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忘れないで


「坂城っ」

私はハンカチからその声の聞こえた廊下の方へ視線を
移した。

「本当に、大丈夫なのか?まだ、居た方が……」

「落ち着いたから戻れって、言われちゃいました」

初めて聞くような坂城くんの可愛らしい声。

しかも、少し笑ってるっぽい。

自然かは、分からないけど。

「まぁ、言いそうだけどな」

「ですよね」

「俺らが言ったところで、何も変わらないんだろうけど、
本当に大丈夫ですよって言いたくなるよな」

「その気持ちだけで十分です。では」

そんな会話を終え、教室に入って来た坂城くんは、
いつもの表情の無い顔だった。

「あの、どこか、行ってたの?」

「別に」

うわ〜、変わったわ〜。

そんな事を考えている私の隣の席に着いた坂城くんの
手には、携帯が握られていた。

それを眺めるように見つめる坂城くんの目は、とても
悲し気なものだった。

そしてため息を吐き、携帯をブレザーのポケットに入れ、
再び教室を出る坂城くん。

「う〜ん。何なんだろうね。あの人」

「私も最近、放っとけないって、思えてきた」

なら放っとくなよ、という、かっこいい香の声が飛んで
きた。

私は香と目を合わせて頷いた。

ここから始まる、私達が坂城くんに出来る事を探す旅。

とんでもなく長い旅になる、私はそんな気がしていた。

きっと、香も。

私達は、考える事が同じだから。


<2016/08/20 13:53 秋の空>消しゴム
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