どっと笑いおこった。中心で木島笑太がふざけている。クラスのムードメーカーで底抜けに明るい黄島は黄色だろう。
「安心してください。はいてますから」
と一昔前に流行った芸人のネタを大げさに真似してみせる。
「わははは。ちょっ、待って腹筋痛い!ははは」
男子の何人かが腹を抱えて、転げまわっている。何が面白いんだろうと思いながら、ボーと眺めていると黄島と目があってしまった。
「そうそう、窓際くんがさ、なんと!わがクラスのアイドル桃山様の靴箱にラブレター入れてたんだぜ」
黄島は宝箱を見つけた少年のように目を輝かせ、意気揚々と語った。
「マジかよ。キモチワル。ぎゃははは」
「やだー。鳥肌がたったわ。」
「ウケルんだけど」
思ったとおりに黄島は満足そうにニヤッと笑う。そして、
「しかし、窓際くんのラブレターはヤブラレタ―!!なんてね」
決まったといわんばかりのどや顔で言い放った。しかし、現実はそううまくはいかない。
「……」
「なにそれ寒い」
黄島の周りを囲っていたクラスメイトが一気に引いて、それぞれの自分のことに戻っていった。
「クソ、なんだよ」
不発に終わったギャグへの苛立ちを僕にむける。
「おまえがもっと面白いことしねーからだぞ」
僕の机を蹴飛ばし、散らばった文房具の中からハサミを拾い上げた。
「それは、紙をきるものだよ……どうするの?」
「顔かせよ」
有無をいわせないまま、躊躇なく僕の長い前髪を切り捨てた。
「ははっ、傑作。おい、みんな見ろよ!」
膝に落ちた、少し傷んだ自分の髪の毛を見つめた。だんだんと感情か身体から涙とともに消えていく。
「ねえ、今日の夜。土手に来てよ。とっておきのものを見せるよ」
「マジか!ネタになるぐらい派手なものだろうな」
「もちろん」
「よし、夜だな」
「必ず一人で来て」
「おう!!」
再び集まったクラスメイトの中心に立ち、舌を出し耳障りな高い声をだした。
「やっべ、紙と間違えて髪切っちまった。」
すっかり暗くなり、鮮やかな黄色をした月がこちらの様子をうかがっている。
「大丈夫。成功するさ」
軍手をはめ直し、生えそろったふかふかの芝に腰をおろした。
「来たぜ。で、どこなんだ?」
黄島の懐中電灯に目を細めながら、スッと目の前の川を指さす。
「川の中さ。この時間帯にしか見えない貴重なものなんだ」
「へえー!どれどれ」
期待いっぱいに川を覗きこむ黄島の背後に静かに立つ。とんっ、背中を押した。
「えっ」
目を見開き、空中を無我夢中に掴む。だが、知ってのとおり空気はつかめるはずない。
「わああああ。助けて……」
投げ出された懐中電灯がスポットライトのように黄色く染まった黄島を照らした。叫びながら、あっけなく川へのみこまれていく。昨日の大雨で増水した川が勢いよく流していった。すべてを―――
「安心してください。はいてますから」
と一昔前に流行った芸人のネタを大げさに真似してみせる。
「わははは。ちょっ、待って腹筋痛い!ははは」
男子の何人かが腹を抱えて、転げまわっている。何が面白いんだろうと思いながら、ボーと眺めていると黄島と目があってしまった。
「そうそう、窓際くんがさ、なんと!わがクラスのアイドル桃山様の靴箱にラブレター入れてたんだぜ」
黄島は宝箱を見つけた少年のように目を輝かせ、意気揚々と語った。
「マジかよ。キモチワル。ぎゃははは」
「やだー。鳥肌がたったわ。」
「ウケルんだけど」
思ったとおりに黄島は満足そうにニヤッと笑う。そして、
「しかし、窓際くんのラブレターはヤブラレタ―!!なんてね」
決まったといわんばかりのどや顔で言い放った。しかし、現実はそううまくはいかない。
「……」
「なにそれ寒い」
黄島の周りを囲っていたクラスメイトが一気に引いて、それぞれの自分のことに戻っていった。
「クソ、なんだよ」
不発に終わったギャグへの苛立ちを僕にむける。
「おまえがもっと面白いことしねーからだぞ」
僕の机を蹴飛ばし、散らばった文房具の中からハサミを拾い上げた。
「それは、紙をきるものだよ……どうするの?」
「顔かせよ」
有無をいわせないまま、躊躇なく僕の長い前髪を切り捨てた。
「ははっ、傑作。おい、みんな見ろよ!」
膝に落ちた、少し傷んだ自分の髪の毛を見つめた。だんだんと感情か身体から涙とともに消えていく。
「ねえ、今日の夜。土手に来てよ。とっておきのものを見せるよ」
「マジか!ネタになるぐらい派手なものだろうな」
「もちろん」
「よし、夜だな」
「必ず一人で来て」
「おう!!」
再び集まったクラスメイトの中心に立ち、舌を出し耳障りな高い声をだした。
「やっべ、紙と間違えて髪切っちまった。」
すっかり暗くなり、鮮やかな黄色をした月がこちらの様子をうかがっている。
「大丈夫。成功するさ」
軍手をはめ直し、生えそろったふかふかの芝に腰をおろした。
「来たぜ。で、どこなんだ?」
黄島の懐中電灯に目を細めながら、スッと目の前の川を指さす。
「川の中さ。この時間帯にしか見えない貴重なものなんだ」
「へえー!どれどれ」
期待いっぱいに川を覗きこむ黄島の背後に静かに立つ。とんっ、背中を押した。
「えっ」
目を見開き、空中を無我夢中に掴む。だが、知ってのとおり空気はつかめるはずない。
「わああああ。助けて……」
投げ出された懐中電灯がスポットライトのように黄色く染まった黄島を照らした。叫びながら、あっけなく川へのみこまれていく。昨日の大雨で増水した川が勢いよく流していった。すべてを―――
