下の方が、やけに騒がしい。
ヴァイパーは、基地の上部にある個人部屋にいた。スラム街跡地付近の集合住宅と雖も、やはり防音などには気を使っている。
それでも、うるさい。それは、防音の機能を無視してしまうほどに。
まさか基地の全員が集まっているのではあるまいな。その不安を胸に、急ぎで基地の入り口付近へと足を運んだ。
いくら盗賊を匿っているとは言えど、騒いで国軍に見つかっては忍びない。いつもなら注意するところだが。
ふと、足が止まる。
周りがいっとう騒がしくなったと思えば、そこに“ソレ”はいた。
「ッヴァイ…パー…!」
「いかにも、俺がヴァイパーだ。お前はエヴァンだな?」
「ヴァイパー、コイツ“死の森”の目の前で倒れてたんだ…」
…まだ15にも満たぬ子供じゃないか。
その言葉を飲み下し、ヴァイパーは言葉を探す。それに、子供 エヴァンは縋った。
「ヴァイパー、俺、薬を、もって、きたんだ…!ッ
薬、薬だ、たくさん…薬…!」
「!あの『天』から…盗めたのか…⁈」
「いや…俺……ッ」
あまりに荒れている息を不審に思い、そっと額に手をやると、すぐに熱が伝ってきた。
…風邪をひいている。
そばにいたローカスに介抱するよう伝え、自分は立ち上がり自室に戻ろうと踵を返した。
そのときだ、耳が、雑音の中の“それ”を拾ったのは。
「リン………リ、ン…」
目を見開いて振り向くと、少年はすでに、気を失っていた。
部下がこれ見よがしに心配するのを横目に、介抱をしようとしていたローカスを引き止める。
案の定、奴は目を瞬かせて、「ボス?」と疑念を示した。
リン。その名は、きっと誰も知らないだろう。
古代、未開の地である東洋の国から、ひとつとぷりと流れてきた、第一幻獣師『リン』の名は。
「…奴に、会ったのか…」
今は褪せた歴史の1頁に刻まれた、だけである。
「…今すぐ準備をしろ」
「はっ…?」
『“麒麟狩り”を、始めよう』
口元が弧を描く。
俺は記憶の糸をなぞる。
嗚呼、リン。
忘却の彼方の防人よ。
貴様は所詮、1頁だ。
ヴァイパーは、基地の上部にある個人部屋にいた。スラム街跡地付近の集合住宅と雖も、やはり防音などには気を使っている。
それでも、うるさい。それは、防音の機能を無視してしまうほどに。
まさか基地の全員が集まっているのではあるまいな。その不安を胸に、急ぎで基地の入り口付近へと足を運んだ。
いくら盗賊を匿っているとは言えど、騒いで国軍に見つかっては忍びない。いつもなら注意するところだが。
ふと、足が止まる。
周りがいっとう騒がしくなったと思えば、そこに“ソレ”はいた。
「ッヴァイ…パー…!」
「いかにも、俺がヴァイパーだ。お前はエヴァンだな?」
「ヴァイパー、コイツ“死の森”の目の前で倒れてたんだ…」
…まだ15にも満たぬ子供じゃないか。
その言葉を飲み下し、ヴァイパーは言葉を探す。それに、子供 エヴァンは縋った。
「ヴァイパー、俺、薬を、もって、きたんだ…!ッ
薬、薬だ、たくさん…薬…!」
「!あの『天』から…盗めたのか…⁈」
「いや…俺……ッ」
あまりに荒れている息を不審に思い、そっと額に手をやると、すぐに熱が伝ってきた。
…風邪をひいている。
そばにいたローカスに介抱するよう伝え、自分は立ち上がり自室に戻ろうと踵を返した。
そのときだ、耳が、雑音の中の“それ”を拾ったのは。
「リン………リ、ン…」
目を見開いて振り向くと、少年はすでに、気を失っていた。
部下がこれ見よがしに心配するのを横目に、介抱をしようとしていたローカスを引き止める。
案の定、奴は目を瞬かせて、「ボス?」と疑念を示した。
リン。その名は、きっと誰も知らないだろう。
古代、未開の地である東洋の国から、ひとつとぷりと流れてきた、第一幻獣師『リン』の名は。
「…奴に、会ったのか…」
今は褪せた歴史の1頁に刻まれた、だけである。
「…今すぐ準備をしろ」
「はっ…?」
『“麒麟狩り”を、始めよう』
口元が弧を描く。
俺は記憶の糸をなぞる。
嗚呼、リン。
忘却の彼方の防人よ。
貴様は所詮、1頁だ。
