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Best Friend〜姿を変えた君と〜 2


この人達なら、大丈夫だよね。

宮河くんの、友達だもんね。

きっと、大丈夫。

「あっ、あのっ……」

私の声は想像以上に小さく、弱々しかった。

「久城さん?」

二人が心配そうに私を見る。

「あの……いや…えっと……」

「良いよ。言えるようになってから、ゆっくりで」

今朝、宮河くんが言ってくれた言葉。

けど、そう言われるほど緊張は高まった。

私はとりあえずその場にしゃがんだ。

「大丈夫?」

「あっ」

宮本さんの何かの動きを止めるような声。

宮田さんが私に触れようとでもしたんだろう。

けど、それを私が嫌がるから。

二人はさっき宮河くんにしていたように、私を真ん中に
してしゃがんだ。

「えっ、あの、いや……」

「大丈夫だよ。落ち着いて?」

「すみ……ません…」

言いたいのに。

二人には、知っていてもらいたいのに。

なのに、言えない。

言葉が出てこない。

何から話せば良いか、どう話し始めれば良いか。

そして最後はどう終わらせようか。

少し前に話すようになった人たちの大切な時間を無駄に
するのはどうしても嫌だった。

こうしてる今が、何よりも無駄なんだけど。

けど、言葉が出てこない。

『何でも無いです』

その言葉、さえも。

「大丈夫?保健室戻らない?」

「いやっ、あの……何、でも……」

「ごめんね?」

そう私に断るように言って宮田さんは私の背中をそっと
さすり始めた。

「大丈夫、落ち着いて。私達が居るから」

それが少し怖かった。

どんなに優しくしてくれる人も、結局は他人。

私の全てを分かってくれるわけなんてない。

なら何も言わないほうが楽、そう思ってしまう自分が
いる。

結局、自分の事は自分でどうにかしなきゃいけないん
だから。

誰かに期待なんてしてても何にも変わりはしない。

それが、私達の生きる今のこの世の中。

誰かに期待するだけ、その分後で裏切られたと、勝手に
落ち込む。

『あなたを裏切るなんてしない』

『あなたの思い通りにしてあげる』

そんな事、その人は一言も言ってないのに。

勝手に期待して、勝手に落ち込んで。

そんな生き物が、私達人間。

「さん?じょうさん?久城さん!」

「あっ、…ごめんなさい……」

「大丈夫?意識あった?」

「ヤメて……くださいよ、そんな……」

「すごい揺れてたし、目もどこ見てるか分からなかったし……」

「すみません、教室、戻りましょ……」

私は元気であることをアピールするため、少し勢い良く
立ち上がった。

そして来るのは立ち眩み。

「わっ……」

私は宮田さんに向かって倒れこんだ。

「ちょちょ……」

体が揺れてるのが分かる。

「わっ、あっ、すみ……ません…」

「良いから。ちょっとごめんね?」

宮田さんのその声と同時に、身体が浮かんだ。

「嫌っ、下ろしてっ……」

「保健室までだから。すぐ着くよ?」

なら尚更自分で歩く。

けど宮田さんはそんな私の気持ちも知らず、私を
抱き上げたまま歩き出す。

「うっ、嫌っ、ヤメてっ!」

私は力の限り宮田さんの腕の中で暴れた。

「あっ、ごめん……」

私はおろしてもらったと同時に再びしゃがんだ。

そしてまた立ち眩みが。

終わらない。

宮田さんが、優しすぎるせいで。

「ごめんね?疲れたよね。しばらくここに居ようか」

「ちょっと、良い?」

宮本さんが私の正面にしゃがみ、目を見て言う。

私はその真っ直ぐで大きな瞳から目を逸らす。

「ごめんね?」

宮本さんはそう言ってそっと私のおでこに手を当てた。

緊張が凄い。

熱があるかを確認したいんだろうけど、こんな状況じゃ
どんどん上がっていく。

下がるのかな。

「ちょっ、もう良いでしょっ」

私は必死に首を動かした。

「ごめん。とりあえず落ち着いたら保健室直行な」

私はなんとなく何も言えなかった。

その時、肩から背中の辺りが温かくなった。

私は自分の背中を確認した。

そこには、着ているには形が変なここの制服の上着が。

「寒いでしょ」

ニコッと笑って言う宮田さん。

その笑顔は、とても眩しかった。

見てて、落ち着くほど。

癒やされるほど。

「ちょっと待っててね」

そう言ってどこかへ行こうとする宮田さん。

気付いたらその宮田さんの温かい手を掴んでいた。

「久城、さん?」

「嫌っ、行かないで……」

「大丈夫。ちょっとそこで水買ってくるだけ」

宮田さんは近くにある自販機を指さした。

本当に今は授業中なのか。

そう思うほど自由な学校。

授業中に教室以外のところに居ること自体凄い。

まぁ、高校の風景なんて初めて見たから分からないけど。

2年、なのにね。

「じゃああたし行ってくるよ」

「久城さん、大丈夫?」

「あっ……はい…」

はいとも言いづらかったけど。

「じゃあ、ちょっと待っててね」

『ちょっと待っててね』

宮本さんのその言い方が、宮田さんによく似ていた。

「久城さん、前に健と何かあった?」

「えっ……」

「健が、凄い求めてたよ。久城さんのこと」

「宮河、くんが……」

宮田さんは優しく笑って頷いた。

とても、可愛らしい笑顔で。

