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幻獣師
- 15話 -


昔の記憶はとうにない。
それはきっと、邪魔だったからであろう。
人の記憶とは便利なもので、僕が意識をしたときには、すでに意識を手放していた。







…そうは言っても。



「…僕に繋がれる趣味はないぞ、ルドルフ」



目の前の見慣れた人物、キッと見据える。
頼りない上に位置の悪い蝋燭が、辛うじて照らし出したのは、嫌なことに、俺が世界で40番目くらいに信用している男の姿だった。


僕の視線から逃れるようにして、男はバツが悪そうに首元を掻いた。

それの名はローカス・ルドルフ。最高幹部の男である。



「言うな、俺もお楽しみタイムを抜けてきてんだよ」
「……ああ、あの娼婦か」
「ちげーけど、まあ、こっから先はアダルトゾーンだ。お子様は繋がれてろ」



繋がれてろ。そうだ、僕は今、もの暗い冷たい鉄格子の向こう側に、捕虜のようにして、5㎝ほどの枷に繋がれている。
だが原因が分からない。一体どんな理由があって、僕はこんな埃っぽくてカビ臭い牢獄にいるんだろう。
こんな事態に陥る前の記憶が一切ない。

ルドルフはよっこいしょと年を思わせるかけ声のもと、手頃な椅子に腰掛けて、ゆるりと僕を見据えた。
こころなしか、いつもの頼りなさに拍車がかかっている気がする。



「…俺は、残念で仕方ないよ、エヴァン」
「…は」



唐突な憐れみに、ただただ疑念しか湧かない。それでも、ルドルフは続けた。



「……この魔薬は、いったい誰のだ?」
「ヴァ、ヴァイパーの、だろ…?」
「ちげえんだよキッズ!!」
「っルド、」



突然、本当に、突然の吶喊だった。
穏やかに情けないルドルフの姿はどこにもなく、堰を切ったように溢れ出すのは、ーーー



ーーーああ、これ、"見たことある"。






                        メシア
「麒麟の魔薬を盗んできやがったな、裏切りもんの救世主め!!」








堰を切ったように溢れ出すのは、これは、憎悪だ。

遅くなってしまい大変申し訳ありません
<2016/09/22 12:52 わかめ>消しゴム
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