ーーー事件当日ーーー
母さんも姉貴も。
俺の進む高校も決まり、安心して接客をしていた。
「こちらですね。綺麗ですよね〜。名前は知らないんですけど」
「ふふっ、やっぱり龍くんとの話は楽しいわ」
「ありがとうございます」
こんな感じで、普通にラッピングをしてその花を渡した。
その人はとても嬉しそうな顔で店を出て行った。
俺は、そんな笑顔を見るのが好きだった。
夕陽が綺麗な日。
夕陽を眺めながら花に水をやっていた。
その時、隣に人の気配を感じた。
そちらを見れば、ツバの広い帽子をかぶり、サングラスに
マスクといった、明らかに『怪しい人』が居た。
その人は俺に刃物を見せて、金を出せと言う。
素直にそれに応じ、レジから金を出すため、ほんの少し
目を離した時だった。
「キャーッ」
「嘘っ、何!?」
数名の悲鳴が聞こえたと同時に、さっきの人が去っていくのが見えた。
そして目の前には腹の辺りから血を流す母親。
「ちょ、母さん?」
まぁ呼んでも返事など無い。
俺はとりあえず、何故かいつもポケットにいるタオルを
取り出し、それを刃物を抜かれた血を流す母の傷に当てる。
「いった……」
幸い意識はあるらしい。
「傷触ってっかんな。黙ってろ」
傷に当てたタオルはどんどん赤く染まっていく。
「ちょい龍、何の騒ぎ?」
裏から悲鳴やら騒ぎを聞いた姉貴が出てくる。
「ちょっ、お母さん!?」
母の姿を見て早速泣き出す姉貴。
俺はその隣で救急車を呼ぼうとした。
が、それを止める母親。
「い、いの……」
「良いから黙ってろ」
母親にこんな言い方をしたのは、初めてだった。
その時、サイレンの音がこの辺に響き渡った。
店の中を見た近所の人が呼んでくれたらしい。
野次馬やら警察やらで賑わう店の前。
そんな中を通り抜け、中に入ってきた救急隊員と供に
救急車に乗り込む坂城家の人間。
そこに、父親の姿はなかったけど。
父親は俺が小学校五年くらいの時に死んだ。
その日、俺は父親に『いってらっしゃい』ではなく、
『じゃあね』と言った。
それが、本当の別れの言葉になるとも知らずに。
病院へ着けば、母親は手術室へと連れて行かれた。
俺と姉貴、いつの間にか来ていた祖母と冬実はその前の
廊下で待っていた。
「お母さん……」
「奏、大丈夫。夏だよ?そんな、そんな簡単に……」
姉貴の肩に手を乗せてそう言う、冬実の声もかなり
震えていた。
そんな中、ただ無事を祈ってその場に立つだけの俺。
「龍くん?」
「ばあちゃん…」
「夏実に、もう、会えないのかしら……」
「大丈夫だよ」
俺は、母親の血で濡れた手で祖母を支えた。
それから暫くして、病院の人が出てきた。
その人は、まるでドラマのように首を振った。
こんな事があるのだと、関係の無い事を考えた。
そんな俺の隣で泣き崩れる姉貴。
それにつられるようにその場にしゃがみ込む冬実。
祖母は本当に、何も考えられないという感じだった。
母親が殺害されたのだと、俺がちゃんと理解出来たのは
それから一ヶ月程の時が経った頃だった。
母さんも姉貴も。
俺の進む高校も決まり、安心して接客をしていた。
「こちらですね。綺麗ですよね〜。名前は知らないんですけど」
「ふふっ、やっぱり龍くんとの話は楽しいわ」
「ありがとうございます」
こんな感じで、普通にラッピングをしてその花を渡した。
その人はとても嬉しそうな顔で店を出て行った。
俺は、そんな笑顔を見るのが好きだった。
夕陽が綺麗な日。
夕陽を眺めながら花に水をやっていた。
その時、隣に人の気配を感じた。
そちらを見れば、ツバの広い帽子をかぶり、サングラスに
マスクといった、明らかに『怪しい人』が居た。
その人は俺に刃物を見せて、金を出せと言う。
素直にそれに応じ、レジから金を出すため、ほんの少し
目を離した時だった。
「キャーッ」
「嘘っ、何!?」
数名の悲鳴が聞こえたと同時に、さっきの人が去っていくのが見えた。
そして目の前には腹の辺りから血を流す母親。
「ちょ、母さん?」
まぁ呼んでも返事など無い。
俺はとりあえず、何故かいつもポケットにいるタオルを
取り出し、それを刃物を抜かれた血を流す母の傷に当てる。
「いった……」
幸い意識はあるらしい。
「傷触ってっかんな。黙ってろ」
傷に当てたタオルはどんどん赤く染まっていく。
「ちょい龍、何の騒ぎ?」
裏から悲鳴やら騒ぎを聞いた姉貴が出てくる。
「ちょっ、お母さん!?」
母の姿を見て早速泣き出す姉貴。
俺はその隣で救急車を呼ぼうとした。
が、それを止める母親。
「い、いの……」
「良いから黙ってろ」
母親にこんな言い方をしたのは、初めてだった。
その時、サイレンの音がこの辺に響き渡った。
店の中を見た近所の人が呼んでくれたらしい。
野次馬やら警察やらで賑わう店の前。
そんな中を通り抜け、中に入ってきた救急隊員と供に
救急車に乗り込む坂城家の人間。
そこに、父親の姿はなかったけど。
父親は俺が小学校五年くらいの時に死んだ。
その日、俺は父親に『いってらっしゃい』ではなく、
『じゃあね』と言った。
それが、本当の別れの言葉になるとも知らずに。
病院へ着けば、母親は手術室へと連れて行かれた。
俺と姉貴、いつの間にか来ていた祖母と冬実はその前の
廊下で待っていた。
「お母さん……」
「奏、大丈夫。夏だよ?そんな、そんな簡単に……」
姉貴の肩に手を乗せてそう言う、冬実の声もかなり
震えていた。
そんな中、ただ無事を祈ってその場に立つだけの俺。
「龍くん?」
「ばあちゃん…」
「夏実に、もう、会えないのかしら……」
「大丈夫だよ」
俺は、母親の血で濡れた手で祖母を支えた。
それから暫くして、病院の人が出てきた。
その人は、まるでドラマのように首を振った。
こんな事があるのだと、関係の無い事を考えた。
そんな俺の隣で泣き崩れる姉貴。
それにつられるようにその場にしゃがみ込む冬実。
祖母は本当に、何も考えられないという感じだった。
母親が殺害されたのだと、俺がちゃんと理解出来たのは
それから一ヶ月程の時が経った頃だった。
