(姉の風呂場のシーンが少しあります。ご報告遅れて
すみません。)
『私を、感じてて……』
もちろん、そうして居たいよ。
けど、そうすれば君から自由と未来を奪う事になる。
君に、そんな思いはさせたくない。
そりゃ、ずっとずっと傍に居て欲しいよ。
傍に感じて居たいよ。
けど、君がそれで良いはずがない。
だから、俺の事は気にしないで、楽しく過ごしてほしい。
人生は、たった一度きり。
もう二度と、同じ時間は過ごせない。
俺なんかの事で時間を使うくらいなら、木崎と笑え。
君が望むなら、そうしてくれたら俺も笑うから。
二人から逃げるようにあの場を去った俺は、土手の芝生に
寝転び、空を眺めていた。
いつもなら、この体制で見えるのは何ともない天井だけ
だから、何となく新鮮だった。
二年になっても遅刻グセは治らない問題児。
癖になると、何でもそうだけど治らないんだよな。
ま、この簡単な考え方がダメなんだけど。
あいつが居たら、すぐ傍に立って叩き起こすんだろうけど。
それがないと、俺は何も出来ない。
あっても、出来なかったのに。
「かな」
ゆっくり、亡き姉の名前を呼んでみる。
青空に、『奏』という一文字が浮かんで見える。
それを消すように、優しく吹く春の風。
『迷惑かけてごめんね。
あたしにお母さんのいないこの世界を生きていく自信は
ないよ。できないよ。
けど龍、お前にはそれができる。
大丈夫。
辛い時、何かあった時は空を見上げろ。
あたしは龍のことが大好きだよ。
あたしは龍を決して忘れない。
だから、龍は一人じゃないことを、忘れないで。』
目を閉じて、真っ赤になった視界に浮かぶのは、あの所々
涙で滲んだ、姉貴が書いた字。
高校生、あの頃ですら中学三年だけど。
姉貴は、俺の全てだった。
仲が、良すぎたのかな。
いつもは嫌な『大好き』の言葉。
あの文字では、全く嫌じゃなかった。
まぁ、あの辺は殆ど読めなくなってたけど。
そんなに後悔しながら、何故あんな事。
閉じた目から、横に流れる涙。
その時、流れた涙と、タオルの隙間から流れる姉貴の血が
何故か重なった。
そして閉じていても視界は明るい太陽のせいで真っ赤。
それが更にあの日のことを蘇らせる。
俺は起き上がり、何故か荒くなった呼吸を整えた。
「はあっ、……ハハッ」
バカみたい。
勝手に自分の涙と他人の血重ねて。
呼吸乱して会えもしない姉を求めて。
横の次はそのまま縦に流れる涙たち。
そして涙で歪む視界に入れるのは自分の手首。
あいつはこれを、自分で、自分の意志で切ったんだ。
そこから流れる血を見て何を思っただろう。
何故か、最後に自分の事を考えていて欲しかった。
あの、薄い自分の血液を見て。
貧血気味だった姉貴には、大した量でなくても十分だったんだろう。
嫌な記憶が蘇る。
忘れたくても、忘れられない。
それどころか、どこかで忘れてはいけないとすら思ってる。
「龍?」
聞き覚えのある声。
今度は木崎。
木崎は俺の隣に座った。
「何の用。俺帰るんだけど」
そう言った俺の声は、自分でも嫌になる程感じ悪かった。
そんな俺は立ち上がり、逃げる準備をした。
「私達は、居るよ?いつまでも…」
木崎は俺を逃さぬようにと立ち上がる。
「俺、そういうの嫌いなんだよね」
「えっ?」
「そういう友達とか仲間とか?マジくだらねぇ」
こんな言葉を使ったのは初めてだった。
何か、学園ドラマに出てる俳優にでもなった気分。
「ねぇ、どれが本当の龍なの?私達に関わって欲しくないのはどっち?」
「あんたらが何考えてるか知らないけど、本当の俺も嘘の俺もないから」
「そんな事無いでしょ?萌に、お願いだから消えないで
って言ったのは、本当の龍じゃないの?」
「んな事憶えてねぇよ…」
俺はまた、嘘をつく。
ついた。
今でも鮮明に憶えてる。
それどころか今でも、その気持ちは消えてない。
「龍っ、私達は、どんな龍でも、傍に居るよ?龍が人から
離れられなくなる?とかまぁ、覚悟は出来てる」
超能力者並だね。
全部分かってる。
「だから、前も言っただろ?お前らに出来んのは関わん ねぇ事なんだよ」
逆だった。
俺がみんなに出来る事が、関わらない事だった。
だから俺は、今でも必死に二人から離れようとしてる。
けど二人には、それが伝わってないみたい。
俺が、もっと二人を求めなくなれば。
もっと本気で、離れたいと思えれば。
もっと、二人の事を考えられれば。
二人の事を考えれば、絶対に俺なんかと関わらない方が
良いんだから。
けど、本気で離れたいと思えないから。
二人にそっちが伝わってる。
それで二人は、こんな、ここまで弱い俺はまだきっと知らない。
だから、優しく接しようと、関わろうとしてくれてる。
けど、やっぱり俺らは関わるべき人じゃない。
これが、二人のため。
