もう少しだ。頑張れ
そう言った日はいつの間にか昨日になり、俺は空を見上げながら学校へ向かっていた。
「りゅ〜うっ!」
朝から元気な声。
それが聞こえたと同時に肩を叩かれる。
「わっ、えっ?藤井っ……」
「ちょいちょい!木崎は?」
素直に謝れば、何か怖い、とまぁ何とも失礼な言葉が
飛んできた。
それも、結構真面目に。
「龍も素直になってきたのよね〜?」
「は?」
「あ、いや……」
もう少し。
もう少しで、素直になれるはず。
「安心して?私達はいつまでも、龍の傍に居るからさっ」
「うん…」
やっぱりこの二人、本気だ。
山田先輩の言った通り。
俺ら三人の間に程よい緊張感が流れる。
それを解くように優しく吹く、春の香り。
「あっ…」
「あ?」
木崎の髪に迷い込んだ一つの、薄紅色の花を取った。
これくらいは分かる。
桜の花。
「何」
「花」
「本当だぁ!花弁じゃないんだ。まんま来ちゃった感じ」
そう嬉しそうに言う藤井が何となく可愛かった。
「はい」
藤井を喜ばせたそれを、藤井ではなく木崎に渡した。
「はい?」
「香っ、幸せになれるかもよ?」
「幸せかぁ。なら、龍が持ってた方が良いんじゃない?」
これ、使った方が良いよね。
多分、自分から作り出すのは無理。
「もう…」
二人の穏やかな視線が向く。
つい目を逸らした。
「もう、いや、何でもない」
もう幸せだよ、そう言いたかった。
また、来るよね。
チャンス。
「もう!何よ」
「良いから、うん、行こ?」
「トゲ無くなったねぇ〜」
「あった方が良い?」
「バカじゃねぇの?」
もっと、自然に過ごせたら良いな。
いつか、きっと。
「本当の龍はどっちタイプなの?」
「どっち?」
「学校での友達作りませんタイプか、今みたいな、ほのぼのタイプか」
「今」
「その『今』の言い方がトゲトゲしてんだけど」
「ちょっと意識した」
「私達の前では何も気にしなくて良いから」
なにこれ。
朝から優しくされるとか。
泣かされる感じかな。
「はい、こういう事は、良いから。学校、行くよっ?」
「えぇ行くの?面倒くさい」
分かる分かる。
「よしっ!行くぞーっ!」
そう言って最初に飛び出したのは藤井だった。
俺もそれを追うように走った。
「木崎っ」
振り返って人を呼ぶ。
こんな学生らしい事、最後にしたのはいつだっただろう。
それどころか、いつからか自分すら見失ってた。
「しょうがないなぁ」
「あっ、龍」
隣でこそっと呼ぶ声がし、隣の藤井を見ればバカにしたように少し後ろを見てる。
俺もそちらを見る。
「あの人、走りダメだから」
「そうなの?」
藤井よりは走れそうだけど。
「そうなの。本当にダメだよ。道もすぐ迷うし」
「バーカ!」
元気な声が聞こえたと思えば背中に重みが。
え、何で俺?
「きさ、き?」
「香で良いよっ」
「かおり?」
「じゃあ私も萌でっ」
「もえ?」
「そんな改めて呼ばれると照れるよね」
二人のピッタリ揃った声が言う。
姉妹みたい。
「あっ、龍にぃ、鞄持ってあげる」
「あ、ごめん」
「何か良い人ね」
「は?」
「うわ、坂城になった」
良い人とか言われたらダメでしょ。
そういうの絶対素直になれない。
いつかちゃんと、素直に伝えられたら良いな。
傍に居てって。
それが、俺の目標。
何とも、小さな目標。
そう言った日はいつの間にか昨日になり、俺は空を見上げながら学校へ向かっていた。
「りゅ〜うっ!」
朝から元気な声。
それが聞こえたと同時に肩を叩かれる。
「わっ、えっ?藤井っ……」
「ちょいちょい!木崎は?」
素直に謝れば、何か怖い、とまぁ何とも失礼な言葉が
飛んできた。
それも、結構真面目に。
「龍も素直になってきたのよね〜?」
「は?」
「あ、いや……」
もう少し。
もう少しで、素直になれるはず。
「安心して?私達はいつまでも、龍の傍に居るからさっ」
「うん…」
やっぱりこの二人、本気だ。
山田先輩の言った通り。
俺ら三人の間に程よい緊張感が流れる。
それを解くように優しく吹く、春の香り。
「あっ…」
「あ?」
木崎の髪に迷い込んだ一つの、薄紅色の花を取った。
これくらいは分かる。
桜の花。
「何」
「花」
「本当だぁ!花弁じゃないんだ。まんま来ちゃった感じ」
そう嬉しそうに言う藤井が何となく可愛かった。
「はい」
藤井を喜ばせたそれを、藤井ではなく木崎に渡した。
「はい?」
「香っ、幸せになれるかもよ?」
「幸せかぁ。なら、龍が持ってた方が良いんじゃない?」
これ、使った方が良いよね。
多分、自分から作り出すのは無理。
「もう…」
二人の穏やかな視線が向く。
つい目を逸らした。
「もう、いや、何でもない」
もう幸せだよ、そう言いたかった。
また、来るよね。
チャンス。
「もう!何よ」
「良いから、うん、行こ?」
「トゲ無くなったねぇ〜」
「あった方が良い?」
「バカじゃねぇの?」
もっと、自然に過ごせたら良いな。
いつか、きっと。
「本当の龍はどっちタイプなの?」
「どっち?」
「学校での友達作りませんタイプか、今みたいな、ほのぼのタイプか」
「今」
「その『今』の言い方がトゲトゲしてんだけど」
「ちょっと意識した」
「私達の前では何も気にしなくて良いから」
なにこれ。
朝から優しくされるとか。
泣かされる感じかな。
「はい、こういう事は、良いから。学校、行くよっ?」
「えぇ行くの?面倒くさい」
分かる分かる。
「よしっ!行くぞーっ!」
そう言って最初に飛び出したのは藤井だった。
俺もそれを追うように走った。
「木崎っ」
振り返って人を呼ぶ。
こんな学生らしい事、最後にしたのはいつだっただろう。
それどころか、いつからか自分すら見失ってた。
「しょうがないなぁ」
「あっ、龍」
隣でこそっと呼ぶ声がし、隣の藤井を見ればバカにしたように少し後ろを見てる。
俺もそちらを見る。
「あの人、走りダメだから」
「そうなの?」
藤井よりは走れそうだけど。
「そうなの。本当にダメだよ。道もすぐ迷うし」
「バーカ!」
元気な声が聞こえたと思えば背中に重みが。
え、何で俺?
「きさ、き?」
「香で良いよっ」
「かおり?」
「じゃあ私も萌でっ」
「もえ?」
「そんな改めて呼ばれると照れるよね」
二人のピッタリ揃った声が言う。
姉妹みたい。
「あっ、龍にぃ、鞄持ってあげる」
「あ、ごめん」
「何か良い人ね」
「は?」
「うわ、坂城になった」
良い人とか言われたらダメでしょ。
そういうの絶対素直になれない。
いつかちゃんと、素直に伝えられたら良いな。
傍に居てって。
それが、俺の目標。
何とも、小さな目標。
