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Best Friend〜姿を変えた君と〜 2


この人が居たら、あたしは健にとって必要のない者に
なる。

この人が、あたしら以外の、大切な人。

けど、健はそんなに喜んでなかった。

何があったから聞きたいけど、久城さんに聞いたら可哀想だよね。

「愛生ちゃん……」

「久城さん?」

「ヤメてよ……私…たち……小学校の頃、一緒……だった
のに…」

「えっ?」

久城さんは微笑んだ。

その顔はとても綺麗で、可愛らしかった。

普段鏡で見るあたしの顔とは大違い。

「私たち、一緒……だった…よ…?」

そういえば敬語じゃなくなった。

それ、思い出したからかな。

そう言って久城さんはもう一度微笑んだ。

何かが、少し辛そうだけど。

「ちょっと、ごめんね?」

あたしは久城さんのおでこに手を伸ばした。

「嫌っ!」

久城さんは細く長い腕で顔を隠した。

「あっ、ごめん……」

「あっ……」

久城さんは恥ずかしそうにあたしから目を逸らした。

その姿も、可愛らしかった。

こんなに綺麗な顔してるのに。

もっと自信持てばいいのに。

本当にあたしとは大違い。

真逆。

健は、こういう人を求めてたんだね。

だから夕里の事も、少し苦手に思うほど好きだったんだ。

好き、かは分からないけど。

あたしは、ただの幼馴染。

なんとも思われてない。

良い意味でも、悪い意味でも。

「ほんと、ごめん…なさい……」

「大丈夫。気にしないで?久城さんは大丈夫?」

「は…い……」

これ、健とは違くない?

この人、何か理由がありそう。

健はなんとなくって言ってたけど、この人は、自分でも
分かり、相手も言えばすぐに分かるような理由がある気がする。

手を伸ばした時の、あの反応。

何か、ドラマなんかで見たことある気がする。

なのに、その反応をした人がどういう人っていう設定
だったかが……

それが分かれば、きっと答えに辿り着く。

健、何か知ってるかな。

でも、そんなに良い事じゃないから健の方も
もう少し落ち着いてからが良いかな。

「大丈夫?」

いつも、何回も言ってるけど、これがどういう意味かは
あたし自身も分からない。

ただ、そばに居るって事を伝えたいのかな。

あたしはあなたを放っておかない、そんな感じで。

「あの、少し……」

何か言ってくれるかも。

「なに?」

「一人……なり…たい……」

「分かった」

あたしは笑顔で頷き、静かに保健室を出た。





そしてそこにはふざけてる男子生徒が二人。

うっぜ。

「うわっ、いって……」

「お前がうっせぇからだよ」

「体罰!」

そんな会話が聞こえた。

体罰。

教育目的で肉体的苦痛を与える事。

教育、ね。

あたしはなんとなくその嫌な漢字二文字を覚えておいた。

「愛生〜っ!」

夕里がこちらに向かって走ってくる。

そしてそのままあたしに飛びついた。

「はーい。身軽ですねぇ〜っ」

「よく受け止められるよね」

「夕里軽いもん」

「ヤメなさい」

自分で言わせようとしたんだろ。

女なのにそういった女の気持ちが分からないあたし。

「はいー、教室戻りまーすよー?」

「抱っこしてって?」

抱っこ。

どれだけ自分が軽い自信あるんだよ。

まぁ、たしかにかなり軽いけど。

「しょうがないなぁ」

「絶対そう言ってくれると思った」

「そんな小っちゃい子供みたいに言われちゃな」

小さな子供……

「あっ!」

「何!?」

「あぁ、いや。気になってた事が分かった」

「驚かせないでよ」

とりあえず久城さんの体に傷はなかった。

けど、動きを制限したりするのもその内に入るって
言うし。

でも、もしそっちならあの反応は……

体の傷は治っても心の傷が治ってなかったり。

心の傷は、一生治らないから。

あたしが何を経験したわけじゃないけど。

今度、少し慣れてきたら言ってくれるかな。

それはないか。

あたしの頭の中は気付けば久城さんの事でいっぱいに
なっていた。

「健だぁ!」

「何」

「イライラしてんの?」

「別に」

健は鼻で笑ってからそう答えた。

鼻だけど、笑ってくれて良かった。

これからも笑って過ごそうね。

「健って、なんであんなにかっこいいんだろうね」

「夕里?」

「凄いかっこよくない?」

「あぁ。かなり」

闇の世界から、光のある世界に向かって進むその姿は、
何よりもかっこよかった。

あたしは夕里と健の小さくもたくましい背中を見つめていた。


<2016/08/03 10:51 秋の空>消しゴム
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