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忘れないで


長い授業を終え、いつもと同じお弁当を食べて。

そんな時を経て昼休みという優しい時間が訪れた。

そんな時間、私はもちろん香と居る。

あの、隣の教室の前で。

どう声を掛けるかとウロついていた時。

「どうした?」

優しい先輩も居るものです。

「えっと……」

あの人、名前も知らないし。

「もしかしてさ、坂城と仲良い子達じゃない?」

そんなに有名になってるんだ。

有名、かは分からないけど。

「あぁ〜、もしかしちゃったかぁ。ちょっと待ってね」

そう言って先輩が再び中に入った時。

「超かっこいい」

香が女の子になってしまった。

私はああいう人はいいや。

香、見るからに優しい人が好きなんだね。

龍も、そんな感じだもんね。

「何?」

あぁ、こういう人が好きかも。

なんて、女の子らしい事、同時に私らしくない事を考えてしまった。

「あっ、いや、どうしようか……」

「こっちが聞きてぇし」

ですよね。

本当、すみません。

「いや、あの。ねっ?」

私は今回も香に助けを求めた。

「何。早くしてくんない」

ってか龍、こんな人と仲良いんだ。

いや待てよ、本当にこの人なのかな。

「坂城くんと仲の良い先輩って…」

「悪かないけど。だったら?」

必要最低限の事しか喋らない感じの人だ。

龍の事は諦めかな。

「彼の事で教えて欲しい事があるんですけど」

香、タイプじゃないとトコトン話すんだね。

「別に俺があいつの何知ってる訳じゃないし」

「あの、香、もう良いから。戻ろ?」

「少しだけで良いんで。彼の事、放っとけないんですよ」

「悪いけど、俺から言える事は何もない。それだけなら戻れ」

私は教室に戻ってしまった先輩に頭を下げ、諦めない香とその場を去った。

「萌っ!何でよ、もう少し言えば教えてくれたかもよ?」

香が、腕を掴む私の手を振り解く。

「もう良いから。あの人、絶対良い人だから」

「あの一瞬で何が分かるのよ。しかも、なら何で」

確かにね。

そうなんだけど、何かを感じたというか。

龍と、似てる所があるのかも。

「萌は、萌はもう諦めるの?」

「香、落ち着いて?私だって龍の事は放っとけない」

香より放っとけない自信がある。

これ言うと怒られそうだから、言わないけど。

「なら何でよ……」

「まだあるはずでしょ?何か、方法なんていくらでも……」

そう、信じたかった。

ただ、それだけだった。

まだ私達には可能性があると。

そう、信じたかっただけ。

「もう、あの人だけだよ。あの人が、最後の可能性だったんだよ」

「いつかこの手を掴んで助け出してもらう」

香が目を丸くして私を見る。

私はそれに笑い返す。

「助けてもらうんでしょ?それまで、手伸ばしてないと。
せっかく気付いてもらえたんだよ?」

「でも……」

「龍なら、龍なら放っとかないよ。香が言ってたじゃん。
凄い優しそうな顔してたって。香が間違えた事なんて、 あった?」

「間違えてばっかだよ……」

そう言う香の大きな目に涙が浮かぶ。

「そんな事ない。自身持ってよ。香が弱気になってどうすんのっ」

言いながら泣きそうになった。

全部、今まで香が言ってくれた言葉だから。

全部、香がくれた言葉だから。

「出来る?」

「もちろんだよ。出来ない理由なんて、見当たっかよ」

なんて、香っぽく言ってみる。

そんな事言えば、怒られそうだけどね。

私はそんなんじゃないって。

「萌も、居てくれる?手伝ってくれる?」

「そんなこと、言う必要ある?そんな事聞いてる時間があったら、何か探さないと」

私がそう言えば、香の顔に、泣きそうだった顔に。

素敵な笑顔が返ってきた。

そして、あの言葉には大きな頷きが返ってきた。

私も頷いた。



さてと。

誰から情報集めるかな。

私もあんな事言ったけど、内心かなり焦ってた。


<2016/08/23 11:49 秋の空>消しゴム
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