遂に明日だった27日は今日という日に変わった。
そして今、私が居るのはその花火が良く見える場所。
「おっ、萌ちゃん」
「こんばんは、お疲れ様です」
私は久々に深めに頭を下げる。
先輩にもこんな深く下げない。
「ここは良く見えるんだよね」
「この私、香のお陰よ?」
香は自慢気に自分の胸の辺りに綺麗な手を当てる。
「の、お父さんのお陰ね?」
一気に自慢気な表情を消し、認めたくないようにそっぽを
向く香。
「まぁ、ただの手伝いだけどね」
「それでも、私達がここに居るのはそのお陰ですので」
私が軽く頭を下げて言うと香のお父さんは、本当に
しっかりした子だな、と笑った。
そして、最後に付け加えるように余計な一言を。
「香とは大違いだ」
「はぁ?」
私は仲の良さそうな親子を目の前に、ただ笑う事しか
出来なかった。
その時、花火の音が。
「始まった?」
「みたいだね」
大きな、輝かしい花が夜空に咲く。
そしてそれが散り、やがて姿を消す。
それから間を置かず、再び夜空に散るように咲く火の花。
私達はそれを見上げた。
すぐ隣の香は素敵な笑顔を浮かべていた。
そしてその隣では、どこかそれに似た笑みを浮かべる香の
お父さん。
そして1時間程経ち、花火大会は無事に終わりを迎えた。
少し寂しいような気持ちもあるけど、また来年、ここに
来れる事を信じて私達は家に向かった。
「いやぁ、綺麗だったね」
「だねぇ」
私が言って少ししてから、辺りを見渡し、ため息を吐く香。
「何?」
「ゆか……」
「はいはい、すみませんね」
そう。
今日、香は浴衣で来たかったらしい。
けど私がそれを認めず、私服で来た。
「香だけ着て来れば良かったじゃん」
「それじゃ嫌なのよ。私は萌と着て来たかったのっ!」
何か、可愛いところもあるんだね。
普段何にも興味無いような子だから。
何故かそんな姿を見ると安心した。
「でもさ?」
「何さ」
「浴衣で自転車を漕ぐ自信、ありました?」
「全くありませんでしたけど?」
威張っちゃったよ。
私はそれに苦笑した。
「お父さんに送ってもらえば良かったのに。来る時も」
「私は、萌と居たかったの」
「私そんなに男の子っぽい?」
「バカじゃねぇの?」
いや、香の方が男の子っぽい。
たまにこういう所出すんだよね。
そのギャップがまたかっこいいんだけど。
「ちょっ、香!」
「わっ、何?」
私が呼ぶと、前に飛んで行ってしまいそうな勢いで止まる
香。
「何よ!」
「逆ギレですか?道、こっち。曲がらないと」
香はまた ため息を吐き、私の方へと戻って来た。
そんなにため息吐いたら幸せ無くなっちゃうよ。
「結構道ダメだよね」
「ダメじゃないし」
私達は正しい道を進んだ。
正しいはずなのに暗い、この道を。
そんな道を、小さな薄暗い自転車のライトで照らしながら。
「そう言えば、この病院って本当に大きいよね」
何故か香はその病院の前で止まった。
「えっ、まぁ。そうだね?」
「一生お世話になる事が無い事を願うね」
そう言った香の顔と声は、とても真剣だった。
暗かったけど、辺りを微かに照らす街灯でその表情は
分かった。
「香、何かあった?」
「何もないさ?」
「そう、行こっか」
香が頷いた事を確認し、私はまたペダルを踏み込んだ。
「萌、速い!」
「ギア重くすれば良いじゃない」
「疲れるじゃない」
お互い不自然さを感じさせる丁寧な言葉。
「えっ?」
「わっ!いきなり止まらないでよ!ぶつかんぞ」
私はそれに何も答えず、ただ病院の自販機の前を見た。
香も何かを感じたようにそちらを見る。
「何かあった?」
「ううん」
私達と同じくらいの男の子。
普通の服だったし、軽く走って中に入って行ったから、
家族とか友達かな。
「ごめんね?」
「別に良いけど、何を見たの?」
私は香に笑顔で首を振り、再びペダルを踏み込み、角を
