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忘れないで


朝から女子を背負って登校する日が来るとは思ってもいなかった。

「あっ、か、おり?」

「そんな呼びづらそうに呼ばないでよ。慣れるまで木崎
で良いから。あぁそうだ、ありがとね」

「あ、うん…」

何か、自然って恥ずかしいもんだね。

要らぬ緊張感が漂うっていうか。

「あれ、萌は?」

「取れた!」

どうやら降りて来る花弁を必死に取っていたらしい。

まぁ、そんな人だと思ってたけど、実際にそういうとこ
見ちゃうと可愛い。

そして、俺にはやっぱり疑問があった。

この二人は、何で俺と関わろうとしたんだろう。

そんな、疑問が。

「はい」

「えっ?」

「クローバー。幸せの象徴」

そして再び訪れるチャンス。

「俺は、もう、幸せ、だから……」

嘘くさくない?

「そんな緊張されながら言われても信じ難いんだけど」

「何か、ごめん」

「いや違っ、ごめん……」

「何朝から謝ってんの?」

「別に」

「萌、トゲが足りてないよ?」

足りない。

「いや、結構出したよ?」

「何かね、トゲがふさふさしてんのよ」

ふさふさ。

「あんな感じ?」

二人の視線は俺と同じ方へ。

一匹の犬が。

「本当だぁ!可愛い〜っ」

「あんまり騒ぐとほら、犬の朝が台無しだから」

香、強烈。

「ちょ、何よそれ!ヒドくない?ちょっ、笑ってないで
龍も何か言ってよ!」

「まぁ、ね?教室、行こう?うん、そうしよ」

「だから気ぃ遣うなっつーの!」

そんなたくましい声と共に叩かれる、今度は腰。

こんな友達を、こんな学校生活を。

俺はずっと求めてた。

そして同時に、避けてきた。

そんな友達を失うことが、不安で。

二人は、居なくならないよね。

山田先輩も、言ってたもんね。

そう、自分に言い聞かせた。

「龍?」

「そんな寂しそうな目で見ないでよ」

「えっ、何、が?」

「別にこれ本気じゃないし」

「本気じゃ私、今ここに居ないから。もっと安全な場所に避難してる」

「何よそれ!萌も十分強烈よ?」

二人と、こんな関係になるとは思わなかった。

もう、かなり遠くへ離れると思ってた。

それも、出来なかったけど。

何度もそれを試みた。

けど、二人が俺を見捨てなかった。

二人が、俺の手を離さなかった。

暗闇で、姿も見えないあの世界で掴んだ、この手を。

今も、あの時に感じた温もりと優しさは、確かにこの
汚れた心に残ってる。

「早く行こっ!」

ほら。

やっぱりこの二人は、俺を一人にしない。

今もこうして、手を掴んで。

俺を正しい方向へと導いてくれる。

いつか、誤解もされそうな、あの四文字が言えますように。

簡単なようで、本心だと本当に難しい、あの四文字を。


<2016/08/23 19:19 秋の空>消しゴム
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