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君の淡い涙を
- 第五章 -

人混みに紛れていると方向が分からなくなってしまった。まあオレは軽度の方向音痴でもあるが‥‥

ふらふらさまよっていると突然声をかけられた。
「坊主、さっきからなにほっつき歩いてる?」

オレはさっと振り向いた。

そこにいたのはは5、60歳ぐらいの老人だった。煙草をくわえ、ボサボサの髪に延びすぎた髭。目の下には隈が出来ていた。

手には札がぎゅっとにぎしめられている。

「あ、この先に干肉屋はありますか?」

「は?あるわけねえだろ坊主」

「え?あ、じゃあどこにありますか?」

「そこの肉屋と織物屋の間にある細道を通るとゴミ箱があってな、そこに塀がある。だからゴミ箱の上に登って、塀を飛び越えろ。以外とたけえぞ?飛び降りるとそこはひとんちやからさっさとでな。多分近くに酒屋がある。その向かい側だ。」

「ご親切にありがとうございました。では失礼いたします‥‥‥_______」

「まて、」
老人はまるで骨の皮だけの手で、オレの服の裾を掴んだ。

オレは久々に、こんなに裾が長い上着を着てきたのを後悔した。前も何回かあったのだ。例えばそれが木の枝に引っ掛かり、泥水にはまってしまったことがあった、等。

老人は勝ち誇ったように声を高々とあげ、言った。
「ワシはお前に情報をやったぞ。お前も分かる範囲でいいから、ワシの質問に答える“義務“がある!」

「ハイハイ。何でございましょうかね?」

あー、何でこんなにめんどくさいジジイ捕まっちまったんだぁぁぁぁぁぁ!???

老人は無遠慮に肩を組んできた。
「いい女、知らぬか?」

変態でしたね。

「ええっと‥‥」

「誰でも良い。可愛くて若いのがいいな。ブスはNGだな。あ、あと胸もじゃな!」

マジて変態野郎だ。オレが女だったら確実に捕まってた。

とりあえず適当な嘘をつくか。
「ぅうーん、や、焼き鳥屋にいたかなぁ…」

「どこの!」

「八百屋辺りに‥‥」
さっきの老婆を思い出す。

「おお、ありがとう」

老人は嬉しそうに目を輝かせながら続けた。

「困ったときはなんでも頼ってくれ」

頼ったら、またこんなことになるだろ。

そんなことをブツブツ心の中で呟いていたら、いつのまにか老人は消えていた。




<2016/08/24 11:45 栗原小雪>消しゴム
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