「…ねえ」
「…なに?」
––––––なんでこんなことになってるのか、分かる?
目の前の少年は、そう問いかけた。
彼の手には、その端麗で繊細な顔立ちには似合わない、黒く重々しい鎌が握られている。
先ほどまで伊織と対峙していた悪魔もどきは、どろりとした液体を流して、地面に伏している。
それに腰をかけて、青い眼を光らせている彼のその様は、さながら死神のようだ。
伊織はそう思いながらも、強気に返す。
「貴方が仕事を怠ったからでしょっ……ヒッ!
ぶ、武器をしまいなさい、馬鹿!無礼者!」
「どうせ死なないくせに。いいからちょっと両断させろよ、魔女の血は貴重なんだ」
「っ嫌よ、うっかり“魔水晶”に傷でも入ったらどうするの!向こう300年は本領発揮できないのよ?!」
「安心しなよ、我らが学院長さまは能無しの魔女に素晴らしい環境を与えてくれるさ。
300年も待たずに即刻あの世行きだ」
安心できないわ!と、長く美しい髪を払って、彼女 北野伊織は、目の前の少年を睨んだ。
「大体、貴方が最も優先すべきは、私のはずよ、蒼」
今度は、目の前の少年が顔を顰める番だった。
彼は梅崎蒼。端麗な顔立ちと、根元は黒、毛先は赤茶という特徴的な髪色をしている。
魔学院の、現役生最強の“魔術師”である。
魔術師というのは、魔物の掃討に適した能力を持った、人間の、とある種族のことである。
その種族は、能力ごとに、大きく、悪魔を祓える祓魔師、悪魔を封じる封魔師、悪魔を退ける退魔師の、3つに分かれている。
普通、魔術はひとつしか扱えないが、蒼のように優れた人材には、複数個の能力が宿ることもある。
その彼が、なぜ、魔物で、しかも魔女である伊織を、消すことなく、むしろ親しげに、接しているのか。
答えは簡単。
彼女は『排除すべき魔物ではない』ということだ。
「ボディガードは常に保護対象の傍に居ると、テレビが教えてくれたわ」
「暇人は黙ってるんだね。
ていうか、23時以降は外出禁止だって言ってたろ」
「だったら早く私を学院に入れなさいって話なのよ!
暇で暇で暇で暇で、うっかりそこの悪魔に力を貸してしまいそうになったわ!」
「そんなことになりかねないからまだ様子見状態なんだよ なんで分かんないだこのブス!!」
「なんですって、この童貞!」
「僕が童貞じゃないことくらい、お前が1番分かってる筈だけど?!」
「私がブスじゃないことくらい、貴方が1番分かっているでしょう!」
とてつもない剣幕で、中学生じみた会話のドッヂボール。
ボールは鉄球のように重く、血錆のついた針が無数にあることに、彼らはなぜ気づかないのか。
それは単に、彼らが投げることも忘れて、白い白線を超えて直接殴りかかっているからである。
「ていうか!!」
伊織が一息置いて、キッと蒼を睨む。
「なんで“飛鳥”まで連れ回してるのよ!!
家でぐうたらしてる梨花が危険だとか思わないわけ?!」
伊織は、蒼の持つ重々しい鎌を指差して、吶喊する。
「ぐうたらしてるなら危険はないし、あそこは悪魔には入れない。
それに、飛鳥は力こそ僕に及ばないけど、即行で祓えるから、便利だろ」
蒼はフン、と鼻を鳴らして、重々しい武器を、くるくると、まるでバトンのように軽々しく振り、悪魔に振り翳す。
それに合わせて、鎌は『声を出した』。
『悪いな、伊織。俺たちだって暇じゃない』
「てなわけで邪魔だブサイク、退け」
『あまり近いと巻き込まれるぞ』
鎌の刃に、蒼と同年代くらいであろう少年が映った。その少年は、伊織を見て、少し誇らしげに笑う。
彼の名は沢渡飛鳥。彼もまた、『魔学院』の魔術師である。
「…なに?」
––––––なんでこんなことになってるのか、分かる?
