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忘れないで


そんな平凡な学校生活を送る事、数ヶ月。

一人の男子生徒の名前と存在が有名になっていた。

どうやらあの時先生が呼びかけた名前は
坂城 龍、らしい。

で、その彼が何故ここまでの人気者になったか。

それは彼が相当かっこいいらしくて?

女の子、特にこの学校のはそういうの好きだからね。

いや、私も女の子なんだけど。

あまりそういうの興味ないかな。

香もその一人。

会えば必ず顔に目をやるけど、話くらいならそんなに。

「ねぇ香?」

隣から視線を感じ、そのまま続けた。

「あの坂城って人、何で来てないんだろうね」

「さぁ?でも私、その人の事、知ってるかもしれないの」

私はつい隣の香を見た。

香は前の少し下辺りを見てたけど、そのまま続けてくれた。

「彼、入学式しか来てないと思うのよ」

「入学式……」

香は頷き、続けるように言った。

「で、その時の印象は結構ね、うん、あっ、はい〜って
感じ」

いや、全く分からないのは私だけかな。

あっ、はい〜って感じ。

大人しくしておいた方が良い感じ、って事かな。

なんて、適当に解釈してみる。

きっとそんなに良いイメージではなかったことは確か
だろう。

「まぁ、彼も色々あるのかもねっ。私達も、お互いの事
そんなに知らないし」

それが楽だから私は香と一緒にこの学校生活を乗り切ろう
としている。

「別に全部言う必要もないし」

それを知って、その人が去って行くなら。

自分の傍から、消えるなら。

言わない方が全然良い。

私は、そう思う。

その時、冷たくて少し強めの風が髪を乱した。

その風は後ろから来るものだった。

後ろを見れば、この時期にそんなに、ってほど開けられた窓が。

「ちょ、香が開けたの?」

「空気、入れ替え?」

「開けすぎ開けすぎっ」

私は雑に窓を閉め、その勢いで鍵も閉めた。

そして教室内に入り込む風が止み、一安心した時。

クスッ、という笑いが聞こえた。

そちらを見れば、控えめに笑う香が。

「何?」

「やっぱり萌にはその感じが一番似合ってる。まぁ、私が
変な事言っちゃったからだけどね」

「変な事?」

「ほら、お互いの事そんなに知らないって」

「それ気にしてた訳じゃないよ?」

笑ってそう言えば、嘘丸出し、と強烈な言葉が。

強烈というか、失礼というか。

嘘丸出しって。

何となく傷つくし。

「じゃっ、まぁ坂城くんが来たらお顔のチェックねっ」

楽しそうにそう言い、すぐそこの自分の席に戻る香。

私も何となくその後ろの自分の席に着いた。

そして視線は窓の外へ。

見えるのは、今にも泣き出しそうな空。

太陽なんて全く見えず、一面厚い雲が覆ってる。

まるで、冬のようだった。


<2016/08/20 09:42 秋の空>消しゴム
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