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カイリの可能世界理論(非凡の物語)
- 閑話休題IV -

引きこもり幼馴染の後押し
【神居筑也・火縄理沙】

スーパーから出てきた。
どうしてか、顔を合わせることができない。
ついさっきまでそれが普通だったのに、変に意識し始めた途端に恥ずかしいのか照れくさいのかよくわからない感情で押し潰れそうになる。
……確認したい。確かめたい。知りたい。
それをするまで、この胸のうちに渦巻く嵐は到底収まりそうにない。
きっかけは、京士郎が去り際に放ったこの一言だった。
『ああ…………そうだ、次会った時は、ちゃんとお前ら二人とも付き合ってるって事、伝えてくれよな』
〜〜〜〜っっ!!!!!!???
つつつ付き合ってるってなに⁉︎ それって、私が? 筑也と?
京士郎にはそう見えてたってことなの⁉︎
いやいやいや、こういうのは子供の頃からずっとだし別に違和感なんて感じてなかったし!
……だって幼馴染だから言わなくてもわかるって。
目線だけ隣の筑也に向けてみる。
あれ……顔が赤い……。それになんか手で顔を覆ってるし。
今なにを考えているんだろう。幼馴染で、ずっと一緒にいて、だから考えてることはだいたい読めるし表情から察することもできた。なのに、分からない。
もしかしたら、さっきのをただの冷やかしか何かかと思っているのかな。どうなのかな。
そんなことを考えていたらふと目が合ってしまい顔を背けてしまう。
このはっきりしない気持ちがすごいもどかしい。

「……ねぇ……筑也」
「……どうした」
「私達って、そんな風に見えるのかな……」
「さっきの京士郎の言ったことか?」
「……うん」
「自覚は……なかったってことだけは言っておく。幼馴染だから当たり前だっては思ってた。……確かに友人からそんな感じの冷やかしは多々あったし、俺はそれをスルーしてた」
「否定したりしなかったの?」
「そんな事してたら今頃一緒に帰ったり休日にこうして出かけたりとか出来ない。むしろ、理沙に迷惑だったんじゃないかって申し訳なさを感じてたくらいで」
「迷惑なんかじゃないよ‼︎」

いきなり大声を出して驚かせてしまった。
何というか、私の間違った認識をそのままにしておけない性格が出た。
言い切ってから自分の言った事を訂正する。

「あ……ごめん……大声出して」
「……いや、迷惑じゃないってわかっただけ満足だ」
「そ……そうかな。……でもさ、京士郎のは私冷やかしなんかじゃないと思う。京士郎は、昔から嘘は言わないし素直だから」
「素直っていうか……思ったこと口に出し過ぎな性格な」
「それはそうだけど……。ねぇ、筑也はどうなの?」
「どうって、何がだよ」
「付き合ってるって言ってた。京士郎が認めて私達は答えを出してない」
「……ぐいぐい来るんだな」
「いい? 幼馴染として、本当のこと言って欲しい。……私は付き合ってるって見えるこの状態を、これからも変わらずに維持していきたいって思ってるの」
「えっ……じゃあ……」
「……」

言った。言い切った。あとは返事を待つだけ。
きっと私が先導してあげないと筑也ははぐらかすだけになってしまう。
大体、今時の男子は答えを見るのを怖がり過ぎだと思う。関係が崩れるのが怖くて動けないだけなんだろうけど、実際私だって恋愛には疎いし怖かった。
でも、だから性格的にそんな状態を私自身が許すはずがなかった。

「……はぁ、いい加減長い付き合いだからな。喧嘩した時は言いたいこと言い合ったりしたのにこういう時に言わないのは卑怯だよな。……付き合ってるってことを肯定できる関係になれると、俺も正直助かる」
「…………」

……素直じゃないなぁ。何が言いたいかは分かったけど聞きたい言葉は違うのだよ。
人はそれを言葉を濁しているというのだよ。
間接話法とか倒置とか暗喩とか私が国語系の用法に弱いってわかってて言ってるのかな。
……ここは一度待ってみよう。

「……」
「……なあ」
「……」
「何だよ」
「……」
「……ったく、言えばいいんだろ」
「あれ、私が何を言いたいか分かるの?」
「俺がお前を好きだから付き合ってくれっていうのを待ってるんだろ」
「ーーー‼︎」
「ーーー‼︎ じゃねえよ! 言わせたのはお前だろ⁉︎ なのにどうしてお前が顔赤くする必要がある!」
「……いや、嬉しくってつい。……なら、私達は仮じゃなくて本物になるって事だよ」
「分かってるよ……って何で泣く必要が⁉︎ ……いいやもう取り敢えず帰るぞ! これ以上なんか恥ずかしい思いさせたらあれだからな!」
「うん。……あ、そうだ。今日家に行ってもいい?」
「お前人の話聞いてたかよ!」
「え? そうじゃなくて来週家庭科の調理実習のテストがあるからその予習をしたいなぁって」
「……つくづく言葉の意味を汲み取るのが面倒くさいな」

この道を一緒に歩くのは数えたらきりがない。でも、なんか新しい気分だ。
でも、形は変わってもやってる事は何も変わってない。喋って、笑って、帰るだけ。
二人だったら、ここに来るまでいったいどれくらいかかったんだろう。
それを考えると、背中を押してくれたあのもう一人の幼馴染に心の中で感謝する。

「でもさぁ、京士郎の妹さんが来た時にあの子が妹さんだって分からずに彼女だと思い込んだ時、なんでかジェラシーを感じたんだよね。やっぱりそういうのってあるんだね」
「俺はそれを聞いてどう言い返せばいいんだよ、嫉妬しろって意味?」
「いやぁ、そういうわけじゃないけどさぁ」

……あ、次会った時はちゃんと言わなきゃいけないのかぁ。
なんか、顔合わせずらい気がするけど、会う理由はあるか。そこまで全部お見通しだったのかな。
本当、京士郎にはいろんな意味でかなわない気がするなぁ。

明るいパートは続けて投稿してみる。
<2017/02/05 16:29 ソト>消しゴム
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