私は何とか隣の香に気付かれる事無く泣き止んだ。
窓を開ければ春の風が吹き込む。
一枚の、桜の花弁と共に。
「花弁」
「入って来た?」
頷けば、幸せになれるかもよ、と言ってくれる香。
その時授業終了を告げる普段は嬉しいチャイムが鳴る。
そしてバタバタと聞こえる生徒達の足音。
それに、龍のものは含まれていなかった。
龍が、教室に入って来なかった。
何で。
いや、何か先生に頼まれたとか、ね。
そう、自分に言い聞かせる。
嫌だよ?
あの日、私が考えたことが実際に起きたりしたら。
そんな事、無いよね。
いつか、後悔して帰ってくるんでしょ?
龍、信じてるよ。
いつまでも。
私はすぐそこの席に着き、先程迷い込んできた花弁を眺めた。
「ちょっ、萌!」
香の慌てたような声。
香の方へ行けば、一つ何も入っていないロッカーが目に入る。
「これが、何?」
確認のため、わざと言った。
「龍、来てない?」
「何で?いや、おかしいでしょ」
「けど、鞄無いよ?」
うん、見れば分かるよ。
「え、何故?」
それは私も分からない。
香と廊下へ出れば、去年の担任が。
この人とは結構仲良い。
友達感覚、みたいな感じ。
「ちょ、龍は?」
「え?」
「えじゃねぇよ。龍は」
「いや、知らないけど」
「萌っ」
香に、まさかの抱きしめられる。
「離せ」
「萌、落ち着いてよ」
「で、坂城がどうかしたのか?」
香が代わりに今までの事をざっくりと説明する。
「ふ〜ん?知らないなぁ」
だろうね。
「そっか、ありがと」
私は階段を駆け下りた。
階段はゆっくりな、という無駄に真面目な先生の声を背中で聞きながら。
何で、何で居ないのよ。
「間違えた!」
「何っ、萌っ!」
私は引き返し、屋上へ向かった。
「龍っ!」
今回も、そこに龍の姿は無かった。
私はそれだけを確認して中へ入り、階段を駆け下りて学校を出た。
そして向かうのは、昨日の土手。
「萌っ」
控えめに名前を呼ばれ、腕を掴まれる。
香を見れば、彼女は黙って首を振るだけだった。
何でよ。
すぐそこに居るのに。
彼も私達に気付いてるのに。
何で……
「龍っ」
「萌、ヤメて。お願い」
「香は、香は龍の何を知ってるの?」
龍が居る前で言うような言葉ではない事くらい分かってた。
「なら聞くけど、何で分からないの?」
「何で分かるの?何が分かるの?」
「今朝も言ったでしょ?あれが、龍の本当に願ってる事。
関わって欲しくないの。私達は本当に、関係無いの」
本当に、関係無い。
そんなに丁寧に言われると、本当に何も返せなかった。
ふと龍の居た所を見れば彼の姿は無く、前を向けば彼の 後ろ姿が目に入った。
私は咄嗟に呼び止める。
今朝とは違い、普通に止まってくれる龍。
「頼むから…」
「龍?」
「頼むから俺に関わらないでくれ。理由は、木崎の言った
通りだ」
言われる言葉は分かってたけど、再び歩き出す彼を呼び止めた。
「もう良いだろ、俺は人と関わりたくないんだよっ」
初めて聞いた、龍の心の声。
口から出されたそれは、私の胸にグサグサと刺さった。
今まで彼が避けてきた事を私は、必死になって……
そう考えると、今にも泣きそうになる。
私が泣くような事じゃないのに。
彼の方が、龍の方が泣きたいだろうに。
「分かったら帰れ。そして、二度と、俺の前に現れるな…」
消えそうになる声でそう言った後だった。
自分勝手な思いを押し付けて悪い。
龍は、確かにそう言った。
その言葉に、一気に溢れ出す涙たち。
そして、そのままその場に崩れ落ちた。
そんな、弱い私の隣で彼の後ろ姿を見つめる、強い香。
窓を開ければ春の風が吹き込む。
一枚の、桜の花弁と共に。
「花弁」
「入って来た?」
頷けば、幸せになれるかもよ、と言ってくれる香。
その時授業終了を告げる普段は嬉しいチャイムが鳴る。
そしてバタバタと聞こえる生徒達の足音。
それに、龍のものは含まれていなかった。
龍が、教室に入って来なかった。
何で。
いや、何か先生に頼まれたとか、ね。
そう、自分に言い聞かせる。
嫌だよ?
