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忘れないで


「誰だろうね?」

「結構綺麗な人じゃなかった?」

いや、絶対ここからじゃ見えないし。

「手、振ってくれた?」

「うん、知ってるよ?」

そっか。

もう眠くて頭が働かない。

もう十分体力は使ったはずなのに。

香が病院行ってみようって。

それで私達はこの場所に。

坂城くんがこんな所に居る訳ないでしょうよ。


暫く私達はその場に居た。

そして中から若い女性と、高校生くらいの男の子が
出てきた。

ん?

高校生?

制服からして、同じ学校。

やっぱり、坂城くん?

「坂城っ!」

私はとりあえず坂城くんの名前を呼んでみた。

違った時の事は、考えてなかった。

「藤井?」

「誰か居るの?」

「別に」

やっぱり冷たくそう言い放ち、坂城くんはどこかへと
向かった。

その後ろ姿を見守るように見ながら一緒に出てきた若い
女性が私達の傍に。

「ごめんね。あの子、悪い子じゃないの」

「そんな気がします」

「今彼は、色々信じたくない事が一気に起こってて、
落ち着いてないの。だから何って訳じゃないんだけど、
いつか、彼の口から何かあるはずなの。その時は、
よろしくね」

私は何て返して良いか分からずにただ、はい、と答えて
しまった。

難しい事じゃなければ良いけど。

「何だか、ごめんなさいね。変な事に首突っ込んで」

「いえ」

「学校、戻りなさい?」

「はい、失礼します」

私は香のお父さんの時以上に深く頭を下げ、その場を
去った。

香もその後をついてくる。

「あの人かな?手、振ってくれたの」

「かもしれないね。やっぱり、花火大会の時に見た男の子
って、坂城くんだったのかな」

「どうなんだろうね?あの時は普通の服だったし」

服って、結構印象変わるね。

あの、ハンカチの時もそうだった。

今の坂城くんとは、全く違う感じ。

「やっぱり私も、坂城と仲良くなりたい。やっぱ、
放っとけないよ」

香のその言葉が、最高に嬉しかった。

私は隣の香を見て、笑顔で頷いた。

「これで、少しずつ話していって、何も隠さなくなった
頃に、全て教えてくれると思う」

「そうだよね。これで、坂城の負担が減るなら」

「ってか香、いつの間に坂城になったの?」

「つかの間に」

ダメだこれ。

まともに返す気無い。





私達は教室に戻った。

隣の席には、坂城くんが居る。

「坂城くん、あの女の方は?」

「母親の姉」

えっ、結構若く見えたんだけど。

母親の、姉?

そんなに?

「坂城くん、どうした?」

「何が」

「話くらいなら、私達で良ければ聞くよ?」

「大丈夫」

「そう、無理はしないで?私達は、いつまでも坂城くんの
傍に居るよ」

「うん……」

「話を聞くのも、傍に居るのも。最っ高の友達としてね」

「くっだらねぇ事言ってんじゃねぇよ…」

私はつい、坂城くんの顔を覗き込んだ。

ああ言った声が、凄く震えてたから。

「何」

「泣けば」

香、もう少し優しく言ってあげようよ。

「私達が、坂城の笑顔も、涙も。全部受け止めてあげる」

「別に一人で良いし」

「さっきの人の前では、ちゃんと泣いてる?」

それに答えはない。

私は諦めずに続けた。

「ちゃんと、助け求めてる?」

「あんたらに俺はどんな奴に見えてんの?」

「何か、過去に辛い事があった奴」

「俺は何も無く平和にここまで生きてきた。人の心配する
前に自分らの事考えろ」

「バーカ」

坂城は驚いたように私を見る。

私はそれに、笑顔を返すだけ。


彼の気も、知らないで。

<2016/08/20 19:34 秋の空>消しゴム
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