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忘れないで


暫くその場で泣いた。

辺りは、オレンジ色に染まっていた。

そしてその夕陽を見て、私達は何故か、山ちゃん先輩を
思い出した。

「山ちゃん先輩のお陰だね」

「そう、だね……」

私の声は、今度は山ちゃん先輩への感謝で震えていた。

「もう少しだ。頑張れ」

龍が残したあの言葉を、確認するように呟いてみる。

確かに、そう言われたよね。

夢じゃ、ないよね。

もう少し頑張れば、もう少し、この心の波と戦えば。

龍は、私達の傍に居てくれる。

龍は、私達を傍に居させてくれる。

いつも見ている夕陽。

見慣れた町並み。

本当に何も無くて。

そんなこの辺の景色が、とても綺麗に見えた。

「荷物、取りに行こうか」

香の言葉に頷き、私は立ち上がった。

今回も、香に支えられながら。

人生の立ち上がりも、実際の立ち上がりも。

全て香が傍に居た。

「歩ける?」

「歩けるよ」

香が、居るから。

こうして、もう少し二人で頑張れば。

龍も、居てくれるから。

私達は綺麗な夕陽に見守られ、学校へと戻った。

山ちゃん先輩に、お礼を言うと決めて。




相変わらず帰りの準備だけは早い私達。

もう山ちゃん先輩の教室の前に居た。

少し待って、山ちゃん先輩が出てくる。

それに気付かないかのようにそのまま帰ろうとする
ふざけた山ちゃん先輩。

「山ちゃん先輩っ!」

やってしまった。

先輩で、良かったよね。

「山ちゃん先輩?」

「すみません」

「いや、初めてだったからさ。失礼」

こちらこそ。

「ありがとうございました。ちゃんと、私達の気持ちだけは、伝えられました」

先輩の顔は、少し切な気なものに変わった。

夕陽に照らされてるからか、余計そう見える。

「坂城の答え、当てて良いか」

私達は絶対分からないだろうと、楽しみにして頷いた。

「もう少しだ、頑張れ」

先輩の切な気な声が、静かに廊下に響いた。

私達はその声を聞いた今、どんな顔をしているだろう。

先輩は、分かりやすいな、と笑った。

それに何となく謝る私達。

「本当、もう少しだ。頑張れよ」

そう言った後、お前らの気持ちは確かに届いてる、そう
静かに言い、先輩は階段を下りて行った。 

私達は、その言葉を信じた。

先輩のその言葉も、さっきの龍の言葉も。

先輩が当てた、龍の言葉。

信じれば信じる程、涙が溢れそうになった。

もう、届いてるんだもんね。

後は、龍がどれだけ頑張ってくれるか。

それだけ。

私達は、それをサポートするだけ。

それを、頑張るだけ。

本当、もう少しだね。

龍、頑張れ。

これが終われば、私達が癒やしてあげる。

今、君は相当辛い所に居るよね。

もう少し。

頑張れ。


<2016/08/23 13:30 秋の空>消しゴム
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