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煌龍vsパイレーツ


「メアリー…!」
茂みの中で、アンは小さく悲鳴を上げた。
メアリーが倒れるのを見て、泣きそうになる。思わず、望遠鏡を握りしめた。
「誰……!?」
急いで辺りを見回すが、それらしき人物は見当たらない。
アンは眉をひそめて、あの煌龍三人組を見つめた。

いつまでたっても、あの三人に対する攻撃は来ない。

パイレーツには、煌龍を抹消するようにとの依頼……いや、命令が出ていた。
この命令にきちんと従わなければ…。


従わなければ、全員殺される。

もう、アフリカやオーストラリア、そしてヨーロッパの方で、パイレーツの仲間がどんどん減っていっている。
ーーお前たちもこうなりたくなければ、命令に従え。
何もそこまでしなくても良いではないか。
アンは頭を抱え、うずくまった。

もう、いやだ。


誰一人、死ぬのを見たくない!




いつの間にか、夜になっていた。
ずっとうずくまって頭を抱えていたので、そのまま眠っていたらしい。過度のストレスによる眠気でか、起きていられなかった。
アンは、だるい体を引きずり、茂みから出た。
メアリーの亡骸は、もう回収されていた。地面はきれいに洗われているが、それでも、鉄臭い、生臭いあの匂いを感じて、アンは口を押さえた。

どうしよう。

帰るのはいやだ。
でも、ここでじっとしているのもいやだ。

メアリーが倒れたその場所に、枯れ木のように突っ立ったまま、夜空を見上げる。

その時だった。
「ねえ、あなた。大丈夫?」
いつの間にか、目の前に小柄な女性が立っていた。
可愛い顔の、若い女の人だった。つやのある黒いショートボブが、さらに可愛らしさを引き立てている。今家から出てきたばかりらしく、ピンク色のエプロンと、ビーチサンダルを履いていた。
「っ……」
アンは息を飲み、あとずさりをした。声が、思ったように出てこない。
しかし、その女性はアンの腕を掴み、引き寄せた。
「大丈夫、怖がらないで。顔色、すっごく悪いわよ。うちでちょっとゆっくりしていきなさいな」
おとなしそうにみえて、けっこう押しが強い。
アンはふと、自分の服装を見下ろした。
さっき茂みに隠れて眠っていたせいで、服は糸がほつれ、葉っぱや枝、さらには土がくっついている。自分で見える範囲でこれなので、全体は相当ひどいものだろう。
そんな女の人が、夜中に道のど真ん中で突っ立っている。

確かに心配になる情景である。

女の人は、優しく微笑み、アンの服を引っ張った。
「いいから、少し気を抜いて」
そう言われると、不思議と、体から力が抜けた。

<2016/06/07 21:02 三日月兎>消しゴム
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