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ひとつ、願いが叶うなら 〜明日の記憶〜


海斗くんの気持ちは良く分かった。

分かっていたつもりだったけど。

その時、いけない私が出てきてしまうのを感じた。

「私じゃ、ダメ?満足、できない?」

「そう聞かれると難しいけど、俺は倉本珠希が好き」

私はクルッと、海斗くんの腕の中で体の向きを変え、唇を重ねた。

やっぱり、いけない私は確かに動いていた。

こうなれば、私はもう、誰にも止められない。

「んっ、里咲?」

「私の気持ちに、気付いて。私の気持ち、分かって?」

そして再び重ねる、唇。

分かって欲しくて。

これだけ、私が海斗くんを思っているのだと、好きなのだと。

分かって欲しくて。

ただ、それだけで。

長めに重ねた唇を離した。

「あの、り……」
「これでも、ダメ?」

「言ったよね?俺は、珠希を好きなのであって、里咲に
そういう感情は無いって」

「何をしても?何があっても?私が、どれだけ思っても…?」

「俺には、珠希しか見えてない」

思い切り海斗くんに抱きついた。

私の温もりを、私の全てを。

感じて欲しくて、分かって欲しくて。

顔を少し離し、海斗くんの綺麗な顔を見つめる。

「これだけ?」

「何が?」

まだ足りないのかな、なんて変な期待をした。

けど。

「里咲が、ここに来た目的」

「そうだよ。海斗くんに、分かってもらいたかっただけ」

そう答えれば、海斗くんは強烈な言葉を発した。

「なら、帰って」と。

少し、口角を上げて。

「どうしても、伝わらないんだね?」

「伝わってるよ。届いてるし、伝わってる。けど、俺に
里咲をそういう気持ちで見る事は出来ない」

そう言う海斗くんの目は、しっかりと私の目を見ていた。

本気なんだね。

本当なんだね。

私は、本当に珠希ちゃんには敵わないんだね。

分かってはいたし、覚悟もしてた。

けど、ここまでとは、思ってなかった。

私も、これくらい一途に、思って欲しいな。

私しか見えない、そんなふうに……


<2016/08/29 17:19 秋の空>消しゴム
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