おためし小説投稿

登録一切不要で小説投稿!
文字サイズ変更 
煌龍vsパイレーツ


視界が揺らぐと同時に、普通なら耐えがたいような、激しい痛みが走った。
「ぐふ…ぁ…っ!」
傷は、ひどいもんだった。
左胸から右の腹にかけて、深く切られていた。とんでもない量の血が、あとからあとから出てくる。痛みは、筆舌に尽くしがたいほどのものだった。
立っていられず、冷たい岩の地面に倒れこむ。
痛みに耐えていると、また、なにかが腹に刺さった。

本当に、本気で殺すつもりらしい。

声にならない叫びをあげ、霧夜は痛みを我慢した。
しかし、背中を上にしていれば背中を刺され、腹を上にしていれば腹や胸を刺される。
だんだん、何がなんだかわからなくなってきた。


上の方から、嫌な音がした。
今までで何度か聞いた音ーー人の肉が裂けるあの音だった。
そして直後に、霧夜のうめき声が響いた。

ーーっ!

幸人は、砂浜から抜け出すなり、走り出した。
携帯電話を取りだし、龍次に電話をかける。
『どうした?』
龍次が、すぐに電話に出た。
幸人は泣きそうな声で、
「パイレーツに遭遇した!キリヤが…!」
『っ!?い、今行く!』
龍次はそう言い、電話を切った。
幸人は足を緩め、携帯電話の画面を見た。

ーー頼むよ…!

強くそう願いながら、登録しているある男の電話番号に、カーソルを合わせる。
心臓が、痛いほど強く脈打っている。冷たい風に吹かれているのにも関わらず、体が熱かった。 
『はーい、もしもしー?』
聞き慣れたあの大きな声が、幸人の耳を突き抜ける。
「…もしもし、オレ…ユキトだけど」
電話の相手は、ちょっとビックリしたらしく、一瞬黙った。
『おお?ユキか。こんな時間にどないしたん?』
上杉一。通称、上杉先生である。
幸人は目元を拭い、震える声で言った。

「上杉先生……いま、どこにいる?」

<2016/06/10 15:51 三日月兎>消しゴム
Copyright(C) おためし小説投稿 Since2013 All Rights Reserved.