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幻獣師
- 3話 -

朝日に照らされたアンティーク調の家具たちは、とても嬉しそうに輝いて見える。
僕は、それをぼうっと眺めながら、再び布団に潜り込むのだ。


…いや、待て待て待て。

「朝⁈」
「あ、おはよう〜」
「リン⁈あれ、今、朝なのか⁈」
「そうだよ、朝だよ」

飛び起きた僕 エヴァンに、平坦な口振りで、ゆっくり答えた少女 リン。
それに僕は、絶望に絶望して、ベッドから転げ落ちた。そのまま上半身だけを頽れて、頭を抱えて思考を奔らす。


…つまり僕は、夜のうちに宝を探し出し、ボスに届けに行くつもりで眠ったというに、「ちょっと疲れた」くらいで、朝までずうっと心地よい夢の中で暮らしてたということだ。

––––自分が子供であることを、これ以上恨んだことはない。

僕は確かに、歳を数えれば両の手で足りるほどのガキだ。
しかも、あろうことか、大事な大事な宝まで落としてしまうなんて。
盗賊失格、何が“盗人エヴァン”だ。結局僕は、誰かの力が無ければ、盗みも寝床も食事も、何1つ用意は出来やしないのだ。

「ああ、これ以上の不名誉はない…
出来ることなら、僕を殴り捨ててくれ…」
「やだよめんどくさい。そんなことよりご飯食べよ」

真顔で僕の心からの願いを断り、のれんの先の台所から、2人分の朝食を運んできたリンを、僕は、机に手を叩きつけて、絶望のままに叫び散らした。

「“そんなこと”だって⁈宝が無くなったんだぞ、宝が‼︎
僕の、命と引き換えに、やっとの事で手に入れた、大切な大切な、僕の宝が‼︎‼︎」

白い湯気を立てる、これまた白い飯に、片手で割られた立派な卵と、醤油をかけ、わしゃわしゃと泡が立つほどかき混ぜる。
そんな蠱惑的な光景にも、僕はただただ腹が立っていた。
リンは、それを一気に口に流し込み、半分ほど減らしたところで、口を開いた。

「宝ならそこにあるじゃん」

…と。いつものように、平坦に。

<2016/08/08 14:50 わかめ>消しゴム
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