曲がった。
そして今、私が居るのはその花火が良く見える場所。
「おっ、萌ちゃん」
「こんばんは、お疲れ様です」
私は久々に深めに頭を下げる。
先輩にもこんな深く下げない。
「ここは良く見えるんだよね」
「この私、香のお陰よ?」
香は自慢気に自分の胸の辺りに綺麗な手を当てる。
「の、お父さんのお陰ね?」
一気に自慢気な表情を消し、認めたくないようにそっぽを
向く香。
「まぁ、ただの手伝いだけどね」
「それでも、私達がここに居るのはそのお陰ですので」
私が軽く頭を下げて言うと香のお父さんは、本当に
しっかりした子だな、と笑った。
そして、最後に付け加えるように余計な一言を。
「香とは大違いだ」
「はぁ?」
私は仲の良さそうな親子を目の前に、ただ笑う事しか
出来なかった。
その時、花火の音が。
「始まった?」
「みたいだね」
大きな、輝かしい花が夜空に咲く。
そしてそれが散り、やがて姿を消す。
それから間を置かず、再び夜空に散るように咲く火の花。
私達はそれを見上げた。
すぐ隣の香は素敵な笑顔を浮かべていた。
そしてその隣では、どこかそれに似た笑みを浮かべる香の
お父さん。
そして1時間程経ち、花火大会は無事に終わりを迎えた。
少し寂しいような気持ちもあるけど、また来年、ここに
来れる事を信じて私達は家に向かった。
「いやぁ、綺麗だったね」
「だねぇ」
私が言って少ししてから、辺りを見渡し、ため息を吐く香。
「何?」
「ゆか……」
「はいはい、すみませんね」
そう。
今日、香は浴衣で来たかったらしい。
けど私がそれを認めず、私服で来た。
「香だけ着て来れば良かったじゃん」
「それじゃ嫌なのよ。私は萌と着て来たかったのっ!」
何か、可愛いところもあるんだね。
普段何にも興味無いような子だから。
何故かそんな姿を見ると安心した。
「でもさ?」
「何さ」
「浴衣で自転車を漕ぐ自信、ありました?」
「全くありませんでしたけど?」
威張っちゃったよ。
私はそれに苦笑した。
「お父さんに送ってもらえば良かったのに。来る時も」
「私は、萌と居たかったの」
「私そんなに男の子っぽい?」
「バカじゃねぇの?」
いや、香の方が男の子っぽい。
たまにこういう所出すんだよね。
そのギャップがまたかっこいいんだけど。
「ちょっ、香!」
「わっ、何?」
私が呼ぶと、前に飛んで行ってしまいそうな勢いで止まる
香。
「何よ!」
「逆ギレですか?道、こっち。曲がらないと」
香はまた ため息を吐き、私の方へと戻って来た。
そんなにため息吐いたら幸せ無くなっちゃうよ。
「結構道ダメだよね」
「ダメじゃないし」
私達は正しい道を進んだ。
正しいはずなのに暗い、この道を。
そんな道を、小さな薄暗い自転車のライトで照らしながら。
「そう言えば、この病院って本当に大きいよね」
何故か香はその病院の前で止まった。
「えっ、まぁ。そうだね?」
「一生お世話になる事が無い事を願うね」
そう言った香の顔と声は、とても真剣だった。
暗かったけど、辺りを微かに照らす街灯でその表情は
分かった。
「香、何かあった?」
「何もないさ?」
「そう、行こっか」
香が頷いた事を確認し、私はまたペダルを踏み込んだ。
「萌、速い!」
「ギア重くすれば良いじゃない」
「疲れるじゃない」
お互い不自然さを感じさせる丁寧な言葉。
「えっ?」
「わっ!いきなり止まらないでよ!ぶつかんぞ」
私はそれに何も答えず、ただ病院の自販機の前を見た。
香も何かを感じたようにそちらを見る。
「何かあった?」
「ううん」
私達と同じくらいの男の子。
普通の服だったし、軽く走って中に入って行ったから、
家族とか友達かな。
「ごめんね?」
「別に良いけど、何を見たの?」
私は香に笑顔で首を振り、再びペダルを踏み込み、角を
曲がった。