そう思えば、あの言葉も言える気がした。
すみません。)
『私を、感じてて……』
もちろん、そうして居たいよ。
けど、そうすれば君から自由と未来を奪う事になる。
君に、そんな思いはさせたくない。
そりゃ、ずっとずっと傍に居て欲しいよ。
傍に感じて居たいよ。
けど、君がそれで良いはずがない。
だから、俺の事は気にしないで、楽しく過ごしてほしい。
人生は、たった一度きり。
もう二度と、同じ時間は過ごせない。
俺なんかの事で時間を使うくらいなら、木崎と笑え。
君が望むなら、そうしてくれたら俺も笑うから。
二人から逃げるようにあの場を去った俺は、土手の芝生に
寝転び、空を眺めていた。
いつもなら、この体制で見えるのは何ともない天井だけ
だから、何となく新鮮だった。
二年になっても遅刻グセは治らない問題児。
癖になると、何でもそうだけど治らないんだよな。
ま、この簡単な考え方がダメなんだけど。
あいつが居たら、すぐ傍に立って叩き起こすんだろうけど。
それがないと、俺は何も出来ない。
あっても、出来なかったのに。
「かな」
ゆっくり、亡き姉の名前を呼んでみる。
青空に、『奏』という一文字が浮かんで見える。
それを消すように、優しく吹く春の風。
『迷惑かけてごめんね。
あたしにお母さんのいないこの世界を生きていく自信は
ないよ。できないよ。
けど龍、お前にはそれができる。
大丈夫。
辛い時、何かあった時は空を見上げろ。
あたしは龍のことが大好きだよ。
あたしは龍を決して忘れない。
だから、龍は一人じゃないことを、忘れないで。』
目を閉じて、真っ赤になった視界に浮かぶのは、あの所々
涙で滲んだ、姉貴が書いた字。
高校生、あの頃ですら中学三年だけど。
姉貴は、俺の全てだった。
仲が、良すぎたのかな。
いつもは嫌な『大好き』の言葉。
あの文字では、全く嫌じゃなかった。
まぁ、あの辺は殆ど読めなくなってたけど。
そんなに後悔しながら、何故あんな事。
閉じた目から、横に流れる涙。
その時、流れた涙と、タオルの隙間から流れる姉貴の血が
何故か重なった。
そして閉じていても視界は明るい太陽のせいで真っ赤。
それが更にあの日のことを蘇らせる。
俺は起き上がり、何故か荒くなった呼吸を整えた。
「はあっ、……ハハッ」
バカみたい。
勝手に自分の涙と他人の血重ねて。
呼吸乱して会えもしない姉を求めて。
横の次はそのまま縦に流れる涙たち。
そして涙で歪む視界に入れるのは自分の手首。
あいつはこれを、自分で、自分の意志で切ったんだ。
そこから流れる血を見て何を思っただろう。
何故か、最後に自分の事を考えていて欲しかった。
あの、薄い自分の血液を見て。
貧血気味だった姉貴には、大した量でなくても十分だったんだろう。
嫌な記憶が蘇る。
忘れたくても、忘れられない。
それどころか、どこかで忘れてはいけないとすら思ってる。
「龍?」
聞き覚えのある声。
今度は木崎。
木崎は俺の隣に座った。
「何の用。俺帰るんだけど」
そう言った俺の声は、自分でも嫌になる程感じ悪かった。
そんな俺は立ち上がり、逃げる準備をした。
「私達は、居るよ?いつまでも…」
木崎は俺を逃さぬようにと立ち上がる。
「俺、そういうの嫌いなんだよね」
「えっ?」
「そういう友達とか仲間とか?マジくだらねぇ」
こんな言葉を使ったのは初めてだった。
何か、学園ドラマに出てる俳優にでもなった気分。
「ねぇ、どれが本当の龍なの?私達に関わって欲しくないのはどっち?」
「あんたらが何考えてるか知らないけど、本当の俺も嘘の俺もないから」
「そんな事無いでしょ?萌に、お願いだから消えないで
って言ったのは、本当の龍じゃないの?」
「んな事憶えてねぇよ…」
俺はまた、嘘をつく。
ついた。
今でも鮮明に憶えてる。
それどころか今でも、その気持ちは消えてない。
「龍っ、私達は、どんな龍でも、傍に居るよ?龍が人から
離れられなくなる?とかまぁ、覚悟は出来てる」
超能力者並だね。
全部分かってる。
「だから、前も言っただろ?お前らに出来んのは関わん ねぇ事なんだよ」
逆だった。
俺がみんなに出来る事が、関わらない事だった。
だから俺は、今でも必死に二人から離れようとしてる。
けど二人には、それが伝わってないみたい。
俺が、もっと二人を求めなくなれば。
もっと本気で、離れたいと思えれば。
もっと、二人の事を考えられれば。
二人の事を考えれば、絶対に俺なんかと関わらない方が
良いんだから。
けど、本気で離れたいと思えないから。
二人にそっちが伝わってる。
それで二人は、こんな、ここまで弱い俺はまだきっと知らない。
だから、優しく接しようと、関わろうとしてくれてる。
けど、やっぱり俺らは関わるべき人じゃない。
これが、二人のため。
そう思えば、あの言葉も言える気がした。