「そんなわけない」

「久城さん?」

「私は、宮河くんを、裏切ったから」

「でも見たでしょ?健が久城さんを呼んで、泣いてるの…」

「けど、私が宮河くんを裏切ったことは変わらない」

「健と、何があったの?」

一気に緊張してきた。

私はつい宮田さんから目を逸らす。

「宮河くん、普通の、元気な子じゃなかったでしょ……」

「うん……人と関わるのが苦手っていうか、怖いって
いうか。今は結構落ち着いてきたよ?」

「ああなったの……私のせいだから……」

「えっ……」

宮本さんが戻ってきていたらしい。

「そうなんですよ。宮河くんをあんなふうにしたのは私」

「何があったの?」

「聞きましたよね。私の親、何がかは分かりませんけど、そこそこ有名で……」

宮田さんと宮本さんは『知ってるよ』と優しく言った。

私はそれを確認し、続けた。

「それで、色んな所に行くことも多くて……」

「うん」

「それで、前回行ったのが、小6の時で。帰って来たのが少し前なんですよ」

「そんな長い間……」

私は頷き、続けた。

「それで、ちゃんと連絡もしなかった。言ったんですよ?『いつでもメールも電話もして』って。それなのに電話も出ないで、メールも返さないで。最低ですよね。そりゃ
人も信じられなくなるし他人への恐怖心も湧きますよ。
その頃の私達は小6〜中1。色々不安定な頃にそんなことされて」

「返せなかったんだ。メール。電話も出れなかったん
でしょ?出なかった、返さなかったじゃなくて。
出れなかった、返せなかった、でしょ?」

私はそう優しく言ってくれた宮本さんに首を振った。

「久城さん……」

「出なかったし、返さなかった。それどころかメールは
見てもいませんし」

「なんで?」

宮田さんのその言葉自体は少しキツいけど、言い方は
とても優しかった。

「会いたく、なるから……そう簡単にも会えないのに、
会いたくなるから……宮河くんを、求めちゃうから……」

「それが嫌だったんだね。会いたいのに、会えないのが。辛いもんね。会いたいのに、会えないなんてさ」

宮田さんと宮本さんは空を見上げた。

私もつい見上げた。

「あたしらの友達、いや宝物もね。そんな感じ」

「どこか、行っちゃったんですか?」

二人は頷いた。

そして、とても悲しい言葉を続けた。

「遠い、空の彼方に」と。綺麗な声を綺麗に揃えて。

「でも、秋になれば会えるからね」

「秋、ですか」

「その人、銀杏の木が大好きだったの」

「んで、この学校の近くに大っきな銀杏の木がある場所があるんだけど」

「その人とは、そこで会って、そこで別れた」

『遠い、空の彼方に』

嘘……

「そこで…別れたって……」

「もうね、大迷惑よ……」

そう言った宮本さんの声は、凄く震えていた。

「ねっ。もう泣いてる暇なんてなかったよね」

「あたしゃ泣いたけど」

涙を堪えて必死に笑う二人を見るのが辛くて、私はまた
二人から目を逸らした。

「んなさ、出掛けられるような状態でもねぇのに……」

そう言った宮本さんの頬を、ついに大粒の涙が伝った。

「けどほら。こうしてる時も、笑ってるから。あの人は」

そう言って宮田さんは晴れ渡る空を見上げながら眩しそうに目を細めた。

「こっちゃ忘れらんねぇっつーのにな」

「思い出なんて、そんなもんだよ」

「思い出って……綺麗なのに、辛いですよね」

「ねっ。でも、その思い出と共に生きてくって」

「なっ。あたし等は決めたから。あたし等、四人は」

四人。

宮河くんも入ってることがすぐに分かった。

「宮河、宮田、宮崎、宮本」

一人知らない名前が。

「凄いでしょ。私達、みんな名字の最初が『宮』なの」

「何かで、結ばれてるのかも知れないですね」

「男子二人は漢字でフル三文字だし」

「宮河健、と?」

「あ、知らないか。席隣の」

「あっ、顔は分かるかもしれないです」

「あいつが宮崎 優。覚えてるか分かんないけど、
久城さんを保健室に連れてった奴」

その瞬間は覚えてないかな。

けど、気付いた時すごい心配そうに見ててくれた。

あの人、かな。

宮河くんじゃないからそうだよね。

「皆さん、優しい人ばかりですよね」

「あたし一番優しいから」

「そう言ってる時点で人格を疑うわ?ねぇ?」

共感、求められても。

私はただ笑うしか出来なかった。

「優しいから優しいって言ってんの。誰も言ってくれないから自分で言ってんのっ」

「本当に優しかったら周りが言ってくれるわよ?」

「まだ気付いてないの〜。あたしの優しさにぃ〜っ」

「こんな人は放っといて保健室行きましょ?」

そう言って中に入って行く宮田さん。

「放っとくなよ。これ買って来たの誰だと思ってんの?」

宮本さんが買ってきた水を見せながら言う。

「なんって恩着せがましい人。信じらんない」

「はぁ?あたしの優しさに気付かないあなた達の鈍感さの方が信じらんないわ」

宮本さんは宮田さんを追った。

けどすぐ戻って来た。

「なぁにしてんの!早く行くよっ」

そう言って私の腕を引く宮本さん。

私はこの時、全てを忘れていた。

人と関わることへの気持ちも、人に触れられることへの
気持ちも。


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