし」
「あぁ、そう」
翔は笑顔で頷き、じゃあね、と部屋に戻った。
俺は階段を駆け下り、玄関へ。
「随分早いんじゃないですか?」
「そんなことないわよ?」
「ただ楽しみ過ぎただけっ。ね?久城さん」
久城も来たんだ。
えっ?
「久城!?」
「宮河くんっ、来ちゃった」
何故?
絶対怒られるって言ってたじゃん。
「えっ、なんで?大丈夫、なの?」
「何が?」
「いや、身体……」
「もう大丈夫っ」
「あっ、そう……じゃあ、入って?」
「じゃあって何よ」
「別に?」
「ちょっと冷たいけど、優しいのよ?」
なんか矛盾してない?
「大丈夫です。十分、宮河くんのことは、分かってる
つもりです」
「そっか。幼馴染、だもんね」
「最後に会った時とは、かなり変わってるけど、宮河健のままで居てくれてます」
久城、俺がそういうの苦手なの知ってるよね。
悪い久城が出てきた。
「宮河くんっ」
「何?」
「絶対あたしたちと話す時と違うんだよなぁ」
「私、もう、本当にどこも行かない。宮河くん、私にも 必要な存在だから」
「今度行ったら普通の俺に会えないと思え」
「えっ?」
もう、こんなもんじゃ済まないだろう。
俺に、久城杏梨が居ないなんて。
「健には、久城さんが絶対必要なんだよっ」
「絶対必要。すごい大切感出てる」
「でしょ?」
「はぁい。お話は終わり。部屋行くぞ」
「んまた冷たい態度とって」
決してそうしたつもりはない。
今日の俺の部屋は忙しい。
落ち着いて、静かになって、賑やかになって、静かに
なって、また賑やかに。
こいつらの存在は凄いんだな。
そういえば俺には一つ疑問が。
「久城、どうやって来たの?」
「凄いでしょ?宮田さん、私の家が分かったの。それで
誘いに来てくれて」
帰りは愛生に知られたくないからって断ったくせに。
俺の部屋だけじゃなくて女も忙しいな。
「私の、人生の最初で最後の最高の友達!」
俺らの視線はすべて久城へ。
久城はそれに可愛らしく笑った。
「みんなの前が初めてだったの」
「初めて?」
「うん。最後まで聞いてあげようね?」
夕里、優には強烈。
「大した事じゃないですし……」
「ごめんね、続けて?」
久城はお辞儀をするように頷き、続けた。
「みんなといる時だけは、全部忘れられた」
全部、忘れる。
俺もそうだった。
「そんなに忘れたい事があるの?」
「私はそんな辛い思いしてませんよ。宮河くんと、
違ってね……」
俺?
何故、今ここで俺?
「えっ、久城さん、健と何かあったの?」
久城は優の言葉に頷き、続けた。
「私、小学校卒業の時に、海外に行く事になっちゃって。それで、やっと帰ってきたのが今なんですよ」
「そんなに長い間?」
「宮河くん、前は大変だったでしょ」
「いや、あれは久城が気にする事じゃない」
久城は首を振った。
そして暗めの声で、続けた。
「ほら、宮河くんにはもう言ったんだけど……」
あの事はもういいのに。
「私が前に海外に行った時、行く前かな。言ったの。
『いつでもメールも電話もして』って。なのに、なのに私は……」
「久城、もう良いよ。そんな前の事……」
「私は、宮河くんを裏切った……」
そんなに気にさせてるのが辛かった。
「あの頃の宮河くんには、ムカつくだろうけど、私しか
居なかった。そんな頃に私は家の都合と言って日本を
離れた。大切な、繊細な宮河くんを置いて……」
「久城……」
