最近泣いてなかったのに。
確かにこの日を楽しみにしていた自分もいる。
けど、いざこの日が来ると、また久城が居なくなるという考えが。
この、優しく背中をさする、久城が。
「大丈夫。もうパパ達には従わないから」
お嬢様感半端ない。
「でも……久城さん…」
「大丈夫よっ。少し凄い人だからって調子に
ノッてるの。親子であるのは変わらないのにねっ」
「えっ、ご両親は何をしてる方なの?」
久城の手が止まった。
「分か、らない」
「ごめん……」
「久城、あの、もう…大丈夫だから……」
俺は泣き疲れた重い身体で中に入り、階段を上った。
「宮河くん……」
残した可愛い系、綺麗系、大人しい系の三人の同級生の
視線を感じながら。
「健?ちょっ、大丈夫?」
廊下の少し先に居る優が俺に駆け寄り、身体を支える。
「どっか行こうか」
俺は優を見た。
優はニコッと笑い、『誰も来ないとこ』と続けた。
今までこの笑顔にどれだけ癒やされたか。
俺は今朝、久城に連れて来られた所へ。
「何かあった?」
「ううん」
「久城さんと再会早々喧嘩?」
「ハハッ、んな事しないよ」
そう言った俺の声は思った以上に感情が入っていな
かった。
怖いほど。
「うっそくさく感じたのは俺だけかな?」
俺も。
「まぁ俺のことは気にしないで?」
「まぁた難しい事言い出して」
「大丈夫、だから」
俺はなんとか笑って言った。
「大丈夫じゃない時ほどそう言うんだよな」
俺は教室に逃げようとした足を止めた。
「健は、そういう人。それで今まで無理してきた」
「いや、俺は別……」
「俺で、俺で良ければ話も聞くから」
俺が言い切る前にそう言った優の顔は、とても必死そう
だった。
何かを、伝えようと。
何かを、覚えていてもらおうと。
「優?」
「ハハッ、なんかごめん……」
そう言った優の頬を涙が伝った。
俺はその優の涙を拭った。
「えっ、健……」
「フッ、可愛い顔しやがって」
「俺が女に見えてんの?」
「女にそんなこと言わねぇし」
俺は再び教室、いや屋上に向かった。
何かがあれば必ずそこに。
優も夕里も、愛生も。
分かってるはずなのに、誰も来ない。
放っとかれてるんだかそっとしておかれてるんだか。
どっちにしろ誰も来ない。
どんな理由でも良かった。
誰も、来なければ。
誰とも話さなくて良ければ。
『そうやって逃げてる。だから変わらない』
俺が中学の頃、部屋のドアの前で毎日のように母親が
言った言葉。
分かってた、分かってる。
ただ、久城が居なくなった、もう会えない事実から
逃げているだけという事は。
けど、あの頃の俺には夕里も優も居なかった。
そんな俺のそばに、唯一居てくれた人。
宮本 愛生。
彼女だけは、母親のような言葉は一切言わなかった。
その、逆の言葉ばかり言っていた。
『無理しないで』
『大丈夫』
『今はこうでいいの』
『変わるべき時が来りゃ変わる』
そんな言葉を、何度も、いくつも掛けてくれた。
あの頃、連絡が来た時も。
体調や様子を聞けと言われただろうに。
彼女は、決してそんな事は言わなかった。
そして彼女は俺にとって久城のような存在になって
いった。
性格も似ていて。
サバサバしてて、明るくて。
けど、そんな久城はもう居なかった。
この学校へ来た久城杏梨は、俺の知ってる久城杏梨では
なかった。
俺の知ってる久城杏梨は基本何も考えない、少しバカな子だった。
けど、ここに来た久城杏梨は壮絶な過去を抱えた久城杏梨だった。
確かにこの日を楽しみにしていた自分もいる。
けど、いざこの日が来ると、また久城が居なくなるという考えが。
この、優しく背中をさする、久城が。
「大丈夫。もうパパ達には従わないから」
お嬢様感半端ない。
「でも……久城さん…」
「大丈夫よっ。少し凄い人だからって調子に
ノッてるの。親子であるのは変わらないのにねっ」
「えっ、ご両親は何をしてる方なの?」
久城の手が止まった。
「分か、らない」
「ごめん……」
「久城、あの、もう…大丈夫だから……」
俺は泣き疲れた重い身体で中に入り、階段を上った。
「宮河くん……」
残した可愛い系、綺麗系、大人しい系の三人の同級生の
視線を感じながら。
「健?ちょっ、大丈夫?」
廊下の少し先に居る優が俺に駆け寄り、身体を支える。
「どっか行こうか」
俺は優を見た。
優はニコッと笑い、『誰も来ないとこ』と続けた。
今までこの笑顔にどれだけ癒やされたか。
俺は今朝、久城に連れて来られた所へ。
「何かあった?」
「ううん」
「久城さんと再会早々喧嘩?」
「ハハッ、んな事しないよ」
そう言った俺の声は思った以上に感情が入っていな
かった。
怖いほど。
「うっそくさく感じたのは俺だけかな?」
俺も。
「まぁ俺のことは気にしないで?」
「まぁた難しい事言い出して」
「大丈夫、だから」
俺はなんとか笑って言った。
「大丈夫じゃない時ほどそう言うんだよな」
俺は教室に逃げようとした足を止めた。
「健は、そういう人。それで今まで無理してきた」
「いや、俺は別……」
「俺で、俺で良ければ話も聞くから」
俺が言い切る前にそう言った優の顔は、とても必死そう
だった。
何かを、伝えようと。
何かを、覚えていてもらおうと。
「優?」
「ハハッ、なんかごめん……」
そう言った優の頬を涙が伝った。
俺はその優の涙を拭った。
「えっ、健……」
「フッ、可愛い顔しやがって」
「俺が女に見えてんの?」
「女にそんなこと言わねぇし」
俺は再び教室、いや屋上に向かった。
何かがあれば必ずそこに。
優も夕里も、愛生も。
分かってるはずなのに、誰も来ない。
放っとかれてるんだかそっとしておかれてるんだか。
どっちにしろ誰も来ない。
どんな理由でも良かった。
誰も、来なければ。
誰とも話さなくて良ければ。
『そうやって逃げてる。だから変わらない』
俺が中学の頃、部屋のドアの前で毎日のように母親が
言った言葉。
分かってた、分かってる。
ただ、久城が居なくなった、もう会えない事実から
逃げているだけという事は。
けど、あの頃の俺には夕里も優も居なかった。
そんな俺のそばに、唯一居てくれた人。
宮本 愛生。
彼女だけは、母親のような言葉は一切言わなかった。
その、逆の言葉ばかり言っていた。
『無理しないで』
『大丈夫』
『今はこうでいいの』
『変わるべき時が来りゃ変わる』
そんな言葉を、何度も、いくつも掛けてくれた。
あの頃、連絡が来た時も。
体調や様子を聞けと言われただろうに。
彼女は、決してそんな事は言わなかった。
そして彼女は俺にとって久城のような存在になって
いった。
性格も似ていて。
サバサバしてて、明るくて。
けど、そんな久城はもう居なかった。
この学校へ来た久城杏梨は、俺の知ってる久城杏梨では
なかった。
俺の知ってる久城杏梨は基本何も考えない、少しバカな子だった。
けど、ここに来た久城杏梨は壮絶な過去を抱えた久城杏梨だった。
