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煌龍vsパイレーツ


「キリヤってさ、弱そうなところが強くて、強そうなところが弱いよね」
「うるせー」
たった一口のアルコールのお陰で潰れかけた霧夜は、幸人と一緒に海岸まで来ていた。
ここから見れば崖に見えるが、下の方には岩棚があり、その下に砂浜がある。別に落っこちても大丈夫そうだ。
「どれくらいで覚める?」
「……十五分?」
訊き返された。
幸人はポカンと霧夜を見上げ、そして、「はぁ?」と声をあげた。
「な、何それ。はやくない?」
「一口ならそれくらいで覚める。けど、1杯だと朝まで引きずる」
「どーゆー体だよ」
「知るかよ。俺もわからん」
霧夜はつっけんどんな口調でそう言い、夜空を見上げた。

ーーだって、人体実験で生まれてきたのに。

「……どうしたの?」
隣で、幸人が心配そうに訊いてきた。
霧夜は首を振ると、立ち上がった。
「気分はなおったから、そろそろ行こうかな」
「はやく戻らないと」
「なんで?」
「リュージとアンが」
「じゃあそっとしとくか」
「なんで!?」
「……相棒の祝うべき初恋」
「なんだそれ。嫉妬とかそんなのはないの?」
「俺男だし」
「いや、そっちじゃなくて!なんていうの?こーゆーのって、邪魔したくならない?からかいたくならない?」
「なる。なるからさんざんからかってみたけど、最終的には蹴倒されて終わる」
「リュージこえぇ」
「あのツンデレめ」
「……その称号、二次元の女の子にしっくり来すぎてて逆に気持ち悪い」
「全世界のリアルツンデレに謝って来い。リュージと一緒に」
「は!?なんで!?」
そんな会話が、暗い海に溶けて消えて行く。

そのときだった。

銃声が、一発響いたのは。

霧夜の腹の辺りから、血飛沫が上がった。
「キリヤ…!?」
幸人の喉の奥から、絞り出すような悲鳴が出る。
「こんなとこ奇襲かよ……タイミング悪いな…!」
少しイラついたような言い方で、霧夜は辺りを見回した。しかし、傷を押さえている手の間から、どんどん血が漏れ出している。ベージュ色の服が、赤く染まる。

暗闇の中から、見慣れない男が現れた。

「煌堂霧夜…そして、竜崎幸人」
低い声で、その男が言った。
「早速だが……今、死んでもらう!」
そう怒鳴るなり、黒色の物体を取りだし、構えた。
ーー銃、か。
霧夜にとっては、銃など怖いものではない。
しかし、それ以上に厳しい問題があった。

男の声が号令だったのか、どこからか、十人ほどの男たちが出現し、霧夜と幸人を取り囲んだのだ。
「ヤバイな」
ぼそっと言う霧夜。そんな彼を、幸人がビックリして凝視した。
「なんで?オレとキリヤだったら行けるでしょ」
「俺は、まだ完全に覚めてない。それに」
霧夜は厳しい表情で、男たちを見回した。
男たちは、銃やナイフ、短剣などを手にして、二人を睨み付けている。
霧夜は、言った。

「俺は、刃物は大丈夫。だが、流石に銃弾を避けきれるほど元気じゃない。そしてユキ、お前の槍は……多数の人間と戦うには不向きだろ」

幸人は、はっとして自分の槍を握った。
その手は、汗で湿っていた。

<2016/06/10 09:34 三日月兎>消しゴム
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