目の前の少年は、そう問いかけた。
彼の手には、その端麗で繊細な顔立ちには似合わない、黒く重々しい鎌が握られている。
先ほどまで伊織と対峙していた悪魔もどきは、どろりとした液体を流して、地面に伏している。
それに腰をかけて、青い眼を光らせている彼のその様は、さながら死神のようだ。
伊織はそう思いながらも、強気に返す。
「貴方が仕事を怠ったからでしょっ……ヒッ!
ぶ、武器をしまいなさい、馬鹿!無礼者!」
「どうせ死なないくせに。いいからちょっと両断させろよ、魔女の血は貴重なんだ」
「っ嫌よ、うっかり“魔水晶”に傷でも入ったらどうするの!向こう300年は本領発揮できないのよ?!」
「安心しなよ、我らが学院長さまは能無しの魔女に素晴らしい環境を与えてくれるさ。
300年も待たずに即刻あの世行きだ」
安心できないわ!と、長く美しい髪を払って、彼女 北野伊織は、目の前の少年を睨んだ。
「大体、貴方が最も優先すべきは、私のはずよ、蒼」
今度は、目の前の少年が顔を顰める番だった。
彼は梅崎蒼。端麗な顔立ちと、根元は黒、毛先は赤茶という特徴的な髪色をしている。
魔学院の、現役生最強の“魔術師”である。
魔術師というのは、魔物の掃討に適した能力を持った、人間の、とある種族のことである。
その種族は、能力ごとに、大きく、悪魔を祓える祓魔師、悪魔を封じる封魔師、悪魔を退ける退魔師の、3つに分かれている。
普通、魔術はひとつしか扱えないが、蒼のように優れた人材には、複数個の能力が宿ることもある。
その彼が、なぜ、魔物で、しかも魔女である伊織を、消すことなく、むしろ親しげに、接しているのか。
答えは簡単。
彼女は『排除すべき魔物ではない』ということだ。
「ボディガードは常に保護対象の傍に居ると、テレビが教えてくれたわ」
「暇人は黙ってるんだね。
ていうか、23時以降は外出禁止だって言ってたろ」
「だったら早く私を学院に入れなさいって話なのよ!
暇で暇で暇で暇で、うっかりそこの悪魔に力を貸してしまいそうになったわ!」
「そんなことになりかねないからまだ様子見状態なんだよ なんで分かんないだこのブス!!」
「なんですって、この童貞!」
「僕が童貞じゃないことくらい、お前が1番分かってる筈だけど?!」
「私がブスじゃないことくらい、貴方が1番分かっているでしょう!」
とてつもない剣幕で、中学生じみた会話のドッヂボール。
ボールは鉄球のように重く、血錆のついた針が無数にあることに、彼らはなぜ気づかないのか。
それは単に、彼らが投げることも忘れて、白い白線を超えて直接殴りかかっているからである。
「ていうか!!」
伊織が一息置いて、キッと蒼を睨む。
「なんで“飛鳥”まで連れ回してるのよ!!
家でぐうたらしてる梨花が危険だとか思わないわけ?!」
伊織は、蒼の持つ重々しい鎌を指差して、吶喊する。
「ぐうたらしてるなら危険はないし、あそこは悪魔には入れない。
それに、飛鳥は力こそ僕に及ばないけど、即行で祓えるから、便利だろ」
蒼はフン、と鼻を鳴らして、重々しい武器を、くるくると、まるでバトンのように軽々しく振り、悪魔に振り翳す。
それに合わせて、鎌は『声を出した』。
『悪いな、伊織。俺たちだって暇じゃない』
「てなわけで邪魔だブサイク、退け」
『あまり近いと巻き込まれるぞ』
鎌の刃に、蒼と同年代くらいであろう少年が映った。その少年は、伊織を見て、少し誇らしげに笑う。
彼の名は沢渡飛鳥。彼もまた、『魔学院』の魔術師である。