あの日、私が考えたことが実際に起きたりしたら。
そんな事、無いよね。
いつか、後悔して帰ってくるんでしょ?
龍、信じてるよ。
いつまでも。
私はすぐそこの席に着き、先程迷い込んできた花弁を眺めた。
「ちょっ、萌!」
香の慌てたような声。
香の方へ行けば、一つ何も入っていないロッカーが目に入る。
「これが、何?」
確認のため、わざと言った。
「龍、来てない?」
「何で?いや、おかしいでしょ」
「けど、鞄無いよ?」
うん、見れば分かるよ。
「え、何故?」
それは私も分からない。
香と廊下へ出れば、去年の担任が。
この人とは結構仲良い。
友達感覚、みたいな感じ。
「ちょ、龍は?」
「え?」
「えじゃねぇよ。龍は」
「いや、知らないけど」
「萌っ」
香に、まさかの抱きしめられる。
「離せ」
「萌、落ち着いてよ」
「で、坂城がどうかしたのか?」
香が代わりに今までの事をざっくりと説明する。
「ふ〜ん?知らないなぁ」
だろうね。
「そっか、ありがと」
私は階段を駆け下りた。
階段はゆっくりな、という無駄に真面目な先生の声を背中で聞きながら。
何で、何で居ないのよ。
「間違えた!」
「何っ、萌っ!」
私は引き返し、屋上へ向かった。
「龍っ!」
今回も、そこに龍の姿は無かった。
私はそれだけを確認して中へ入り、階段を駆け下りて学校を出た。
そして向かうのは、昨日の土手。
「萌っ」
控えめに名前を呼ばれ、腕を掴まれる。
香を見れば、彼女は黙って首を振るだけだった。
何でよ。
すぐそこに居るのに。
彼も私達に気付いてるのに。
何で……
「龍っ」
「萌、ヤメて。お願い」
「香は、香は龍の何を知ってるの?」
龍が居る前で言うような言葉ではない事くらい分かってた。
「なら聞くけど、何で分からないの?」
「何で分かるの?何が分かるの?」
「今朝も言ったでしょ?あれが、龍の本当に願ってる事。
関わって欲しくないの。私達は本当に、関係無いの」
本当に、関係無い。
そんなに丁寧に言われると、本当に何も返せなかった。
ふと龍の居た所を見れば彼の姿は無く、前を向けば彼の 後ろ姿が目に入った。
私は咄嗟に呼び止める。
今朝とは違い、普通に止まってくれる龍。
「頼むから…」
「龍?」
「頼むから俺に関わらないでくれ。理由は、木崎の言った
通りだ」
言われる言葉は分かってたけど、再び歩き出す彼を呼び止めた。
「もう良いだろ、俺は人と関わりたくないんだよっ」
初めて聞いた、龍の心の声。
口から出されたそれは、私の胸にグサグサと刺さった。
今まで彼が避けてきた事を私は、必死になって……
そう考えると、今にも泣きそうになる。
私が泣くような事じゃないのに。
彼の方が、龍の方が泣きたいだろうに。
「分かったら帰れ。そして、二度と、俺の前に現れるな…」
消えそうになる声でそう言った後だった。
自分勝手な思いを押し付けて悪い。
龍は、確かにそう言った。
その言葉に、一気に溢れ出す涙たち。
そして、そのままその場に崩れ落ちた。
そんな、弱い私の隣で彼の後ろ姿を見つめる、強い香。
