遂に昼休みがやって来た。
俺はいつものように学校を抜けだす。
いつものように、とは行かなかったけど。
「坂城っ」
藤井と木崎が俺を呼び止めた。
その、綺麗に揃った声の方へ振り向けば、二人が心配そう
な表情を浮かべてこちらを見ていた。
「藤井、木崎」
「名前で呼んでくれるようになったね。ありがとう」
そう言って俺の髪を乱す二人。
「あの、ごめん、俺、行きたいとこ、あるから……」
そう言えば二人はすぐに俺から離れた。
その二人の表情は、決して明るいものではなかったけど。
「どこ、行くの?」
「大した所じゃない」
「病院?」
「二人には関係無い」
そう、申し訳なくなる程冷たく言い、階段を下りようと した時、もう一度呼び止める二人。
「何」
「気を付けてね。ここに来るのは、後で良いんだから」
その言葉に、鳥肌が立つほど身体が震えた。
あの日、母さんが言った言葉の、ままだったから。
「きさ、き…?」
「気を付けろよ」
俺は泣く前にと、階段を駆け下りた。
けどその足は、踊り場まで下りたらすぐに止まった。
そしてさっきよりも早まるのは、涙が頬を伝う早さだけ。
その涙は頬を伝い切り、そのまま制服のブレザーに落ち、
そこを転がり、床の極一部を濡らす。
何故こんなにも泣くのかは分からない。
その時、背中に程よい重みと、優しい温かみを感じた。
「坂城、どうした?」
数段上から抱きついたのは木崎だった。
「大丈夫、何でも、ない……」
「なら、何でそんなに辛そうなの?」
誰のせいだよ。
そんな事を考えても、涙は決して止まろうとはしな
かった。
「私達に、お願いだから話して」
その言葉にだけは、頷けなかった。
木崎から出た言葉だからこそ。
信じてる、傍に居て欲しい、木崎から出た言葉だから。
きっと、藤井に言われても頷けないだろう。
「坂城っ、もう良いでしょ?もう疲れたでしょ?」
「ヤメろ…」
「坂城は、人を頼るって事を知らなすぎるのよ……」
だから、私達に全て話して、と木崎は続けた。
「俺の事は気にするな。木崎はもちろん、藤井にも関係の
無い事だ。余計な事には、関わるな」
「さかき……」
俺は制服の胸元を握る、木崎の震える手にそっと触れ、
離してもらった。
そして得られた気持ちは、決して安心や満足ではなかった。
「じゃあね」
「ちゃんと、戻って来てよ?」
「お前の中で俺はどこに行く設定になってる」
そういつものトーンで言えば、木崎は、悪いけど可愛い
とは言い難い笑顔を浮かべた。
けど、その木崎自身は、とても可愛かった。
俺の事で、そこまで泣くとは。
何だか悪い事をしているような気分にすらなった。
俺はそんな木崎を置いて、ゆっくりと階段を下りて
いった。
一人にはしたくない、あの人の元へ向かうために。
俺はいつものように学校を抜けだす。
いつものように、とは行かなかったけど。
「坂城っ」
藤井と木崎が俺を呼び止めた。
その、綺麗に揃った声の方へ振り向けば、二人が心配そう
な表情を浮かべてこちらを見ていた。
「藤井、木崎」
「名前で呼んでくれるようになったね。ありがとう」
そう言って俺の髪を乱す二人。
「あの、ごめん、俺、行きたいとこ、あるから……」
そう言えば二人はすぐに俺から離れた。
その二人の表情は、決して明るいものではなかったけど。
「どこ、行くの?」
「大した所じゃない」
「病院?」
「二人には関係無い」
そう、申し訳なくなる程冷たく言い、階段を下りようと した時、もう一度呼び止める二人。
「何」
「気を付けてね。ここに来るのは、後で良いんだから」
その言葉に、鳥肌が立つほど身体が震えた。
あの日、母さんが言った言葉の、ままだったから。
「きさ、き…?」
「気を付けろよ」
俺は泣く前にと、階段を駆け下りた。
けどその足は、踊り場まで下りたらすぐに止まった。
そしてさっきよりも早まるのは、涙が頬を伝う早さだけ。
その涙は頬を伝い切り、そのまま制服のブレザーに落ち、
そこを転がり、床の極一部を濡らす。
何故こんなにも泣くのかは分からない。
その時、背中に程よい重みと、優しい温かみを感じた。
「坂城、どうした?」
数段上から抱きついたのは木崎だった。
「大丈夫、何でも、ない……」
「なら、何でそんなに辛そうなの?」
誰のせいだよ。
そんな事を考えても、涙は決して止まろうとはしな
かった。
「私達に、お願いだから話して」
その言葉にだけは、頷けなかった。
木崎から出た言葉だからこそ。
信じてる、傍に居て欲しい、木崎から出た言葉だから。
きっと、藤井に言われても頷けないだろう。
「坂城っ、もう良いでしょ?もう疲れたでしょ?」
「ヤメろ…」
「坂城は、人を頼るって事を知らなすぎるのよ……」
だから、私達に全て話して、と木崎は続けた。
「俺の事は気にするな。木崎はもちろん、藤井にも関係の
無い事だ。余計な事には、関わるな」
「さかき……」
俺は制服の胸元を握る、木崎の震える手にそっと触れ、
離してもらった。
そして得られた気持ちは、決して安心や満足ではなかった。
「じゃあね」
「ちゃんと、戻って来てよ?」
「お前の中で俺はどこに行く設定になってる」
そういつものトーンで言えば、木崎は、悪いけど可愛い
とは言い難い笑顔を浮かべた。
けど、その木崎自身は、とても可愛かった。
俺の事で、そこまで泣くとは。
何だか悪い事をしているような気分にすらなった。
俺はそんな木崎を置いて、ゆっくりと階段を下りて
いった。
一人にはしたくない、あの人の元へ向かうために。
