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忘れないで


楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、もう学校へ行く
日、どころか時間になっていた。

私は眠い目をこすり、家を出る。

すぐそこには待っていたかのように香が居た。

「あらら木崎(きさき)さん。どうしました?」

「藤井様をお待ちしておりました」

香が綺麗な笑みを浮かべてこちらを見る。

「お待たせ致しました」

私も何となく頭を下げてみる。

「いやぁ、眠いね」

「眠いねぇ」

私達は今日も学校へ。

決して行きたくもない、学校へ。

「昨日何してた?」

「特に何も」

もう少し優しく答えてよ。

まぁあまり優しく答えられても、それはそれで怖いだろう
けど。

私達はたまに空を見上げ、鳥の声を聞き。

今日も同じ道を歩いてる。

「あの」

綺麗な男の子の声。

そちらへ振り向けば結構整った顔の同じ歳くらいの男の子が。

「はい?」

「落としましたよ」

その言葉と同時に差し出されたのは、私のハンカチ。

最近良く落とすんだよな。

「すみません、ありがとうございます」

「いえ。では」

私が頭を下げると、隣から変な視線が。

「何よ」

「別に?」

どうせ、他の人には感じ良く喋るのね、とかそんな事
考えてるんでしょ。

前はよく言われた。

私は拾ってもらったハンカチをブレザーのポケットに
入れ、再び歩き出した。

「あんなかっこいい人、こんな田舎に居るのね」

「田舎か都内かって問題なの?」

「いや、分かんないけどさ?」

香、男の子を見た時は必ず顔のチェックが入ってる。

怖いよ。

私は基本どこも見ない。

さっきみたいな時は顔も少しは見るけど。

「さっきの人、タイプ」

「良いわねぇ、楽しそうで」

「あら、感じ悪いわねぇ」

「そんな事ないわ?」

そう言って空を見上げると、そんな事しかないわ、と隣
からキツい言葉が飛んできた。

そんなに嫌な人に見られてるとは。


私達は今日も、見慣れた教室に。

そしていつもと同じ席に。

当たり前のように隣に気配はない。

後ろにも、斜め後ろにも。

人の気配があるのに、この隣だけは。

この隣の席の人と、一度も会った事も話した事もない。

来てるのかな。

来てたら、顔と名前くらいは知ってるはずだよね。

香、知ってるかな。

「香?」

「何?」

「この、私の隣の席の人、知ってる?」

「名前も知らない」

やっぱり、そうなんだ。

私はそっ、と自分で聞いたにも関わらず興味の無さそうな
返事をし、窓の外へと視線を移した。

私達の会話はいつもこんな感じ。

お互い、自分から聞いたくせに、って思う程答えが返って
きても興味の無さそうな反応。

お互い自覚はしてるけど、特に直そうともしてない。

けどそんなに仲も悪くないし、これで良いと思ってる。

香も特に気にしないで荷物片付けてるし。

私もそれを確認して片付けを再開した。


そして片付けが終わって、席に着いたと同時に突っ伏す。

腕で頭の周りを囲むようにして。

大分暗いその中は、最高に眠れる環境。

私は今日も、自分で誘った眠気と闘う。

これが私の日課になりつつある行動。


そろそろこの物語を盛り上げてくれる人物が出てきそうです。

何だか、長くてすみません。
<2016/08/19 23:01 秋の空>消しゴム
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