おためし小説投稿

登録一切不要で小説投稿!
文字サイズ変更 
カイリの可能世界理論(非凡の物語)
- 第十四話①ーエヴェレット宅ーコードレス -

美味しそうなスープから立ち上る匂いが鼻腔に侵入し胃に作用する。
更に隣の更には綺麗に彩られたサーモンがカルパッチョへと姿を変え…………。

詰まる所腹が減って死にそうなのだ。
そして同じく料理を目の当たりにしてそれから目を離そうとしない一葉とカイリ。

「……夕食をご馳走になるとは言ったけどよ」

俺はエヴェレットからナイフとフォーク、スプーンを受け取ってひとまず置いた。
脳内に浮かんで消えない疑問を素直に口に出した。

「どうしてお邪魔してすぐにきっちり四人分の料理が食卓に並んでんだよ……。まさか俺たちが来る事を想定して作っておいたとかそんな非現実的な事をその口から聞きたくはねぇよ?」
「……心外だな、僕がそんなみっともない事をするはずがない。下ごしらえなら昨日の昼から始めておいたとも。たかが数時間の手間しかかけていない料理を客人に食べさせるなんて恥知らずにも程があるというものだ」
「否定して欲しいのはそこじゃねぇんだけどな……」
「さぁ、それでは食べるとするか。二人は待てないみたいだしね」

俺も流石に追求をやめて目の前の事に集中する。手を合わせて四人揃って合掌する。

「……いただきます」

俺は一息ついたところで、隣のエヴェレットに声をかける。フォークやナイフの使い方全てが精錬されたように滑らかな動きを繰り返す。陶器と金属が触れ合っても音ひとつ立てない。
料理は美味しいし、部屋も広くて埃一つなく綺麗に家具が並んでいる。
見た目も結構若い風に受け取れる。この家に入ってからというもの、エヴェレット以外の人物がいない。

「なぁ、この家って他に誰かいないのか? 親とかは出かけている最中とか。料理にしたって、一人でできるもんじゃなさそうに見えるし、……俺の思っていた現実からかなりかけ離れているんだが」
「当然だよ、この家は僕の所有物だ。料理も全て手製のものを振舞っている。怪しいと思っている様だし、不安の種は早期に取り除いたほうがいい。……先程も紹介した通り、僕はエヴェレット・タイムライン。この家に住んでいる。僕は孤児でね、まだ幼い妹がいるんだ。だから、今は妹は孤児院で離れて暮らしている。……僕がちょうど君と同い年くらいの時に、ポストに妹が入っていたんだ。僕の時と同じく、名前と生年月日、それと彼女が僕の血縁関係上の妹である事が書かれた紙が共に籠の中に入っていたそうだ。独立してから引き取ろうとしたんだが、どうも出来ないらしくて週に一度だけこの家を訪れる決まりになっている」
「……」
「? どうしたんだい」
「いや……さ。知りたいのはお前の妹じゃなくてエ……エヴィー、そうエヴィー、お前の事だ。孤児だって事を言わせちまったのは悪いと思ってるしこうやって、その……寝所の提供にも感謝してる。だから、もう疑いはしねぇ。だけど、どうもただ提供するだけって気がしなくてな。……悪い、矛盾してんな」

エヴェレットは一度手を止めて「ふむ……」と顎に手を当てて考え込む。そして「どうやら僕には物事を順序立てて説明する能力がないらしい」と呟くとこちらに向き直った。その澄み切った黄色の瞳に見据えられ、俺もつられて背筋を正してしまう。
気付けば、既にスープは冷えて色を失っている。勿体無い、後で温め直せば大丈夫か。
エヴェレットの開いた口から出る言葉は、勢いと滑らかさを失っている。
言葉に躊躇っている風に見える。

「僕は、見た目でわかると思うがクウォーターだ。年齢は……25で君よりも年上だね。そして、孤児だという事はもう言ったね。……後は、何かあったかな」
「おいおい、まさかそれだけって冗談だよな? いくらなんでも自分をさ知らなさすぎだぜ? 他にもなんかあるだろ、例えば……」
「期待させて済まないんだが、それくらいだよ。僕は僕の事をそれほど知らない」

これ以上聞いても無理だと言われてしまったので、しょうがなく料理へと視線を戻して食事を再開する。
しかし、スープの皿をエヴェレットが持って行ってしまう。

「……すっかり冷めてしまったね、温め直すよ。二人共、おかわりはいかがかな」
「お願い出来ますか」
「私は大丈夫です、ご馳走様でした」

カイリにしては珍しく敬語を使っていた。いつもそうなら文句は無いのに。
後は普通に食べ終わり各々がやりたい事を始めた。
一葉は風呂に。カイリはエヴェレットにデザートをせがんで、一人テーブルでそれを食べている。どこまで図々しいのか分からないが、エヴェレットは気にするどころかむしろ人と会話できるというだけで嬉しそうにしていた。
そして俺はというと……。
エヴェレットの隣で普段は見ないバラエティー番組を見ている。男が二人いる所為か、幅広のソファも窮屈に感じる。俺がもともと座っていたのにわざわざ隣に座る事は……なんて偉そうな口を叩く前にまず自宅ではなかった。
エヴェレットは「悪いが、宿を提供すると言ってなんだけど寝袋が二つしかなくてね、毛布はいくらでもあるからそれで代用してくれないか?」と言われたので必然的に俺がソファで眠る事になった。
一度眠れるか試してみたが、枕部分が高いのと寝返りが打てないのでいささか寝心地が悪そうだった。

「僕は二階にいるから、何か不具合があったら遠慮なく言って欲しい。ノックして返事がなかったら起こしてもいい」

いくらなんでも睡眠中の人は起こせない。更に「信用出来ないだろうから内側から南京錠をかけてもらったほうが安心出来るかな」と言い出した時は流石に口で否定した。今夜ばかりはかけさせてもらうけども。
リビングの窓近くに一葉とカイリ、机を一つ挟んでソファに俺。
一日中変に頭を使った所為か、睡魔の降臨は早かった。

文字サイズは大にした方が読みやすいという事に最近気付いた。
今年中に物語完結できるかな……。サイト閉鎖に間に合わない気がする。
頑張って急いで書いてみようかな。
<2016/11/18 19:09 ソト>消しゴム
Copyright(C) おためし小説投稿 Since2013 All Rights Reserved.