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忘れないで


山田先輩と話しながら歩いていた。

この人にも何も隠せず、さっきまでの事を全て話した。

「まぁ、さ?色々あるんもんよ」

「人って、難しいですよね」

「人以上に難しいもんはねぇよ」

山田先輩も基本人と関わらない人。

も、って言うか、俺は結構、友達沢山ってタイプだったけど。

「いつ、消えるかも分からないしな……」

「やっぱり、そうですよね……」

だもん、二人とは関わりを断って正解だった。

「あっ、ごめん。あの二人は、きっと……」

俺は首を振った。

「もう、良いんですよ。あの二人には、十分世話になったんで」

「お前も分かってんだろ?」

先輩の押す自転車が止まる。

少し後ろに居る先輩を見れば、その表情はとても暗かった。

「人ってのぁ難しいんだよ。お互い何考えてっかも分かんねぇ」

「だから俺は、あの二人との関わりを断ったんです」

「二人がお前の事、どれだけ大切に思ってっか知ってんのかよ」

「先輩は、二人の何を知ってるんですか」

先輩は一瞬驚いた顔をし、すぐに表情を暗くして、ごめん
と呟いた。

「あ、いえ。何か、すみません…」

先輩の押す自転車が再び動き出した事を確認すると、俺は緊張から少し冷えた手を未開栓の缶で温めながら歩き出した。



「あ、坂城さ」

「はい」

「お前、色々気にし過ぎだからな?相手は同級生。
同じ年齢の奴が考えるような事は大体分かるし、俺ら
くらいの歳の喧嘩や言い合いなんてのぁすぐ終わっから」

そう言い、手を振って先輩は隣の教室へと入って行った。

俺は見られているかは分からなかったけど頭を下げ、教室へ。

おや、全員集合、ですね。

そして視線も、俺に全部集合?

一気に暑くなってきた。

「あ、すみません……」

先生が丁寧に指した席に着く。

「えぇっと?何をしてらした?」

この人怒ると怖いんだよな。

「すみません」

こういう人に言い訳は通用しない。

大人しく謝っておくのが正しいと俺は思ってる。

「あなた、朝から居なかったみたいね?」

「はい……」

「まぁ良いわ。去年のあなたの担任に聞いたんだけど、
ご家庭は落ち着いたのかしら?」

随分丁寧な言葉。

普通なのかもしれないけど、この人からこんな言葉聞くとは。

「はい、大丈夫です」

「そう。まぁ、授業はもう良いわ、終わり」

えぇ、先生がそんなんで良いんだ。

この学校、やっぱり変。

そんな学校の教室でざわつき始める生徒達。

どうするか悩んでいた時、授業終了を告げるチャイムが鳴る。

俺は迷わず山田先輩の隣の教室へ。

「あれ〜?山田くんお友達〜?珍しー」

そんな声が飛び交う中、俺に謝りながら出て来る先輩。

俺はそれに首を振る。

その後、俺はしばらく中を見つめてしまった。

「何?タイプの女子でも居た?」

「やっ、ヤメて下さいよっ」

軽く先輩の腕を叩くと、ハハハッ、と豪快な笑い声が廊下に響く。

こんな、自然な友達が欲しかった。

まさか同じ学校とは思ってなかった。

きっと、この人ならどこも行かない。

置いて行かれる辛さを、誰よりも知ってるから。

この人は俺が店を辞めた頃に、彼女さんを。

その人もかなり良い人で。

「で、どうした?」

「あっいえ、ただ、久々に会ったので、嬉しくて」

そうか、と笑う先輩の顔。

お店に来てた頃と全く変わってない。

それに、心から安心してる自分がいる。

「お散歩でもするか」

「お散歩」





断れるはずも無く、俺は先輩と校内を回ることに。

俺らは部活の今の活動なんかをまとめた紙が貼ってある
場所へ。

「そういや坂城は何にも入ってないんだっけ」

「そうですね」

「まぁ、そんな余裕も無かったよな」

「そんな事も無かったんですけどね」

ハハッ、と笑う先輩。

前からこの笑い方と笑顔が好きだった。

見てて楽しくなるような。

普段は凄いクールな顔してるのに。

笑うとあんなに可愛く。

あれ、俺何考えてるんだろ。

まぁ、俺とは真逆なタイプの方で。

憧れの先輩、みたいな。

俺はそんな人と、久々に満喫した休み時間を過ごした。

<2016/08/22 22:15 秋の空>消しゴム
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