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幻獣師
- 5話 -

ヴァイパーは、幻獣『飛竜 ワイバーン』をその体に宿した、第8幻獣師である。

幻獣師とは、“幻獣”と呼ばれる伝説上の生き物を体に宿した特別な人間のことだ。
彼らは幻獣の記憶と能力を継いでいるという。時にその圧倒的な力を振るい、時にその膨大な知識を人々に授ける、『現世に降りた神』であるとされている。

ヴァイパー・ドランは、その8番目に生まれた“幻獣師”なのだ。

彼は今まで、このラヘイド王国に平和を誓い続けてきた。
王族の勢力争いにより、破綻していくこの国を、ずっと支えてくれた。
貧民たちを救け、盗品を全て貢献するという条件付きで、僕ら盗賊団を匿ってくれた。

その、慈悲深く優しい彼を、犯罪者、だと?

「…彼が、何をしたのか知ってるのか」
「…知ってるよ」

体が芯から怒りに震える。
知ってるよ。そう言った。リンは、ちゃんと、そう言った。

「彼が、どれだけ偉大なことを成し遂げたのかは?」
「…」
「彼が!今まで僕たちに、何をしてくれたか知ってるのか、お前は⁈‼︎」
「…」

リンは黙りこくる。僕は、小瓶2つをひっ掴んで、荷物をまとめた。
そして、座りっぱなしのリンを、上から睨む。

「…お前は、この国の民なんだろう」
「…ええ」
「…ヴァイパーに救ってもらった1人なんだろう!」
「…」
「何もしないくせに、こんな森で1人平和に暮らせるからって、言っていいことと悪いことがある‼︎‼︎」
「…」
「…お前のこと、良い奴だと思ってたのに」

黙りこくったリンに、ひとつため息を吐き、僕はリンの家を出て行った。
宝は見つけてもらったが、感謝の言葉は述べた。
家を貸してもらったのも、感謝の言葉は述べている。
もう、こんな所に居る理由はない。
居たくはない。

僕は、走って、ヴァイパーの基地へと向かった。




背後で力なく頽れたリンに、全く気づかずに。

<2016/08/08 21:21 わかめ>消しゴム
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