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幻獣師
- 13話 -

街はガヤガヤと、まるで祭りごとのように賑わっていた。
(いやまあ、祭りごとなんだけどね。)
それを彼方に確認して、グリードは目に押し付けたレンズの主、双眼鏡を傍らに置いた。
そして、相変わらず何を考えているかよく分からない、小さな少女に向けて、声をかける。


「すごい規模だよねぇ、あれ全員山の向こうにある10の同盟国の神官さまだよ…
あん中にならお前のじい様いるんじゃない?」
「うん、このおさけすごくおいしい〜〜」
「…リンさんリンさん、俺の話聞く気ないね⁇」


まるで寒冷地帯の妖精さんだぜと、傷ついた様子のないグリードは、めそめそと泣き真似を繰り広げる。

それを少し離れた所から見つめるのは、僕。彼らに依頼をした、背中から羽の生えたただの人間である。
旅装束のまま、エリックは傍の椅子に腰掛けた。ギシ、と軋む音がして、あれ、僕太ったかな、なんて、少し落ち込む。
すると、背後から少女がぬっと出た。

「っっり、リン、さん…ッ‼︎」
「リンでいいよ…」

ぼそりと、リンは僕を立ったまま見つめた。
彼女は僕より頭2個半ほど背が低いので、なかなか珍しい光景だった。
リンは、僕を見下ろしながら呟く。

「…お酒をありがとう…。
とっても、おいしかった…」
「…そ、そうかい、それはよかった…」

バクバクと唸る心臓を抑えて、エリックは目をそらす。

先日からどうも彼女らと普通に接することができない。

いや、まあそれは、僕が大量殺人の依頼を出したからで、
こうやって、本当に大人かと疑わしいほど、見目あどけない彼女らが、普通に接してくるからでもあるのだけれど。

「あっ、そうそうエリック!」
「は、はい」
「街に出てお目当のモノは見つかったの?」

敬語じゃなくてええんやで〜とニカニカしながら、グリードはそう言った。

朝っぱら、僕は、リンやグリード、そして僕の、夕食の買い出し及び酒の買い出し及び、標的の姿の確認を目的に、ここからかなり離れた城下町へ、買い出しへと出かけていた。

朝っぱらと雖もここは森。城下町へ赴くにはかなり時間がかかる。結局城下町へ着いたのは、お昼を回ってからだ。
背中の翼で飛べば良かった?馬鹿を言うな、僕は高所恐怖症なんだ。

…そして、この家に帰ろうとして足を滑らせ崖から転落。地面に落ちそうになった所で羽を伸ばして浮き、いましがた、なんとか生きて帰ってきた所だ。

もう死にたがる体に鞭打って、グリードの問いに答える。

「…いや、いなかったよ」
「ええ、明日は建国記念日でしょ?
いないの?神子(みこ)さま」

目を伏せて息を吐き、頷いた。
いくら國神といえど、ひとりは王宮に幽閉状態、ひとりは国の反乱分子。
そしてもう1人は、死の森で国の崩壊を夢見る、意気地なし。

「…どうにかなんないの…

…天子(てんし)さま」

こんな神なら、世も末だ。

<2016/08/21 17:30 わかめ>消しゴム
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