「その上連絡も無視してた。本当に、最低な女で……」
「久城っ」
少し大きめの声で久城の名前を呼んだ俺の声は、大きめ
なのに、震えてた。
そんな、全力で出したわけでもないのに。
「みやかわくん……」
「もう、良いよ。今の俺には、夕里も、優も愛生も、久城も居る。だから、そんな前の事気にしてんな……」
自分でも驚くほど頼りない声。
『そんな前の事気にしてんな』
そんな言葉は、全く似合わない声だった。
「宮河くん……」
久城は俺に抱きついた。
「久城?」
あれ、久々にきてる。
「あっ、いや、久城、ちょっ」
「やっぱり健、久城さん大好きじゃん」
夕里が冷やかしの声を。
「いやっ、ちが、これっ……」
「二人にしてあげよっか?」
「ふざっけんな……ちょ、久城、まだ?」
「なんでそんな緊張してんのよ」
久城はやっと離れてくれた。
「はぁ……んにしてくれてんだよ」
「何息切らしてんのよ」
「バカ……はぁ、疲れた」
「私のこと抱いたくせに」
「は!?」
また誤解を生むようなことを。
「ちがっ、久城!」
「ふふふっ、抱っこです。抱き上げてくれたんです」
「んだよぉ〜っ。期待したわぁ」
「ふふふっ、宮河くんにとって私なんて、そんなもんです……」
久城が切な気な顔で、呟くように言った。
「えっ、久城さんにとって健は?」
「居なきゃ、いけない人です。私の人生の暗闇を照らす、太陽です」
そんな事、初めて言われた。
俺も、そうだけど。
「まぁまぁ、こんな変なお話はヤメて。楽しいお話
しましょ?」
言葉が綺麗な子。
前から確かに言葉だけは綺麗だった。
あの、小学の頃も。
気は強くて、男勝りなところもあるのに、言葉だけは本当に綺麗だった。
そして、今思えば、あの頃から人にやたら気を遣う奴
だった。
どうなんだろう。
この一人の時間も好きだし、さっきみたいにみんなと
騒いでるのも楽しい。
一人でいるのと、五人でいるの。
どっちが俺には向いてるんだろう。
「良いんじゃない?みんなと居たけりゃみんなと居れば」
「まぁ、そっか……んってさぁ」
翔はハハッ、と笑った。
「なかなか気付かないんだもん。けど俺は嬉しいよ?」
「は?」
「そんなに緊張してないって事でしょ?そんな弟にまで 気ぃ遣ってちゃ身体が持たないけどね?」
確かにそれは前から思ってた。
身体が持たないは考えたことなかったけど、翔の前では
素で居ると。
そんな頃、楽しそうな若い声が聞こえる。
「来たかぁ?」
そう言って部屋を出ようとする翔。
「あぁ、翔っ」
気付けばそれを呼び止めていた。
「どした?」
「いや、明日って、何?」
「あぁ、あのお方の場所に行こうかと」
あの銀杏のとこか。
「そっか」
「うん。だから別にいつでも良いの。もしあれなら一人
でも行けるし」
「あぁ、そう」
翔は笑顔で頷き、じゃあね、と部屋に戻った。
俺は階段を駆け下り、玄関へ。
「随分早いんじゃないですか?」
「そんなことないわよ?」
「ただ楽しみ過ぎただけっ。ね?久城さん」
久城も来たんだ。
えっ?
「久城!?」
「宮河くんっ、来ちゃった」
何故?
絶対怒られるって言ってたじゃん。
「えっ、なんで?大丈夫、なの?」
「何が?」
「いや、身体……」
「もう大丈夫っ」
「あっ、そう……じゃあ、入って?」
「じゃあって何よ」
「別に?」
「ちょっと冷たいけど、優しいのよ?」
なんか矛盾してない?
