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忘れないで


今日も訳の分からない授業が気付けば始まっていた。

頬杖をつき、外を眺めたり時計を見たりしながら時間を
潰していた時。

静かに教室のドアが開いた。

「坂城。おつかれさん」

「いつもすみません…」

「気にすんな。ハハッ、良い孫だな」

坂城の周りに纏われる雰囲気が悪い方へ変わった。

いけないオーラを放ってる。

「おはよ?」

あれ、オーラの割に顔とか目は怖くない。

「フッ」

あ、しかも笑った。

鼻、だけど。

「笑った?」

「は?」

「いや……」

何も言わせたくない時はすぐそう言うんだから。

そう分かってはいるのに、なかなか慣れない私。

「坂城、藤井と仲良くなったのか?」

先生のその言葉で私に送られてきたのは困ったような
坂城の視線。

それが、かなり可愛らしかった。

「超良いっすよ?ねっ?」

「ちょい、私は?」

「何でしたっけ」

「うわっ、失礼しちゃうわね!木崎様でしょうが!」

「香はほら、様って感じじゃないし」

私達の言葉で、教室内は笑いに包まれた。

このまま、坂城とも仲良くなっていくかな。

「きさき?あっ」

「あら坂城、本気だったの?」

「別に」

恥ずかしそうに下を向き、荷物を片付ける坂城が堪らなく
可愛かった。

「はいっ、坂城の準備も終わった所で、今日の授業は
ここまでっ!」

帰って良いの〜?というふざけた声があちこちで飛び交う。

それに、そんな訳はないだろ、と冷静に返す先生。

そして教室内は残念そうな声で再び賑やかに。

「普通に通うと、学校も楽しいでしょ?」

「普通?」

「普段、冷たくしてるのには何か理由があるんでしょ?」

「別に」

出た。

口癖か何かかな。

「まぁ、良いけどさ」

私は窓の前に立ち、外を眺めた。

席から眺める外とは、また違った感じで。

「何かあったら空を見ろ……」

切な気な声で、そう言う坂城。

隣の坂城を見れば、あの時と同じような顔で空を見ていた。

何かを願っているような、何かを求めているような。

「空に、何か思い出でも?」

「バカな姉貴が言ってた」

「バカな?」

坂城は鼻で笑い、あぁ、と呟きどこかへ行っしまった。

その声は切な気なような、懐かしそうなような、不思議な
声だった。

お姉さん、良い人なんだろうね。

今はなかなか会えない所に居るのかな。

それであそこまで悲しめるって、相当 仲良いんだろうね。

私の家族は両親しか居ないから分からない。

姉と弟の関係、か。

どんな感じなんだろう。

そう言えば初めて自分の事で何か教えてくれたな。

もっといっぱい話そう。

私の事も何か教えてあげようかな。

「なぁにニヤニヤしてんのよ」

香が私の顔を覗きこむ。

「べ、別に?」

「坂城も、何があったんだろうね」

そう言って私の隣に寄りかかる香。

「何かあるんだっけ?」

「言ってたじゃん。信じたくない事が一気に起こってて
落ち着かないの、って」

そう言えば。

結構最近の事なのに忘れてた。

「まぁ、それもそのうち教えてくれるよね」

「きっとね」

私と香は、そう信じて坂城と接していくと決めた。

特に言葉は無かったけど、お互いの考えてる事なら大体
分かってるつもり。


そうだよね、香。

<2016/08/20 21:43 秋の空>消しゴム
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