「大丈夫です。十分、宮河くんのことは、分かってる
つもりです」
「そっか。幼馴染、だもんね」
「最後に会った時とは、かなり変わってるけど、宮河健のままで居てくれてます」
久城、俺がそういうの苦手なの知ってるよね。
悪い久城が出てきた。
「宮河くんっ」
「何?」
「絶対あたしたちと話す時と違うんだよなぁ」
「私、もう、本当にどこも行かない。宮河くん、私にも 必要な存在だから」
「今度行ったら普通の俺に会えないと思え」
「えっ?」
もう、こんなもんじゃ済まないだろう。
俺に、久城杏梨が居ないなんて。
「健には、久城さんが絶対必要なんだよっ」
「絶対必要。すごい大切感出てる」
「でしょ?」
「はぁい。お話は終わり。部屋行くぞ」
「んまた冷たい態度とって」
決してそうしたつもりはない。
今日の俺の部屋は忙しい。
落ち着いて、静かになって、賑やかになって、静かに
なって、また賑やかに。
こいつらの存在は凄いんだな。
そういえば俺には一つ疑問が。
「久城、どうやって来たの?」
「凄いでしょ?宮田さん、私の家が分かったの。それで
誘いに来てくれて」
帰りは愛生に知られたくないからって断ったくせに。
俺の部屋だけじゃなくて女も忙しいな。
「私の、人生の最初で最後の最高の友達!」
俺らの視線はすべて久城へ。
久城はそれに可愛らしく笑った。
「みんなの前が初めてだったの」
「初めて?」
「うん。最後まで聞いてあげようね?」
夕里、優には強烈。
「大した事じゃないですし……」
「ごめんね、続けて?」
久城はお辞儀をするように頷き、続けた。
「みんなといる時だけは、全部忘れられた」
全部、忘れる。
俺もそうだった。
「そんなに忘れたい事があるの?」
「私はそんな辛い思いしてませんよ。宮河くんと、
違ってね……」
俺?
何故、今ここで俺?
「えっ、久城さん、健と何かあったの?」
久城は優の言葉に頷き、続けた。
「私、小学校卒業の時に、海外に行く事になっちゃって。それで、やっと帰ってきたのが今なんですよ」
「そんなに長い間?」
「宮河くん、前は大変だったでしょ」
「いや、あれは久城が気にする事じゃない」
久城は首を振った。
そして暗めの声で、続けた。
「ほら、宮河くんにはもう言ったんだけど……」
あの事はもういいのに。
「私が前に海外に行った時、行く前かな。言ったの。
『いつでもメールも電話もして』って。なのに、なのに私は……」
「久城、もう良いよ。そんな前の事……」
「私は、宮河くんを裏切った……」
そんなに気にさせてるのが辛かった。
「あの頃の宮河くんには、ムカつくだろうけど、私しか
居なかった。そんな頃に私は家の都合と言って日本を
離れた。大切な、繊細な宮河くんを置いて……」
「久城……」
「その上連絡も無視してた。本当に、最低な女で……」
「久城っ」
少し大きめの声で久城の名前を呼んだ俺の声は、大きめ
なのに、震えてた。
そんな、全力で出したわけでもないのに。
「みやかわくん……」
「もう、良いよ。今の俺には、夕里も、優も愛生も、久城も居る。だから、そんな前の事気にしてんな……」
自分でも驚くほど頼りない声。
『そんな前の事気にしてんな』
そんな言葉は、全く似合わない声だった。
「宮河くん……」
久城は俺に抱きついた。
「久城?」
あれ、久々にきてる。
「あっ、いや、久城、ちょっ」
「やっぱり健、久城さん大好きじゃん」
夕里が冷やかしの声を。
「いやっ、ちが、これっ……」
「二人にしてあげよっか?」
「ふざっけんな……ちょ、久城、まだ?」
「なんでそんな緊張してんのよ」
久城はやっと離れてくれた。
「はぁ……んにしてくれてんだよ」
「何息切らしてんのよ」
「バカ……はぁ、疲れた」
「私のこと抱いたくせに」
「は!?」
また誤解を生むようなことを。
「ちがっ、久城!」
「ふふふっ、抱っこです。抱き上げてくれたんです」
「んだよぉ〜っ。期待したわぁ」
「ふふふっ、宮河くんにとって私なんて、そんなもんです……」
久城が切な気な顔で、呟くように言った。
「えっ、久城さんにとって健は?」
「居なきゃ、いけない人です。私の人生の暗闇を照らす、太陽です」
そんな事、初めて言われた。
俺も、そうだけど。
「まぁまぁ、こんな変なお話はヤメて。楽しいお話
しましょ?」
言葉が綺麗な子。
前から確かに言葉だけは綺麗だった。
あの、小学の頃も。
気は強くて、男勝りなところもあるのに、言葉だけは本当に綺麗だった。
そして、今思えば、あの頃から人にやたら気を遣う奴
だった。
